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転生したら魔王城になっていた!?【初稿版】  作者: 光樹 晃(ミツキ コウ)/原案・黒崎游
6/23

【6】発覚、衝撃の事実……魔王とは以下略

 こちらの世界に転生してきて、数日が経過した。

魔王の城に生まれ変わった俺は……特に何もしないまま。

「なんじゃ、退屈なのか和が城よ?」

そりゃそうでしょ、魔王様。

なんせ俺は城な訳ですから、やれる事といったら魔王様との会話か、城内を見て回るぐらいしか無いんですし。

「ずいぶんと落ち着きのない奴じゃの、お前は。城のクセに」

城のクセにって……別に俺だって好きで城に転生してきた訳でもないんですがね。

「第一、まだお前が覚醒してから大して時間も経っておらぬじゃろ?」

いや、もう数日ですよ。す・う・じ・つ!

やれる事が魔王様とのコミュニケーションと、城内を見て回るだけで数日も経てば、発狂しそうなほど退屈に決まってるでしょう!

しかも魔王様はたまに寝てるし、その間は俺は一人なんですよ!?

「せっかちな奴じゃのう、お前は。たかたが数日などでそんなにイライラするとは」

たかだか数日って……

 そこでふと、俺の頭に疑問が浮かんできた。

もしかして魔王様。

「ん? なんじゃ?」

魔王様の時間の感覚って、人間とは違うんですかね?

「時間の感覚? そんな物は気にした事も無かったが……うむ、ちと待っておれ」

俺の問いかけに何か考えるように視線を泳がせてから、魔王様が目を閉じる。

……何をしてるんだ、これは?

「少し黙っておれ。我の内にある知識を探っておるのじゃ。お前の思考が流れ込んでくると、集中できぬではないか」

あぁ、なるほど。

承知いたしました。

「うむ、ではしばし待っておれ」

……

…………

………………

……………………

「……わかったぞ」

本当にちょっとだけ頭を空っぽにしていたら、すぐに魔王様は目を開け言った。

頭を空っぽにしていたせいで、魔王様の反応に俺は無反応だったが。

「おい、わかったと言っておるだろうが!」

イデッ!

無反応な俺に、魔王様のヒールスタンプが炸裂する。

すっかり慣れたこのやり取りではあるが、痛いものはやはり痛かった。

「ごちゃごちゃと一人思考を続けるでない。我が不快になるであろう」

はい、すいません。

それで、どうだったんですか?

「うむ、お前の言う通り確かに人間と我とでは、時間の流れる感覚が違うようじゃの」

あー、やっぱりそうでしたか。

だから魔王様は平気だったのか……

「そのようじゃの。元・人間のお前には長く感じられるんじゃろうが、我には少しボーッとしてる間程度じゃ」

それじゃあ俺の気持ちなんて、魔王様がわかるはずもありませんよね。

「当然じゃ。そもそも我が居城たるお前を主である我が理解する道理もないがの」

……身も蓋もないけど、ごもっともです。

「とは言え、退屈で発狂されても厄介じゃのう……どうしたものやら」

 意外にもそこで話を打ち切らず、何やら思案する魔王様。

それにしても城と言うのもなってみると、想像してるより不便なのだとしみじみ思う。

いや、そもそも自分が城になる想像なんてしたことないんだけど……

「本来ならばお前のような元・人間の性格なぞではなく、魔王の居城に相応しい威厳と忠義に溢れた城になるはずだったしのう」

それ俺のせいですか?

原因でいくなら、魔王様の城造りの腕に問題があった可能性もガフッ!

「……まったく、なんでこのような事態になってしまったのかのぅ。厄介な話じゃ」

ため息吐きながら容赦なく踵でグリグリするのやめてください、魔王様……

「ふんっ、お前がいちいち我に口答えをするのが悪かろうて。いい加減、己の立場を理解することじゃな」

善処はしております。

「ほーんとかのぅ……? まぁよい。せっかくじゃから、魔王の城としての能力でも覚えてみるか?」

 魔王の城としての能力……ですか?

