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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
三章
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パルト兄とパルト弟2

「その付き合いやすい枢機卿猊下が何でまた、縁談周旋を、いや顔が広いのは分かるよ、何で僕なんだ?」


 ()()で、レオンはかなり知名度が高くなったのだが、本人にその自覚は無い。


 またサンドロ自身まだレオンの重要性を理解しては居なかった。昔、縁談周旋依頼をされたアンジェロの弟としてしか認識していない。


「それがな、まだお前がこっちで勤務してた頃縁談周旋を頼んだ事が有ってだな、最近猊下から打診が有った。

 覚えていてくれたんだねぇ、ただ、情報が古いから、直近のお前の情報を知らせてやったんだが、大層喜んでいたぞ」


「いやそうじゃ無く、なんで僕なのさ。しがない軍人でしかない僕が、枢機卿猊下のお眼鏡に………いや、兄さんの伝か。

 うーん。つまり兄さんの地位を見込んだ縁談なのかな」


 まあ、それも有るだろうよ。とアンジェロが自慢げに相槌だ。


「それに先方が乗り気だ、年回りも悪くないしな……年上は嫌いか?」


「なんだよ、年回りが悪くないって言ってるそばから年上って、幾つ違い?」


「当年26の()()()だ、美人だぞ」


「3つ違いか、確かに騒ぐ程の年齢差じゃないね、美人って、兄さん会ったのか?」


 うんにゃ、だが美人に違いないね、と断言だ。アンジェロの酒癖は差程悪くなさげだが、軽薄にはなる様だ。


「根拠は?僕を言い包めるためだけに適当は言うなよ」


「根拠は有るぞ、何と、あの美貌で名高い“聖女アンナ”様の御身内に在られる、姪御だったかな?確か」


「聖女様?兄さんが大ファンの………まさかとは思うけど、猊下にそんな注文を付けてたんじゃ無いだろうね。聖女様の関係者じゃ無きゃ嫌だとか何とか」


「阿呆、お前法王庁の権威舐めすぎ、枢機卿ったら一国の王様に比肩する権力、権威が有る、そんな注文つけたら俺即日無職なる。俺困る、嫁子困る」


「呑み過ぎだよ兄さん、幼児退行は悪い酒癖だ」


「と、言うより、先方のご指名だ。俺もバロト家令嬢と聞いて、もしや聖女様の縁者では?と、猊下に尋ねた所がビンゴだった」


「兄さんの方が法王庁を舐めてるよ、でもバロト家令嬢ねぇ、また凄い家が出てきたねぇ、本当に僕?レオン違いじゃ無いの?パルト家は他にも有るし」


「いや、だから俺が昔打診したんだって、だから間違い様も無い。それにだ、ウチだって家格は良いぞ、クラディウス一門だ。現アルニン元首一門だから不釣り合いでは無い。

 今日それとなくチューザレ殿に伝えたら“式には呼んでくれ”だとさ」


「えぇ、僕にも話して無いのに伝えちゃったの?………それで選択肢は無いに繋がるのか、猊下に元首と。………何でこう僕の回りには濃い人ばかりが………」


 ついでに加えるならば、嫁予定令嬢もかなり濃い人です。義妹になる人もそうですが、今せっせと縁談妨害に勤しんでいるので、ひょっとしたら他人のままで済むかもしれません。


「見合いは来春になるが、それまでに顔合わせ位の機会は作ってくれるそうだ」


「決定事項か!まあ、悪い話じゃ無さそうだけど、どんな人?

 バロト家令嬢で3つ年上の聖女様の姪としか聞いて無い、そもそも先方が乗り気だそうだけど……何故?兄さんすら忘れてたような依頼だったんだろ」


「その令嬢なんだが、法王庁で重要な役職に就いていて、この度後任が決まったとかで還俗する事になった」


「えぇ、尼僧(あま)さんなの、それで猊下の声掛かりか………あれ、何か似た様な話を聞いた事があるな、誰だっけ」


「そりゃ“聖女アンナ”様だ、聖女様はご自身が責任者であった奇跡認定局長の後任が決まっての還俗、婚姻の運びだったからな、………ハンスの野郎、上手い事やりやがって畜生」


