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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
三章
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シスターマリアとジャンヌさん1

「シスターマリア。此方での生活は慣れましたか~」


 ボクッ!


「お陰様で助祭殿。ロマヌスは久しぶりで随分と様変りしました、わたしがこの国に来たばかりの頃は、移民政策の最初の頃で治安が悪かった物でした」


 ダン!バン!!


「移民ですか?シスターマリアはそんな歳には見えないのですが~」


 バシッ!ビシリ!


 およそ40年程昔の政策だ。


「呵呵カカカ、これでも還暦を越えていますよ助祭殿」


 “駄目だ!逃げッ”

 ズドン!


「“還暦”?何ですか年齢的な例えの様ですが~」


 バシッ、バシッ!ビシリ!


「故国の暦です、十干十二支、60年にして一巡するのですよ」


 タッ、ダン!


「え!すると60才以上なのですか~、余りに若いので50代位だと」


 “ま、待て” ボクッ!


「呵カカカ、50代は言い過ぎですよ助祭殿これでも不惑を過ぎた倅が居りますので」


 タッ、ダン!………ズン!


「シスターマリア、度々で申し訳無い。何ですか“不惑”とは?」


 ヒュッ、ビシリ!


「噴!不惑とは40才の事ですよ、本来ならば迷い惑わされない年功ですが、あの盆暗ときたら………破!」


 ズダン!と凄まじい()()と共に破落戸、いや、マフィアの幹部と思われる男達が吹き飛んだ、冗談の様な光景だ。


 お分かりであろうが、シスターマリアとは()()ババアだ。どうやらナザレ州警邏局から逃げ切った様である。


 つまり、詰まらない公務執行妨害罪、傷害罪(殺人未遂は適応されなかった)で大人しく捕まれば良かった物の、晴れてアルニン全国指名手配となった訳である。


 助祭殿とはシスタージャンヌ、初の女性キャラだ。紅一点だ。マリア婆さんは員数外。


 二人は異端審問局二課局員だ。

 一課は異端審問調査が業務で、調査、捜査が仕事であるが、現在は萬諜報活動を行っている。


 二課は異端審問取調べが業務だ。直接的な取調べを拳が行う、現在は一課の下請けで荒事担当だ。


 三課もかつて存在したが、現在は()()()廃されている、拷問担当だ。


 ただ三課は、かなり政治色臭いので異端審問局長直下部局であり、一般的に知られる異端審問局の業務は三課の仕事と認識されていた、くどいが()()()は廃された課だ。


「て、テメエ等、こんな事して只で済むと思ってねぇだ、ギャン!!」


 ビシリ!と、何やら言い掛けたマフィア幹部の顔面を、鞭の先端が弾いた。鼻を弾かれ派手に鼻血を撒き散らす。


 ジャンヌさんだ。修道女がゴツい対人戦用の革鞭を用いて無双するのは、絵的にゾクゾク物である。


 ジャンヌさんは二課長でも有る。そのジャンヌさんが、自らマリア婆さんを率いてマフィアに襲撃を掛けて居る事に、実は意味は無い。


 別に“カストーラファミリー”が異端であるとか、何か別の部局の応援で、荒事担当の二課が暴れている訳でも無い。


 本当に詰まらないトラブルからの騒動だ。


 異端審問局は法王庁内に所在しているが、局員も連れだって内勤している訳では無い、それぞれの教区の教会に派遣されている。


 二人は旧市街のテリポリ教区の教会に勤めている。


 いや、マリア婆さんの事は一先ず置く、その内に何かで由来が知れるだろうし、どうもグダグダキャラが増えすぎた嫌いも有る。反省はしている。


 ツカツカとジャンヌさんが鼻血を吹き出したマフィア幹部に近づく、短鞭に持ち替えている辺りソツがない。


「この辺りでは見ない顔ですねぇ~、他所から縄張り拡大ですか?」


「この辺りは、昔はマイケル坊が仕切っていたけど、昔の話だからねぇ。

 おい、マイケル坊がどうなったか知らないか」


 いつの間にか、マリア婆さんがジャンヌさんに並んでいる。こんなで拳士だ、一応伸したヤクザチンピラに残心したが、戦意喪失を確認済みだ。


 己の拳に残心の必要は無いが、ジャンヌ助祭の鞭で伸された者は分からない。