「そうじゃ。なにせ魔王の城じゃからの、外敵に対する迎撃能力などが無くてはいかんからな」

なるほど。確かにRPGなんかでもラスボスの城には、仕掛けや罠がてんこ盛りな場合が多かったし。

「RPGと言うのが何なのかわからぬが、まあそういうことじゃ」

それで、どんな能力があるんですか?

やっぱり定番の落とし穴とか、歩くとダメージを受ける床とか……

「そんなものがあったら、我が難儀するであろう。お前、やはり我に対して叛意を持っておるのか……?」

え、いや……まさか城の主が落とし穴にハマったり、ダメージ床でダメージ負ったりするんですか……?

「当たり前じゃ。そんな『こいつは落ちない、あいつは落ちる』なんて、都合のいい罠がある訳なかろう?」

……勉強になりました。

人間の時に持ってた知識と、実際の仕組みはだいぶ違うのですね。

「なんじゃ、またお得意の『ラノベ』の知識か? つくづく便利なんじゃの、ラノベとやらの物語に出てくるあれこれは」

いえいえ、これはどちらかと言えばゲームの知識ですよ。

「ゲーム? それはどんなものなんじゃ?」

えーと、ちょっと待ってくださいね。

今、イメージを出しますから。

……

…………

………………

「なんと! な、なんじゃこれは!? 妙な箱に風景が映っておるではないか!! しかもその中で小さな人間やら魔物やらが……!?」

 これがゲームってやつです、魔王様。

自分が主人公になって、画面……その、小さな箱に映った人間を動かして、魔物を倒したりして遊ぶんです。

「ま、魔物を倒して遊ぶ……じゃと!?」

えぇ、そうですけど……どうしました、なんか顔が青ざめてますよ?

「お、恐ろしい遊びをするのじゃな、お前の元いた世界の人間と言うのは……ま、まさかこの世界の人間も!?」

いや、それは無いと思いますけど。

まぁ、ここから俺は動けないからこっちの世界の人間についてはよくわかりませんし、そういう遊びが無いとも断言は出来ませんが。

「……むむむ、我の知識にはそのような内容は見当たらんな。たぶん無いのじゃろう、きっとそうに違いない。わっはっはっはっ」

あの、魔王様?

なんか笑い声が乾いてますが、大丈ブグホッ!

「余計な気遣いは無用と言っておろう!」

はい……調子に乗りました、すいません。

とりあえず頬を伝う一筋の汗については、見なかった事にいたします、はい。

「お前は本当にいちいち一言余計だのぅ……」

なるべく改善できるようには努力しますって。

「出来るのかのぅ、その厄介な性格の改善が」

……努力はします。

「わかった、わかった。二回も言わずともよいわ」

ほら、『大事なことだから二回言った』ってやつですよ。

「ふむぅ? 大事なことというのは二回言うものなのか、人間たちの決まりでは」

いえ、これも俺のいた世界での知識ですので、こちらの世界では適用されないとは思いますけど。

「なんじゃ、異世界の知識とは役に立たんのじゃな」

ラノベだと大いに役に立って、それで主人公は大活躍するんですが。

「ほほぉ。して、大事なことを二回言うのはラノベでは、どのような役に立つ知識なのじゃ?」

……すいません、嘘つきました。

大事なことを二回言うのはラノベでも別に役に立たないです。

「お前、本当に無駄なことだけはよく考えるのぅ……」

魔王様、その話はもういいですから。

「ぷっ。都合が悪くなったから話を変えおったな、お前!」

あ! なんですかその露骨に人をバカにした笑いは!?

「いや、つい可笑しくてな。それにお前、人ではなくて城じゃろ」

もうそのツッコミもいいですから!!

「あっはっはっはっ! すまぬすまぬ、本当にお前は面白い奴じゃのう!」

俺の真剣さに反比例して、魔王様は朗らかに笑っていた。


「さて、それでは本題に戻ろうかの」

 思いっきり笑うこと数分、気が済んだのかいつもの顔に戻り魔王様が言う。

で、魔王城の能力ってどんなのがあるんですか?

「そうじゃの。まずは外敵の侵入を阻む結界かの」

結界!

