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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
33/174

突撃砲兵?

反撃無双ターンです。

「突撃ィ突撃ィィ突撃ィィィ、ト、ツ、ゲ、キじゃァ!」


「あ!あそこ!あの土嚢の先、みんな死んだ土塁の先、あそこの雑草ん所」


 3号がそこに湧いていた、無表情で足下を指差している。


 無論他者には見えない。



 戦場を爆走した、アルの車両マークⅡだ。長いので、マークⅡと呼ぶ事にする。


 火砲を搭載した車両には、有り得ない速度だ、

 五人で坂道を押し駆ける、重装騎兵程の速度は出ている。


 奇妙な新兵器の登場に、戦場の目は集中する。

 砲撃が、止んだ。


「はい!停止ィ!!」

 アルは制動レバーを引いた。


 上りの坂道とは、思えない速度で駆け抜けた。

 第三砲台の砲手達も、異形な兵器の登場に、その手を止めていた。


 アルの指示した場所は、土塁設営目標地点のさらに先だ。ほぼ昨日の設営地点だ、土嚢が散乱している。


 アルのみが、酷い臭いを嗅いでいた。


 うわっ!と誰かが声を上げる、急制動だ。マークⅡにつんのめる。


 アルは、まるで()()()()()のように砲の角度を調整した。


「アル?なんでお前が、わかる?」軍曹が喚いた


「さんごっじゃない、師匠が教えてくれるのさ。

 あと、何となく?それより軍曹、撃つ」


「ああ、分かった。お前さては天才だな」


 軍曹はやや正気に返っていた、アルの手際良さに度肝を抜かれたのだ。


 軍曹は経験上、こうした砲手が居ることを知っていた。


 一目しただけで、取るべき仰角を、弾道計算を、まるで正解が分かっているかの様に、直感的設定する天才が、極々稀に居ることを。


 見たのは初めてだが。


 ダットは疑いもせず、腰のベルトに装着された備品用ポーチから点火機器を出す。


 砲手の必需携行品で、ゼンマイ動力で回転する円形火打金に、火打石を押し当てて点火するものだ、ホイールロックという。


「脇に退いてろ、アル」


 軍曹は躊躇いなく点火した。


 “ドンッ”


 マークⅡが、僅かに後退した、完全に車輪をロックすると荷台が痛むので、砲からの反動を殺す様、制動レバーは半利き状態にしていた。


「次はあそこ!」


 アルは着弾を確認もせずに言った。


「ブブエロ!」軍曹が怒鳴る、次弾装填のため砲身内の掃除だ。


 ブブエロをマークⅡに乗せたまま全員で押した。


 第三砲台では、反砲撃の()()を喰らった砲門が吹き飛んでいた。



「走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ!」


「行け行け行け行け行け行け行け行け!」


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね糞ッ垂れ!」


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじまう!」


「アははは!あハはは!ハはは!俺はふ・じ・みのブブエロダァ!」


 マークⅡは狂騒状態だ、それも当然で第三砲台から集中砲火を浴びているのだ、

 だが、

 当たらない、当たらない?

 当たらない!当たらない‼

 当たらない?!当たらない??


 第三砲台の熟練砲手の腕を持ってしても、有り得ない速度で動く砲門は捉えられない。


 止まったと思ったら、こちらに反砲撃が来て、()()()()するのだ

 実は砲台内の方が狂乱状態に陥っていた。


「なんだと!何が起こっている?!」


「何が起こっているか知らんが今だ!司令!」


「今だ!曹長、砲門前進」


 ビンゴ、ゴーン、レオンの順だ。


 ワンサイドゲームが、一手でひっくり返った瞬間だ。


 一人はただ呆然とし、

 一人は反撃の機を見て取り、

 一人は任務を遂行した。


「あははは!ザマア見やがれ!これが一号台場の実力だァ!戦友達よ!あの世で見さらせ‼」


 “ドンッ”


 縦横無尽に戦場を駆けめぐり、また一門()の砲台を沈黙させた。


「あはは!軍曹面白いね!楽しいよ!もっと殺そう!戦争は愉快千万だ!」


「あはは!そうだ、アル!戦争ってのは、詰まるところ男のロマンだ!!」


「盛り上がっている所悪いけど、歩兵連中がこっち来てるよ」


空気だったコロンボ伍長だ。


「あはは!邪魔くさいから撃とう!」


「それも、面白いけど自軍だぞ……歩兵連中嫌いだから撃つか?やっぱ」


 移動中のマークⅡをアルと軍曹が反転しようとする。


「急にマがるな、掃除中ダ軍曹」


 ブブエロ一等卒が砲身にしがみついた。


「支援、砲火支援が仕事です!」


 一貫して空気だったピエト輜重科二等卒だ、忘れていた。


「そうだ!アル!門撃ち抜こう。ぶっ壊して新品に交換させよう。前から汚ェ門だと思ってた」


「面白そうだな!やろう。伍長さん、火薬マシマシで」


 砲身内の掃除が終り、コロンボと交替していた。

 ちなみに現在も爆走中だ。



「馬鹿な!有り得ない!全弾命中だと!何故命中する?止まって撃つまで、数秒だぞ、何故正確な弾道計算が瞬時に出る?何故あの距離で命中する!」


「大尉!落ち着いて対応を、現場は恐慌状態に、たッ対応を!」


 余裕だった分、想定外の事態に直面し、精神的に大打撃をうけた。砲術の専門家であるだけに、目の前の光景が信じられなかった。


 砲門の半数が破壊された、現在進行形だ。このままでは全砲門が沈黙させられるだろう。


 ムッ!歩兵本隊が動きだしたか、()機動砲門は後回しだ。


「少尉、砲手が足りない、我々も出るぞ、2、3の砲門にうるさいハエを追わせて、我々は歩兵本隊を牽制砲撃する」


 勝負所と見て本隊を動かす()に即座に対応する。


 やはり、ビンゴも非凡の指揮官であったが、

 キチがい相手は、勝手が違った。

やっと題名に追いついた感じです。

あと3話で一章完結です。

お付き合い頂けたら幸いです。

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