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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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髭の軍曹ダッド

マトモっぽい人が?

 30分も登っただろうか、前方に10名程の軍人、車両、牽引馬と、三脚櫓の下に、積み荷が下ろされた状態で、安置されていたのが見えた。

 

 向こうからも、こちらが見えたのか全員整列した。そこら辺は軍隊だ。

 レオンの後ろに車両を押したアルが続く。


 レオンは片手でとまれの合図をアルに送り、自身は急造混成分隊?の前に進んだ。


「総員敬礼」


 留守分隊内で上位階級の兵だろう、髭が号令した。レオンが答礼すると「直れ!」と同じく髭が号令する。


「点呼」


 これはレオン

 一砲班ごと異常無しとの返事があり、最後に「輜重歩兵三名、牽引軍馬一頭、異常無し」との返事があった。


「パルト市街で合流予定だったが、運送業社と同行する事になった。積み荷の積載後、30分の休憩の後出発する。作業開始!」


 髭の兵士は、報告があるのかその場に残り、他の兵士は三脚櫓へ移動した。

 滑車から垂らしたロープに積み荷を結わえる。


 何か軍人っぽいな、などと()()()()鹿()な感慨をアルは抱いた、


 レオンの人柄か、もしくは意図的か、アルは車両の材質からベアリングやコイル、車輪の緩衝材の製造法、かかった費用まで洗いざらい話していた、


 割りと警戒心が強いアルにしては珍しくだ。本人はレオンの事を、先生と呼ぶほどには心を開いており、昨日の事もあって、あまりレオンを軍人と意識していなかった。だからポロリと出た


「格好いいな先生、ババアに絞められた時はどこのザコかと思ったが」


 これを髭が聞き咎めた、レオンに発言する。


「准尉殿、なにやら今妙な雑音が聞こえましたが、無礼な発言では無かったでしょうか」


 レオンは、やっぱり、といった感じの苦笑いをして言った。


「ダッド軍曹、彼は民間人だ、大目に見てくれ。それに古い友人でもある」


 古い友人と呼ぶには、この上官は若すぎると思ったが、パルト市街出身に思い至り、幼年期の友人だと解した。


「失礼しました」


 止せば良いのにアルがわめく。


「うおぉぉ!軍曹だ、軍曹がいるよ、本物の軍曹だありがてぇ」

 アルは両手をあわせて、()()()()()

 これが嘲りや嘲笑混じりの行動だったら、どうなったか分からない。


 しかし、こちらでは見掛けないタイプの礼拝だが、真摯な態度であることは感じられた。

 つまり、本気で軍曹を崇めているのだ。


 ……毒気が抜かれた。


「准尉殿、旧友殿は随分と変わった人のようですな」


「……だが、才人である事には違いない。そこの異形な車両だが、彼の自作だ。道中聞いたところ、1㌧ならまでなら手押しで、牽引馬ありで2㌧強まで運搬できるそうだ」


「ほう。1㌧で車軸が折れる輜重車両とは、大違いですな」


 チラリと輜重歩兵の方を見た、彼らは最下級の二等卒だ、5階級上の上官に一瞥されて、首をすくめた。


「そう苛めるな、彼らが悪い訳ではない」

「すげえ、圧力のかけ方も軍曹だ、軍曹の中の軍曹だ!格好ぇなぁ」


 同時に聞こえてきた、何だか疲れてきた。

 ダッド軍曹はアルの発言は無視する事にした。


 さてこのダッド軍曹だが、その後アルのお目付け役兼(しつけ)役として、行動を共にする事となる。

 ダッドが昇格しようが退役しようが、いつも軍曹呼ばわりされるので、大抵彼はアルの周りにいるときは苦々しい顔をしていた。


 出会いの時は、こんな締まらない感じだが、レオンよりは数万倍もマシだろう。


「おおい!ここまで車両を動かしてくれ!」


 三脚櫓のほうからアルを呼ぶ声がした、アルは「んじゃ軍曹、先生」と言うと車両を押し出した。


「何か報告があるのだろう?」


 レオンはこの軍曹をある程度は信頼していた。


 ナザレ軍港城塞第三砲台一号台場(だいば)がレオンの任地で、彼はその一号台場の二番砲手であり、直下の部下になる。


 アルは「軍曹だ~格好ぇ軍曹だ」と阿呆のように連呼していたが、事実、彼は一兵卒からの叩き上げの軍人だ。


 先程の輜重兵への圧力も、実の所自らが嫌われ者になり、若年の上官に不平が向かわないようにとの親心だ。


 彼にとって下士官とは、嫌われてナンボなのであった。


「准尉殿も察して居られると愚考しますが、この度の砲門受領、異常な命令です」


それはレオンとて考察した、だが情報が足りなくて、憶測しか立たなかった。

レオンは次を促す。


「全員下士官です、そもそも砲兵が受領に出向く理由がない、火砲自体は採用が決定しているのだから、納品後、指導技官を要塞に寄越せばいい」


「つまり、下士官は厄介払いに出されたと、何故だい?」


そこが分からない、要塞内の派閥構成も兵士間の士気も気運も情勢も、任官した一月では時間が足りな過ぎた。


「そこまでは、分かりません、ですが昨晩情報交換した所、ここ3か月ほど士官砲手の動きが妙だと聞きました、言われてみれば思い当たる事もあります」


士官砲手とは士官学校を出た、准尉が努める砲手の別名だ。


厳密には准尉は士官ではないので、当てこすりの意味もある。


レオンの場合、階級こそ准尉だが本来少尉以上が努める台場守(だいばしゅ)に任官しており待遇は少尉だ。

頑張って晩にも投稿します。できなかったらゴメンなさい。

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