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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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吶喊、突貫、マークII

マークII好きな車でしたね。

反撃始まります

「そろそろ撤退か?どう思う少尉」


 第三砲台司令塔からだ、戦況はワンサイドゲームだ。

 確かにビンゴ大尉は砲台内を掌握し、部下の信望もある指揮官である。


 だが、本来高所にある砲台は難攻不落であり、条件にもよるだろうが、彼以下の指揮官でも充分守りきれるだろう。


 もし、最少被害で攻略するとしたら、遠巻きに包囲して糧食責めだろうが、海上封鎖を解除させるため、それは出来ない相談だろう。


「結局昨日と同じでしたな、パルト准尉の出番も無く。今少し手応えが欲しかった」


「まあ少尉、准尉に砲撃戦術を教導できたのだ、それで良しとしよう」


 第三砲台側は余裕だった。

 だが、この後すぐにこの余裕は吹き飛ぶ事になる。





 アーガイル社謹製、中距離野戦砲。


 先込め式の火砲で、多くの砲同様、後部に導火部があり、そこに火薬を詰め、点火する。


 砲身は2㍍ほどで、構造自体は珍しくも何ともない。


 ただ、特質すべきはその強度だ。従来の中距離野戦砲の5割増程の火薬を装填できた。


 5㌔の砲弾を1000㍍程発射できたのだ。


 大体、同程度の大きさの、中距離野戦砲の砲弾が4㌔で、射程距離が800㍍程だから破格である。


 これはコークスの普及に伴う技術向上のお陰だ。

 コークスの高火力によって、それまで溶解不能だった鉄が液状化するので、青銅砲同様に鋳造(ちゅうぞう)が可能となったのだ。


 ただ、そのままだと鉄組織の密度が薄く(もろ)いので、

 アーガイル社は鋳造鉄火砲をさらに過熱して鍛造(たんぞう)した。


 世界で初の鉄製鋳鍛造てつせいちゅうたんぞう砲だ。その火砲を……



(だから、一体なんだよ!ウンコ野郎!わからねェんだよ)


 3号が指差していた。


 他の3号は車両を指さし、


 更に他の3号は積載済みの火砲を指差した。


 全てのウンコ臭い3号が、虚ろな目でアルを見ていた。


「ひょっとして、撃てる状態で積めってか?」


 全部の3号が、ゲラゲラと笑った。


「……まさか、これやるために、テメエ等俺に車両作らせたのか?」


 3号達の数が増えた。ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ


「……これで走り回って、撃ちまくれってか?キチガイみてぇに」


 3号達のゲラゲラが、実際に聞こえるように感じる。

 3号達のなかに、()()()が居た気がした。


 いずれも馬鹿みたいに、キチガイみたいに笑っていた、ゲラゲラゲラゲラゲラゲラと



「……テメエ等……」



 次の瞬間アルは絶叫した。




「天才か!すばらしい‼俺は猛烈に感動した‼

 これから師匠とよばせてくれ」


 そう、この男は()()()()()()なのだ。



 ブツブツと、独り言を言っていたと思ったら、いきなり意味不明の絶叫をしたアルに、周囲は面食らった。


 そんな周囲にキチがいは目もくれない。


「先生!名案だ!さんごっじゃなく師匠が教えてくれた!聞け!」


 ダーレンやコロンボと(ダッドは興奮がひどくて会話にならない)装薬量の検討をしていたレオンは、勢いに負けて聞いてしまった。


「な、なんだアル名案って」


 次のアルの発言で、後に機動火砲部隊(きどうかほうぶたい)が誕生する事になる。


「これに大砲固定して、移動して撃つんだよ、つまりマークⅡだ!」


 後半はともかく、意味は通じた。


「そうか、支援砲撃だから命中弾は必要ない、攻撃手段が有ることが知れれば、敵も動揺する。名案だ」


「なるほど、支援砲撃しつつ、囮をするのか、この車両の機動力なら()()当てるのは不可能だ」


 ボロボロと涙を流しながら、ダーレンは賛同する。


「けど二門は重イかナ」

「移動の動力なら任せてください」


 ブブエロとピエトの空気組だ。


「おい!一門下ろすの手伝え、これは実戦なんだぞ!早く!速く!はやく!ハヤク‼」


 人手は多い、積載していた一門は下ろされて、もう一門は移動式架台ごと、荷台に固定された。携行してきたウインチが役にたった。


 砲撃の反動を考えて火砲は荷台前部に寄せ、衝撃吸収用に、車輪のコイルは全車輪に接続した。

 最後に砲弾を10発積む、火薬はコロンボが背嚢にいれる。

 遠目には、新兵器に見えた。


「ウオオオッなんじゃコリャァァ!アル!この天才野郎!なんだこりャカッコ良ェェ‼」


「これだよ!軍曹!これやりたかったんだよ!ロマンだよ!夢だよ、これで勝った!」


 二人のテンションは駄々上がりだ、周りも確かに思う所もあったが、二人のテンションの前に引いた。


「聞け!これより我等、機動砲兵は()砲台に特攻をかける!死んでいった戦友達に、我等の勇姿を手向けとするのだァ」


 軍曹ではない、アルだ。色々と突っ込み所はあるが、無粋なので止す



「吶ッ喊ァン!」

「突ッ貫ァン!」



 アルと軍曹がハモった、音は同じだ。


 機動砲台は前進した。

 時間はまだ午前中の事だ

マークIIの後継車ってマークⅩでしたっけ、次回作それでいきます。

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