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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
三章
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ドン.マイケルとジャンヌさん2

「些か手が足りないのです~、情報収集と、あと人員を貸していただきたいですね~」


「………それだけか?拍子抜けな感じだが……」


 悪名高い異端審問二課の協力要請だ、誘拐、拉致、殺傷と極端な荒事を想定していた。

 この程度ならば今までも何度か手を貸した事も有る、審問局の担当者は別では有るが。


「荒事は得意なので~ただ情報収集が手不足なのですよ」


「我等への報酬はどうなりますかな」


 組織としての面子も有る、ロハの下働きをしたと有っては、示しが付かない。


「逆に何を望みます?一般的にお金ですか?それとも極秘情報?」


 取引条件については目星をつけていた。それとなくⅠ、Ⅱマリア婆さんから話を聞いている。


「劉老師を此方に迎え入れたい、老師は難色を示されたが、ジャンヌ助祭殿から口聞きを願いたいですな」


 想定通りの条件だ、逆に他の条件で有ったとしたらジャンヌさんには手札が無い。



 ザワリとした、不満半数、賛成半数。

 何せⅠ、Ⅱマリア婆さんの第一印象が悪かった、幹部連中の部下で今だに寝込んでいる者も居るのだ。

 古い幹部、こちらはフェルチーニを筆頭に旧門弟達は諸手をあげて賛成だ。


「マイケル、わたしはヤクザが嫌だと言ったぞ、稽古ならつけてやるが、それ以外は断る」


「そこを何とか。ファミリー創設の功労者である劉老師が加われば、我がファミリーも磐石になります」


 マイケル一党にしたら、門下だから以前に絶対に敵対したく無いのだ。


 こちらに取り込めれば、少なくとも、“大嫌いなヤクザだ”と云う理不尽な理由だけで殺される事も無い。


 また、上手に使えば最強の戦力を手に入れる事が出来る。


「マイケルさん、それは出来ないです~。マリアさんは私と一緒に奇跡認定局に移動となりました。

 法王聖下直下部局ですし、マリアさんは異端審問局の……法王庁の暗部に深く関わり過ぎましたから~」


 マイケルさんの所に行くとなると、かなり不味い事になりますよ。と、ジャンヌさんは釘を刺す、ジャンヌさんにしても自身が動けなくなるので、Ⅰ、Ⅱマリア婆さんは手放せない。