 マリア婆さんが人の事は言えないが、ジャンヌの対人鞭は結構エグい。


 急所を一撃だ、鼻なら鼻骨を折り、目なら潰し、男の急所なら、最悪、折れるか潰れている。


 やはりゾクゾク物だ。


「マイケルですか~?ミカエルでなく」


 ミカエルの連合王国発音はマイケルだ。ただ、ミカエルとやらは大天使長だか何だかで、景信教徒でそう名乗る人は稀である。


 豊葦原国で、ノブナガ、ヒデヨシ、イエヤスと名乗るの同様だ、名前負け以前に何か恥ずかしい。


「本人がそう名乗っていた。この国の生まれだそうだが、憚りから外国発音にしたそうだ」


「何だと、ドン.マイケルを坊だと!ババア!舐めやガッ」


「せめて老シスターとでも呼べ、間抜け。だがよくぞ気萎えもせずにほざいた。そこは評価する」


 多分誉め言葉は聞こえていない、眉間を一撃、失神、失禁だ。


「他に話になる様な人は………応援が来たみたいですねぇ~」


 ここは路地裏の更にスラム。マフィアの幹部がこんな所に………と思うかも知れないが、どうせ善からぬ取引か何かでたむろしていたのだろう。


 だろうと言うのは、別にマフィア、ヤクザの活動に、教会が取締りや教導関与している訳が無いからだ。

 違法薬物、危険物、横流し物資、人身売買、その他犯罪行為。


 それを取り締まるのは警邏局の仕事で、教会の仕事では無い。


 因に旧市街は独立行政区内では無いから、治安維持は普通に首都警邏庁の管轄になる、ここいらならテリポリ警邏本局の管轄下になるだろう。


「………どうした事だ、襲撃と聞いたが……」

 ガタイの良いのが手下を引き連れて乱入だ、だが、状況がつかめない。


 そりゃそうだ、まさか修道女二人に、十人からいるヤクザ者が伸され様とは思わない。


「いや頭、あいつ等だ、いきなり襲いかかってきやがった、格好に騙されたら駄目だ、あいつ等()()()()じゃない、修道女の格好をした変態のギャン!」


 対人鞭に持ち変えたジャンヌさんの一撃だ、顔面に一撃、前歯が舞った。


「助祭殿とは共闘がやりやすい」


 タンッ!踏み込みと共に前歯の破落戸に追撃だ、元々気の短い質だ、一歩で間合を詰め、長拳を繰り出す。


 エグい事に狙いは顔面人中の眉間だ、鼻骨、前歯を折られた所に、ほぼ同一ヶ所への追撃だ、男は悲鳴ひとつ上げる事無く、頭から弾き飛ばされた。


「な!“疾駆長打”馬鹿な!」


 マリア婆さんは耳が達者だ、乱入ヤクザの頭の呟きを拾っていた。


 これがヤクザ連中の危機を救う。


「おい、何故疾駆長打を知っている。技だけでなく技名の発音もだ、極拳を知っているのか」


 マリア婆さんの動きが止まる。極拳を知る者ならば迂闊に技は出せれない、防がれるとかでは無く、盗まれる事を警戒しての事だ。


 その場合殺さなければならないからだ。


 眼光鋭く、いや眇眼に紙一枚踵を浮かし、両腕は極端に脱力する。僅に沈めた腰は素人では分からない。


「や、やはり“劉老師”大変ご無沙汰いたしました」


 男は右拳を左掌でくるむ妙な仕草をすると傾頭した。


「む、誰だ?“俺”の名を知っているのは門下だけだ、この地には40年近く訪れていない」


 もう一人の方にスイッチした、こっちの方が冷静な人格なので話にはなる。


 マリアとは移民帰化した時に景信教に入信した際の洗礼名だ。


 だから、二重人格のもう一つの人格の洗礼名もマリアなのだが、紛らわしいのでマリアⅡとでも呼ぶ事にする。


「お忘れでしょうが、ポルチーニです“劉老師”から“遨家極拳”の初等鍛練の手解きを受けました」


「ああ、束脩としてポルチーニを納めていた坊主か、思い出した」


 束脩とは月謝の事で、ポルチーニとは食用キノコだ。それをそのまま名として呼んでいたのだから、雑なババアだ。


 いや当時は、二十代なのだからババア呼ばわりはおかしいのだが、若い頃を想像したくないのだ。


 困ったのはポルチーニとやらの取り巻きだ。どう対応して良いのか分からない。


 空気を読まないジャンヌ助祭が言う。


「シスターマリア、昼には戻らないとならないから~、こいつらも纏めて打ちのめしましょ」


 バシン!と、強めに対人鞭を打ち鳴らした。


 やっぱジャンヌさんはゾクゾクするな~風邪か?


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