 ハンスとはアンナ(ローザンヌさん)の連れ合いで、定食屋の倅だ。アンジェロに面識など無い。


 アンジェロはアンナの還俗時には既に妻帯していたのだから、端から論外なのだが、そこはアンナファンクラブの一員、割り切れる話では無い。


 これが他国の王家なり大公なりに嫁いだのなら、まあ収まりもつくだろうが、何せ相手は一般庶民だ。


 これはアンジェロだけが感じた嫉妬では無い。


 やっかみ、嫉妬、好奇から即座に拡がったアンナ結婚の報に、件の定食屋の倅をファンクラブが割り出し、それが例の定食屋廃業に繋がる。


 アンジェロとレオンは12才、東洋言う所で一回り年が違う。異母兄弟なのだが詳しくは今回の話に関係ないので省く。因みに妹とは同母兄妹である。


 つまり、アンジェロはアンナと同年代なので思い入れも深いが、レオンにしたら世代が違うので、聖女と聞いてもピンと来ない。

 ただ、兄世代以上の年配者に絶大な人気を誇る事は知っていた。


「で、だ。元々バロト家令嬢は、適齢期に還俗する前提で教会に勤める契約だそうで、此度後任が決まって婚活を始めたらしいんだが、何せバロト家だ。

 そこいらの縁談周旋屋なんかお呼びでない、そこで……」


 令嬢が枢機卿に依頼した所、昔の依頼が浮上したんだ。と締めくくる。


 何だか徹頭徹尾レオンがタッチしていない。


「………何か政略っぽいね、バロト家令嬢で枢機卿の後押しが有るって事は、その令嬢は教会関係の紐が付くんでしょ、バロト家は教会べったりの家だからそれで良いんだろうけど、ウチは良いの?兄さんの立場とかさ」


「むしろお前に断られた方が立場が悪くなる。

 猊下、矢鱈と乗り気だぞ。結婚式も自身が執り行うと言ってたし、子供が生まれたら祝福洗礼しようとも言っていた。

 枢機卿に洗礼なんて、それこそ王侯貴族でも無きゃ受けられん」


「何ともね。まあ兄さん、僕もパルト家だから自由恋愛婚なんて考えてはいないさ、父さんがそうだった様に、政略結婚も否は無いよ。

 それにさっきも言ったけど、悪い話じゃ無さそうだしね」


 俺は自由恋愛結婚だったがな。などと一言余計なアンジェロだ、酔うと幼児退行する様に子供っぽい所が有る。


「それじゃ了解と伝えるぞ、トントン拍子に話が進めば、そうさな、来年の秋には結婚式を上げられるかな?」


「ちょい待って、矢鱈と急いでいるみたいだけど理由が有るのか?それに僕だってテュネス派遣の時の様な、突発的派遣移動だって有るんだが………先方はそこら辺の事は理解しているの?」


「まずは初めの質問の答えだが、先方はやや適齢期を過ぎている、結婚を急ぐのはその為だ」


 そこに妻君が果物を盛り合わせて運んできた、ツマミになるかどうかは人それぞれだ。


「おいおい、フルーツは無い。なら、まださっきのチーズがマシ」


「あなたは塩でも舐めていて、これは私がつまむのよ、レオンさんもどうぞ」


 それでは遠慮なく。と干し葡萄をつまむレオン。


 拙は干し葡萄と赤ワインの組合せは好きだ、だから投影する。


「それで兄さん、後半の答えは」


 仕方なく柿をつまむアンジェロ。果糖と赤は相性が良いのだが。


「さあ、ただ、先方は了承しているみたいだぞ。詳しくは見合い時に直接聞け。

 俺の私見だが先方も大家令嬢だ、仕事で家族が離ればなれになる事も、通常感覚なんじゃないか?

 その点猊下は人情家だ、お前の任務他なんかを気にしていた、結婚即(単身)移動では申し訳ないとな」


「いや、こんなでも士官だし、妻帯者用の兵舎は、士官クラスだと庭付き戸建だからどこへ行こうが環境は悪く無いよ」


 ナザレで地鎮祭のついでにアルの押し込められていた兵舎を覗いたのだ、一戸建てで部屋数多めだから悪い環境では無かった。


 自炊も可だが、望めば民間人用(一般軍属用、アルは少尉待遇だから軍人食堂舎でロハだった)の食堂舎で三食賄える。(有料だが格安だ)

 住はロハで、上記の理由でエンゲル係数が低いから蓄財可能だ。

 確かに悪い環境では無い。


「実はそこが一番ネックだった。もう言質を取ったから教えるけど、何でも数年は首都を離れられないらしい」


「兄さん、そう言う話法は感心しない、悪い所も最初に教えてくれなきゃ総合判断がつかないよ。まあ、今回はどのみち受けるつもりだけどさ。で、何で先方は首都から離れられないの?」


「まあ、怒るなよ、何か猊下が数年は移動が無い様に軍に掛け合う様な事も言っていたし。

 ………つまり猊下の都合でも有るのだ。

 在家信仰者組合って知っているか?」


「在家信仰者組合。サンドロ猊下の管轄下でしたわね、成る程、そういう訳ね」


 口を挟んだのは妻君だ。いつまでも妻君だとやりにくいので名を明かすと、グレタさん。


 大商家の出でアンジェロが内務部所属の時に知り合っている、食料品の輸入から卸、小売まで一手に商う家だ、カステラーニ家、バリウス一門の系列だ。


 カステラーニ家も在家信仰者組合に加盟しているので、グレタさんもサンドロの思惑が大体知れたのだ。

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