「それではこの話は………」


「ですが、私の補佐役としてならば、マイケルさんの所に業務として出張してもらう事も出来ますよ~マリアさんも僧籍のままだから問題無いでしょ~」


 マイケルとしても端から話をおじゃんにする気は無い、交渉として話を引く振りをしただけだが、難なく程よい妥協点が提示された。


「ムッ、まあ、良かろう。ただマイケル、わたしは遨家極拳の師範としてしか接しない、ヤクザ絡みの案件は知らぬぞ」


 おお!と歓声が上がる、ヤクザ幹部の詰める席ではあり得ない不調法だが、これは仕方ない。


 本来ならファミリー内での掟に関わる案件だ。

 マイケル、フェルチーニ等、親Ⅰ、Ⅱマリア婆さん派が、取り込み条件で組織内の不満分子をとりなしたが……取り込めなければ勝敗度外視の報復対処すべき件だったのだ。

 それが条件付きとは云え此方に取り込めた。


 親マリア婆さん派も、ヤクザで有る以上その建前は崩せない。この業界は舐められたら終わりだ、なし崩し的に他組織に食われる。


 だから敵対者には、最期の一人まで報復行動を実行せねばらならない。………それがしなくて済んだ。


 ………つまり、命拾いをしたのだから歓声位は漏れもする。


「無駄な交渉は好みません、その条件で手を打ちましょう。当方が劉老師の助力を得る代わりに、異端審問局への協力を惜しまない、これでどうですか?」


「いえ、マイケルさんそれでは駄目です~」


 ムッ、とマイケルが息を飲む、条件の上乗せか、後出しは感心しない。などと考えるが、Ⅰ、Ⅱマリア婆さんを得られるならば多少の融通は仕方ない。


 あまり安く条件付けすると、肝心のマリア婆さんがへそを曲げる可能性が有る。


「私達は異端審問局から奇跡認定局へ移動となるので~異端審問局への協力では困るのですよ~」


 ん?と、戸惑う。

 異端審問二課長として面談し、同局員との交渉なのだから当然異端審問局に対する協力と解していた。


 移動云々を口にしていた、また移動先の役職補佐役名義で、劉師を派遣出向するとも。


 だが、それはあくまでも異端審問局への協力前提で、後任に対する便宜と理解していた。その前提が狂う。


 そもそも奇跡認定局など、普通の信者ならばまず聞かない。


 ただ、マイケルは十年程前に引退した“聖女アンナ”の所属が奇跡認定局だった事を記憶していた。


 しかし、知っているのは機関名だけで、奇跡認定局が何をする部局かなどは知らない。


 少なくとも、暗黒街の勢力の助力が必要な部局だとは思えなかった。


 件の聖女は、法王庁の広報、宣伝に精力的に活動していた。


 凛とした佇まい、慈母の如き微笑、毅然とした態度、清楚な美しさは正に聖女と冠するに相応しい者で有ったと、そうマイケルは記憶していた。


 実はマイケルも“聖女アンナ”ファンの一人で有ったのだ、ひそかにアンナのブロマイドなんかを所有してたりする。


「奇跡認定局への協力認識では無くてですね~、次期奇跡認定局長の()()()協力と理解して下さいな」


「………質問なのだが、ジャンヌ助祭殿は奇跡…何とか…局の局長に就任されるから、我等の助力が必要だと、こう言う訳なので?

 ただ、その部局、我等が協力した前例は有りませんな、十年程前に引退されたアンナ殿の例では、むしろ法王庁の表の顔的な部局では有りませんか?」


「マイケルさんも叔母様をご存知でしたか。マイケルさん位の年配では、ほぼ同世代だから当然かもしれませんね」


 いや違う、ローザンヌさんはジャンヌさんと14違いだからまだ三十路だ。だからマイケル一党の最若のフェルチーニにしてからローザンヌさんより一回り年上だ。


 ジャンヌさんとローザンヌさんは、あまり接点が無かったとは云え、どんぶり勘定が過ぎる。雑な女である。


 うん?とマイケルは頓珍漢な返事に戸惑うが、叔母様との言葉が耳に残る。


「ジャンヌ助祭殿はアンナ殿の御身内か?」


 教会内の隠語で女上司を()母呼ばわりするのかと思ったのだ、修道女(シスター)表現的な。


 そうしてみると、ゴッドマザーとは本来教会内ではあり得ない挑発的な隠語だ。


 まあ、これは適当なコードネームを考えるのが面倒なⅠ、Ⅱマリア婆さんが、マイケル一党がそう呼んでいたのをそっくり頂いた自称が教会内に定着した結果だが。


 外部委託局員なので通ったコードネームだ、当然前任の異端審問局長から指摘されたが、Ⅰ、Ⅱマリア婆さんは頓着が無い。


 と言うか、この頃婆さんのアルニン語は片言だ。


「はい~叔母様は分家から法王庁に出向し出家得度しました、私は本家の出自なのです」


「ムッ、するとジャンヌ助祭殿もバロト家か」


 流石に首都在住でバロト家を知らない者は居ない、法王すら選出したことの有る名家だ、他国では王侯に比肩する家柄なのだ。


 アンナの俗名は当然公表などされて居ない。


 しかしそこは“聖女アンナ”ファンクラブの一員、裏から出回った情報を高値で買い取り、更にその情報を裏取り精査し、アンナの俗名、出身、スリーサイズ、趣味、好きな食べ物、好きなタイプなどアンナの個人情報に精通していた。


 因みに情報発信源はあの人と、あの人。


 聖女グッズの販売利権と合わせて、かなり儲けていた。

 いや、後に当人にバレて()()()で儲ける事となる。


 ローザンヌさんも大概なのだ。


 結果、マイケルのジャンヌさんに対する好感度は爆上がりだ、そう言われてみればローザンヌさんの面影がジャンヌさんに有る様な無い様な。


 聖女ファンフィルター越しの視線だから当てにはならないが、まあ、目、鼻、口がそれぞれ定数揃っていて、大体似た様な部位に配置されているのだからそうなんだろう、うん。


「分かりましたジャンヌ助祭殿、全面的に協力しましょうとも」


 そう言って握手を求めるマイケル、この人も拗らせているっぽい。


 ジャンヌさんにしてみたら、何か叔母の話が出てからトントン拍子に話が進み好都合だ。


 また、この目の前のヤクザの親方のニンジンが知れた。


 叔母とは差程接点が無かったので、何かと叔母と連るんでいたアホ姉とテレジアさんからローザンヌ情報を引き出す事にした。


 マイケルの報酬用に。


 ジャンヌさんもバロト家の出身だけあり、やはり大概なのだ。

ストックがたまってきたので、週二投稿します。ストックが尽きたらまた週一になりますが。

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