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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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第三砲台守備長ビンゴ大尉

やっと、戦記物らしくなってきました。

 こちらに気がついたようで、分隊指揮を委譲したダッドと伝令兵がこちらに駆けて来た。


 ナザレからの緊急伝令だ、伝令兵の赤色の腕章から解る。


 通常は緑で、緊急の度合いにより黄色、赤色と変わる。


 朝方受けた軍曹の報告を思い返し、レオンは緊張した。


(3号がゲラゲラ笑ってやがるな、碌でも無ェ。うわっ臭ぇ)()()()()()と分かってはいるが、アルは鼻をつまんだ。


「准尉殿!ナザレの()()司令部からの緊急司令です」


(腕章から分かってはいたが、陸軍司令部からではなく、総合司令部からか。想像以上に悪い知らせだな)


 伝令兵は敬礼をして、レオンに封書を渡す。


「不明な点は、口頭で答えるよう指示されています」

 伝令はそう発言した。つまり人払いの要請だ。

 それほど悪い内容だということだ。


「すまない、アル少し外してくれ。軍曹はこのままで」


 アルは何故か鼻をつまんでいて、「あいよ」と答え、テントに向かって車両を押していった。


 レオンは伝令兵立ち会いの元に開封した。


 内容は即時の帰還と現在()()()()()()()()混成歩兵大隊への合流だ。


「内容は把握した。だが状況がわからない、これは本格的な戦争行為ではないか」


 “戦争”の所で、ピクリと軍曹の耳が動いた。

 伝令兵が答える。


「現在ナザレ湾口に、国籍不明の武装艦隊が戦闘準備状態で停泊しています」


「なっ!まさか第二、第三砲台は……」


 最悪だ、まさか私や下士官の砲門受領派遣もこのためか?


 ナザレ軍港はナザレ湾奥に位置する。駐留艦隊が存在する軍港だ、

 同時に人口60万の大規模商業都市のため、帝国時代に城塞化された。

 それは現在まで続いている。


 火砲登場以前はナザレは海軍の管轄だった。

 登場以降は城塞守備を陸軍が担った。


 指揮権の二重化による混乱を防ぐため、()()()()()が置かれ、これは首都防衛も兼ねる、アルニン軍総合総司令本部(大本営)の直轄であった。


 ちなみに、レオンが所属した陸軍総司令本部もアルニン軍総合総司令本部(大本営)の直轄だ、これは海軍も同様である


 ナザレは湾としては比較的に小さな部類だ、湾口部に艦隊が展開すれば、簡単に海上封鎖ができる。


 しかし、湾口東の岬にある第三砲台、

 湾口西の岬の第二砲台から砲撃できるので、普通は採らない軍事行動だ。


 それを実行したということは、それぞれの砲台が攻略占拠されたか、()()()()()あったかだ。


 第三砲台の攻略中ということは、そういうことだ。


「第二砲台の方はどうなっている?」


「第二砲台には大きな動きがありません、こちらからの問いに答える事も、妨害する事もです。

 首謀者が人員の掌握に失敗したと考えられます。

 こちらは、別動の歩兵大隊で遠からず制圧されるかと」


「という事は、第三砲台の方は、盛大に妨害行動をとっている事だね」


「はい、ナザレ駐留艦隊の動きが有り次第、湾内に砲撃が有ります。


 混成歩兵大隊の方も同様で、第三砲台に歩兵が張り付けません」


「第二方面は歩兵大隊なのに、何故第三方面は混成大隊なんだ?第一砲台からはとても砲手を出せない筈だ」


 ナザレ駐留艦隊の頭が押さえられているのだ、

 武装艦隊に湾内に侵入されたら、第一砲台しか攻撃手段がない。


「砲門受領で出向いていた、砲兵小隊が合流しました。しかし指揮官不在のため、歩兵大隊と連携出来ない状況です」


 これは大きな失態だ、引率させた曹長では、階級的に戦闘指揮は出来ない。


 戦闘経験ではなく、指揮官戦闘教育がされてないからだ。

 レオンは首筋がヒヤリとした。


「状況は理解した。本部隊は混成歩兵大隊に、速やかに合流する」


 敬礼を交わし、一同は野営テントに向かった。


 伝令兵は、この後も街道沿いの市街町村に、警戒警報を伝達しなければならない。


 時間が惜しいため、すぐに出立した。


「軍曹聞いての通りだ、してやられた。今回の砲門受領、第三砲台守備長、ビンゴ大尉から陸軍司令部に上申されたと聞いた。

 暗躍者は奴だ」


「ビンゴ大尉殿。砲台()りに左遷された。と洩らした事があると聞きましたが、

 不平はその時限りで、以降は精勤されておりました。

 野戦を得意とされてましたな」


「どう思う軍曹、武装艦隊と連動しての行動だが、艦隊を湾内に誘導するでもなく、ただ、孤立しての籠城だ。こちらも遠からず、陥落すると思うが?ただそれだと……」


 自分の失態が目立つ、それは不味い。


 レオンは他の砲兵士官同様、上昇志向が強い。

 3年も不遇な境遇であったのだ、挽回したい。


 “上が唸るような新戦術など、新任准尉に産み出せる訳が無いだろうが”


 何度も何度も、意見書、提案書、戦術考察を提出したが、全てに駄目出しされた。


 当然だ、裏打ちされた経験が無いのだから。


 一見すると、レオンの移動は降格に見える。

 だがこれは砲兵科特異の通過儀礼だ、

 頭でっかちにならないよう、わざと挫折させ、実務で育てる。


 実に()()()()()であった。


 腐ればソコソコに、育てば大出世の、砲兵科独自の儀式だった。


 若いレオンはそれを知らない、知らないが故に、焦ってしまった。


 そして、普段のレオンなら許可しないであろう作戦を、許可する事になる。

出だしの武侠っぽいのも、書いてて楽しかったですが。

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