わかります、それ!

「ほう、わかるのか。もしやお前のいた世界にも結界はあったのか?」

いえ、結界はありませんけど、そういう設定はラノベやゲームにも多々存在してましたからね。

「ふむ、そうなのか。意外と侮れぬな、ラノベとゲームに納められた知識と言うのも」

まぁ、知識……と言うか、空想の産物なだけなんですけどね。

「そうか。ともあれ、それがまず第一じゃな。いかに魔王の城と言えども敵に侵入されては、後手に回ってしまうは必定だからの」

ちなみに敵と言うのは……?

「ん? ……えーと、人間の軍勢とかかな?」

 俺の問いに目を点にして、大雑把な返事をする魔王様。

これは知らなかったな。

「ま、まだ人間界には来たばかりで、敵に遭遇したことがないだけじゃ!」

はぁ、そうなんですか。

あれ、じゃあまだ全然人間たちに対しては何もしてないってことですか?

「……そうなるの」

じゃあ、別に敵も何も無いのでは……

「我が何もしてなくとも、他の魔王は既に侵攻やらなんやらをしておるからのう……ここに魔王の城があると知れば、攻撃してくるに違いはなかろうて」

……は?

「ひ?」

ふ?

じゃなくて!

『他の魔王』ってなんですか!?

魔王って、魔王様以外にもいるんですか!?

「おるぞ」

聞いてねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

「別に聞かなくてもそんなの常識じゃろうに……」

だから俺は元々こっちの世界の人間じゃないって、言ってるでしょおおおおおおおおお!?

「なんじゃ、ラノベやらゲームやらにはその知識は無いのか?」

あー……いや、確かに無くはないけど……でもてっきり魔王様が人間界に来た、最初の魔王様なのかとばかり。

「そうじゃったらどれだけ良かったことか。そんな状況なら何もせずに、のんびりと過ごすだけだわい」

あんた、魔王じゃないのか……?

「だってだって面倒くさいじゃん! 人間いっぱいいるし、攻撃されたら怖いし、魔物も作らなきゃいけないしで!!」

……………………はぁ。

「なんじゃその、『あぁ、こいつダメな魔王だ』みたいなガッカリした溜め息は!?」

いや、まさにその通りなんですけど……ウゲボッ!

「生意気! お仕置き! 反省しろ!」

いやっ! あのっ! そんなにっ! ガンガンっ! 踏みまくらないで!!

「はー、はー、はー、はー……」

息切れしてるよ、この人。

「人じゃない! 魔王!」

あぁ、はいはい。魔王でしたね、魔王様は。

たまに忘れそうになる……

「私だって魔王なんてならなくていいなら、なってないよ!!」

なんでなったんですか、魔王なんかに。

「……生まれた時からそう決められてたから……」

そういうの、生まれた時に決まってるんですか……

「……うん」

 素直に頷く魔王様。

なんか、魔族にも色々と複雑な事情はあるようだ。

「こほん。まぁ、そんな話はいいとして、だ」

あ、都合が悪くなったから話題を変えようとしてますね?

「えぇい、うるさい! お前は我を守る城なのじゃから、とりあえず結界ぐらいは張れねば話にならんじゃろ!」

まぁ、そうですね。

「と言う訳で早速、結界張りを始めるとするかの」

魔王様。

「ん? なんじゃ?」

魔王様って、もしかして先生とかになりたいんですか?

「なななな、何を言うておる!? 我はただちょっと魔王教育の頃の鬱憤を晴らしたいだけで、先生になどなりたくはないぞ!?」

鬱憤、て。

魔王様の天然に呆れてるその時だった。

 俺の全身……要するに城としての建物全体なんだが、に妙な感覚が走ったのは。

「どうした、城よ?」

これは……!

妙な感覚の元へと意識を素早く移動させていく。

そして妙な感覚の正体を、俺は確認した。

「な、なんじゃと……!?」

俺と思考を共有してる魔王様もそれを認識し、驚愕の声を漏らす。

城の正門を少し入った辺りに、三人ほどの人間が侵入して来ていた。

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