表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
28/174

聖人ダーレン

体質なんだから、正常な人っス

キチは好きだけど、使い勝手が悪いっス

「それにしても、酷い面子だな」


 軍曹は辺りを見回す


「ダッドもそう思うか、俺もだ」


 小隊の面々だ、ハッキリ言えば問題児(中年)だらけだ。


 命令不服従、抗命などは可愛いほうで、反抗行動、脱走、暴行、略奪、放火、エトセトラ

 もはや、ギャングが軍服を着ているだけだ。


 ただ、砲手としての腕()()は確かだ、そうでなければ、流石に上官も庇えない。


「あそこら辺が第一砲台のゴロツキ連中だろ、そっちが第二の馬鹿ども」


「で、あそこが第三砲台の変人連中。わざとだな、この編成」


「まあ、今となっては誰でも分かるさ、反乱の邪魔者だな。俺ならどさくさ紛れに、後ろから撃つ」


「後ろから撃たれたくないから、新任准尉に押し付けてやりたい放題か。ん?それだと第一の連中は?」


「さてね、馬鹿比率のバランスでも取ったんじゃないの?」


 酷い言い種だが、遠からずだ。新型砲の習得のためという大義名分なのに、第一砲台だけ派遣しない訳にはいかない。


 まるで、自分達は別だと言わんばかりだが、周囲の目は違った。この二人は悪い意味で有名だ。

 と、言うより怖がられていた。

 ゴロツキ連中だ、暴力では怯まない。

 別の意味でだ。


 まずはダーレン曹長だ。彼は下士官としての経験、実績、判断力、統率力、人望?に問題はない。

 急編成のゴロツキ小隊を引率できるのだ。粗野、粗暴では務まらない。


 彼が怖がられるのは、少し変わった体質のせいだ。


 ダーレン曹長は、戦時など興奮状態になると、ボロボロと大粒の涙を流すのだ。


別に悲しい訳ではないので、冷静沈着に行動する、部下を叱咤激励する、指揮を採る、砲手として行動する。


 その間ずっと泣いているのだ、長引くと血涙する。


 傍目には、静かに精神に異常をきたした様にしか見えなかった。


 布教活動中、感極まると滝の様に落涙したといわれる、守護聖人ヨハネスにちなんで、聖人ダーレンと陰口を叩かれてつつ、怖がられていた。


 ダッドの方は、ハッキリと異常だった。


 彼は前述したが、戦争大好き人間で、一度スイッチが入ると、高レベルの躁状態になる。


 が、これは新兵によく有ることなので、大しておかしくはない。


 おかしいのはその後だが、これは後述する。


 アル以外に、周囲に人がいないのも、怖くて不気味で、誰も近付きたくないからだった。



 レオンが砲兵小隊屯所にたどり着いたのは、アルが即寝した10分後だった。


 口頭での誓約なので、厳密にはアルは民間人だが、軍曹は容赦なく軍属扱いした。


 つまり叩き起こした。


 眠そうなのは無理もない、今日は日の出から日付変更付近まで歩き続けたのだ、強行軍もいいところだった。


「総員整列!」


 さすが軍人である、40名の小隊人員が(借りてきた輜重兵もそのまま砲兵小隊に合流している)即座に整列する。


「総員傾注!」


 これはダーレン曹長、合流後は彼が次席階級だ。


「本日午前6時をもって、第三砲台攻略作戦を発動する。

 作戦内容は工兵が攻撃ポイントに築塁後、本小隊が、砲門を搬入、設置、砲撃を担当する。

 火砲援護と連動し、歩兵部隊が突撃を開始する。

 火砲援護は歩兵部隊が第三砲台に近接成功まで続行する。

 質問を受け付ける」


 真っ先にダーレン曹長が挙手した


「築塁地点はどこになるでしょうか、かなり前進しないと、砲弾が届きません」


「砲台から800㍍程下った中腹に窪地が有ることを覚えているか?工兵はそこに築塁する」


「その地点からだと、ギリギリ届くか届かないかと思われますが?」


「強装薬で砲撃する、届くはずだ」


「了解しました」


「次に、決死部隊の編成を行う」


 レオンの言葉に、猛者揃いの砲兵科下士官連中も息をのんだ。


「本作戦は、いかに迅速に砲門を設置するかに掛かっている。一門でも設置できれば、反砲撃できるが、第三砲台側はそれを断固阻止してくるだろう、それを念頭においてくれ。

 志願者はいないか」


「志願します!」


 即答だ、軍曹だ。軍曹は後ろを振り返ると続けた。

「コロンボ、ブブエロ、お前達には命の貸しがあったな、今日返せ」


二人はダッドの班員だ。

「せめて意見くらい聞いて」これはコロンボ砲兵伍長


「借り返すんジャ仕方ナイな」ややアルニン語に難があるのが、ブブエロ一等卒。

彼は南方大陸の出身だ。


「他には居ないか。……一砲班では手が足りないので、班毎に交代しながら砲門設置作業を行う」


「志願します」

周囲から、おい!という声がした。


「貴官は私と同行した輜重兵ではないか。構わないのか?名は何といったか」


「はい、二等卒ピエトであります。運搬作業が仕事であります。自分こそが適任であります」


「わかった、頼む」


“あります”が三連続で聞こえて、アルはようやく頭がはっきりしてきた。


小声で隣の輜重兵に聞く。


「聞きそびれたけど、何がどうしたの?」


この輜重兵もアルと同行した兵だ。


「砲門の運搬設置の志願兵を募っている所だ、今ダッド軍曹と、うちのピエトが志願した。あいつ何考えて……」アルは挙手した。


「質問!せんせ、じゃない、エー…隊長?」


「君は、まだ正式に軍に所属している訳ではないから、何と呼んでも構わないよ。何かな?」


「大砲の運搬にはアレを使うのか?」


「そうだ、この作戦の基幹になる」


「なら、俺も志願する。さっきから3号がうるさいのはこれか」

後半は小声だった


「後ろ半分が聞こえなかったが、却下だ」


「駄目だ、俺やる」


「却下」


軍曹が割って入った


「准尉殿、あの車両を使うなら、アルが適任です。何より本職の運送屋だし、作業が捗る」


「しかし……」


「どのみち戦場です、安全な場所なんて砲門が在るところだけだ」


「軍曹、何かやたら格好いいね、良いよそのノリ」


馬鹿野郎。と返す軍曹。


しばらくレオンは沈黙し熟考した。


「わかった、許可する」


そして、レオンが折れた。

がんばりました、もう一話投稿できそうです。完結までたどり着きそうです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=752314772&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