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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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四連合王国提督

その頃の第二砲台の様子です。

「同胞諸君、諸君の武力は同胞たる我々に向けられる物ではない。

 諸君は軽蔑すべき扇動者に惑わされているだけだ」


 こちらは第二砲台前だ、火砲の射程内どころか、文字どおり砲台大手門前だ。


 もとより第二砲台は戦意旺盛ではない。


 空砲による威嚇砲撃は何度か有ったが、歩兵部隊に今の所被害はゼロだ。


「同胞諸君は被害者だ、我々は決して被害者の救済を怠りはしない」


 第二砲台攻略部隊、歩兵大隊指揮官、グレゴリオ中佐は、第二砲台内の不和を察知し、説得工作での解決を試みた。


「こちらからは攻撃はしない、大人しく投降してくれないだろうか。

 今なら主謀者も厳しく罰を下さないよう、私自らが掛け合おう」


 艦隊が海上封鎖を始めて3日目だ、歩兵大隊が、編成、出撃して2日目。昨日から投降を促していた。


 もちろん、歩兵大隊を()()させ、武力誇示する事も忘れない。


「戦友諸君、同胞諸君、争う理由など、我々には無いのだ、大手門を開けてくれないだろうか」


 とは言え、単身砲台大手門前で、説得工作を始めるグレゴリオ中佐の胆力は、尋常ではない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ええい忌々しい!いっそ撃ち殺すか!」


 第二砲台の一室内だ。司令塔はここまで兵に近接されると的でしかない。


 物見も兼ねる司令塔だが、あくまで火砲の超近接内に兵員が存在しない事が存在前提だ。


 ここからグレゴリオ中佐の演説を聞いている


「無駄です、大尉、砲台内の掌握に時間が掛かり過ぎた、砲門が大隊に貼り付かれてしまった」


「ゴロツキ達を放出しといてこのザマだ、ビンゴ大尉の工作が無駄になった」


「いえ、無駄ではありません。奴らがいたら、兵卒を扇動していた事でしょう。

 逆に今頃は、我等が制圧されていたかも知れない」


 軽い舌打ちが聞こえた。



 歩兵大隊は砲撃が無いことを良い事に、指呼の間に第二砲台を包囲展開していた。


 グレゴリオ中佐が号令を下せば、瞬く間に第二砲台は制圧されるだろう。


 言うなれば、説得工作は陽動で、本命は大隊の近接だ。


 戦わずして勝つ。


 それを成し遂げようとしていたグレゴリオ中佐も、非凡な指揮官だった。


「幸いグレゴリオの奴も、強硬手段に出る様子も無い。

 今日までだ、今夜半脱出する。それまで説得工作に応じて迷っている振りを続けるしかない」


「そうですな。連合王国から提示された条件はあまりにも美味し過ぎますからな」


 どうやら、海上封鎖している艦隊の国籍は、連合王国のようだ。

 連合王国については後述する


 第二砲台攻略側の戦況は、有利、と言うより既に決していた。


 第三砲台と違い、第二砲台首謀者達は、利に吊られただけで、

 別段戦争狂ではなかった。


 連合王国は島国の連合だ、海軍と違い陸軍のレベルは他国の平均に及ばない。


 この度の事で、首謀者達は、将官、佐官の席が用意されていた。

 連合王国にしても、利の有る取引だ。


 腐ってしまった砲兵科士官には、余りにも魅力的な取引だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「提督、第三砲台側に動きがあります。攻略作戦が開始された物と」


 と同時に第三砲台から、轟音と共に軍港目掛け砲撃があった、三発だ。


 砲弾は、軍港口手前に水柱を上げる


「仕事は充分に果たしているな。第二砲台とは大違いだな」


 第二砲台からは、今まで一発もナザレ軍港に牽制砲撃な無かった。

 こちらに砲撃が無い事から、造反組が失敗したとは考えてはいないが、不信がつのる。


 おかげで、海上封鎖もやや東側に艦隊を移動させる事となった。


 簡単そうに思えるが、巨大、巨質量の軍艦12隻を、移動させ底錨させる事は、想像以上に骨折りだ。


 この四連合王国提督の、非凡な手腕が見てとれる。


 海上封鎖は今日一杯の予定だが、第二砲台の様子から夜まで持たないと予想された。


「情報を一部開放する。各艦に通達、当艦隊に接近する、白旗を掲げた船舶は、その人員を回収せよ」


 “はっ”と補佐官は短く返事をすると、通信連絡係の元に走る。


 鏡の反射による喚起と、手旗信号で全艦に通達された。


「少し遠いが、戦見物と洒落込むか」


 連合王国提督は椅子を用意させ、望遠鏡で第二砲台の戦況を観戦した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




(まずいな、橋頭堡を確立できない……)


 レオンは焦っていた。砲門設置の前段階、土塁の設営に難航していた。

 いや、難航ではなく、はっきり失敗していた。


 現在、混成工兵小隊の4波目の突撃中だった。

 土嚢を無為に喪失した、3波までの小隊は、パルト砲兵小隊の後方で、再編されていた。


 1波目の土嚢築塁は上手くいき、小隊全員が帰還した。


 2波目も多少の被害を受けながらも、築塁を継続させ、帰還した。


 この調子なら橋頭堡確立成功か。


 そう思われた3波目の築塁中、第三砲台全砲門による集中砲撃により、

 築塁中の()()()()()()土塁は四散した。


 目標物が、大きく狙いやすくなるのを、待っていたのだ。


 半数ほどの人員に死傷者が出た、無傷な者は一人もいない。

 比較的軽傷の者が、即死者、致命傷者を除き、同僚を担いで帰還した。


 情けなのか、第三砲台からの追撃の砲撃はなかった。

筆が進んで完結話が伸びました、40話以内になります。

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