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貴方は人か? それとも、獣か?  作者: 舞姫
壱の世界
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一日目と二日目

最近人狼にはまったので書き始めました。暇つぶしにどうぞ。

レイラ「こんな所で足止めなんて。お母さん大丈夫かしら?」


ヒムレー「なに。直ぐに止むだろう。心配はいらんよ」


トール「そうじゃな。これ位の吹雪はすぐに止むと相場が決まっておる」


メル「出来るだけ早く帰れると良いのですが・・・・・」


ジャック「あん? 食い物も寝床もあるんだ。ゆっくり待とうぜ」


ルイーゼ「シャンドラ姉さま。大丈夫ですか?」


シャンドラ「ええ。貴方こそ大丈夫?」


パトリシア「はぁ~。明日には締め切りですのに・・・・・」


ジョン「パトリシア。紙とペンがあればどこでも書けると思うよ?」


人里離れた洋館に10人の男女が集まっていた。集まろうとして集まった訳ではない。ただ、吹雪によってこの洋館に避難したところ、他の9人と出会ったたというだけである。


爺さん「お前さんは、人狼って知っとるか? 古い伝説でな。二匹で行動していて、吹雪で遭難した人々に交じって、夜になるとひとりずつ食っちまうって話だ」


ルイーゼ「姉さま・・・・・」


シャンドラ「大丈夫よ。私がついてるわ」


爺さん「ハッハッハ! 冗談じゃ! ただのウワサ話じゃよ」


パトリシア「あら。どうでしょうか? いるかもしれませんよ?」


ジャック「はん。馬鹿らしい。そんなのがいるなら見てみたいね」


トール「会談も良いが、そろそろ良い時間じゃ。儂は部屋に戻るぞ」


ジョン「そうだね。私も部屋に戻るよ」


レイラ「明日には吹雪が止んでいるといいんだけど」


ヒムレー「では、諸君。良い夜を」


爺さん「そろそろ日が暮れるな。もし、中に人狼が交っていたら・・・怖いのぉ~」


爺さん「では、また明日」


夜は何事も無いかのように過ぎ去り、朝がやってくる。しかし、吹雪は依然として止んでいない。


レイラ「いやぁぁあああ!」


未だ微睡む洋館に鋭い悲鳴が木霊する。


トール「何事じゃ!?」


パトリシア「何がありましたの!?」


悲鳴の元に全員が駆け付けると、口を押えて床に座るレイラが居た。彼女の瞳は大きく見開かれ、驚愕の表情が浮かぶ。その視線の先には、無残な姿となった爺さんの姿があった。


ジャック「おいおい。嘘だろ・・・・・」


シャンドラ「酷い・・・・・」


ジョン「いったい、誰がこんな事を」


ヒムレー「ふむ。裂傷に嚙み傷。まるで、獣に襲われたような姿だな」


不思議と冷静なヒムレーの言葉に、全員が同じことを思い浮かべる。


「人狼」


誰が言ったかも分からないその言葉は、彼等全員が思っている事を代弁していた。


ジャック「マジかよ・・・・・」


トール「長生きはしてみるものと言うが、こんな事件に遭遇するとは・・・・・」


メル「こんな所にはいられないわ! 早く出ましょう!」


ジョン「出るって言っても、外は見ての通りの吹雪だ。ここから出ても、一時間と持たないだろうね」


メル「じゃあ、どうするって言うのよ!?」


シャンドラ「どうするって言われても・・・・・」


ヒムレー「人狼を探して斃すしかあるまい」


トール「じゃが、どうやって斃す? 誰が人狼か分からんし、武器も無いぞ?」


レイラ「あの、これを・・・・・」


今までショックで黙っていたレイラが出したのはリボルバー。六発式のリボルバーには四発の弾が込められていた。そのリボルバーをジャックが奪う。


ジャック「あの爺さん。こんなモンを隠し持ってたのか」


パトリシア「ふざけて言っていた様だけど、内心信じていたのかもしれませんね」


ジャック「さて。じゃあ、誰から逝く?」


ジャックが無造作にリボルバーを他の七人に向ける。


ヒムレー「何を言っているのかね?」


ジャック「あん? 俺は人狼じゃねぇ。なら、お前らの中の誰かが人狼って事だろう?」


トール「話は分かった。じゃが、お前さんが人狼でないと言う証拠は? 儂は正体も定かでない者にそれを持たせたくはないのぉ~」


ヒムレー「ふむ。その意見には賛成だ」


ジョン「私もだ」


言葉には出さないが、ジャック以外の全員が思ってたのだろう。無言の圧力がジャックを襲っていた。


ジャック「チッ! 分かったよ」


ジャックは近くにあったテーブルにリボルバーを捨てる様に置いた。


シャンドラ「じゃあ、早速人狼を探しましょう」


ジョン「探すと言っても、どうやって・・・・・」


レイラ「あの、私が力になれるかと・・・・・」


ヒムレー「レイラか。どういう事かね?」


レイラ「実は、私は占い師なんです。一日に一回だけですが、他の人の正体を占う事が出来ます」


ジョン「なるほど。私の知っている占い師とは随分違う様だが・・・・」


レイラ「ええ。特殊ですよね。ですが、私は祖母からこれを習ったんです」


ヒムレー「そうか。何とも幸運な事だ。実を言えば、私も占い師でね」


パトリシア「実は私も・・・・・」


シャンドラ「私もよ。四人もいるのね」


ジャック「おいおい。これなら楽勝じゃねぇかよ。さっさとやっちまってくれ」


ジャックの言葉に四人が頷き、それぞれの方法で占いを始める。


ジョン「一応揃えようか。その時計の秒針が12まで来たら一斉に結果を頼むよ」


時計の針が12を指す。


レイラ「レイラ白」


ヒムレー「ロディ白だ」


トール「爺さん白じゃ」


パトリシア「ヒムレー白ですね」


ジャック「あ? どういう事だ?」


レイラ「実を言うと、私は占い師ではなく、霊能者なのです。死んだ人が人狼か、人なのか知ることができます」


ヒムレー「私は何の力もない村人だよ。なに、ちょっとした牽制だ」


トール「儂も同じじゃ。これだけの占い師が本当ならよいが、偽物が交っていたら牽制で怯むじゃろう。こんな状況じゃ。既に狂い始めている奴の一人や二人いたって可笑しくないじゃろうからな」


ジャック「偽物って、おいおい。考えたくもねぇぜ」


ヒムレー「それで、シャンドラは? 私たちと同じく牽制かね?」


メル「シャンドラ?」


シャンドラ「ジョン白よ」


メル「どうして遅れたのかしら? 怪しいわね」


トール「ふむ。占い師が2人と霊能者が一人か」


ヒムレー「シャンドラ。随分遅かったね」


ジャック「遅ぇな」


シャンドラ「ごめんなさい」


メル「別にいいわ」


ジャック「次からは合わせろよ?」


シャンドラ「うん」


メル「では、進めましょう。一刻も早く人狼を斃さないと」


ジャック「レイラ。この中で人狼じゃないと確信できんのは今の所アンタだけだ。話を進めてくれ」


レイラ「ええ。出来るだけやってみるわ」


トール「頼むぞ」


ヒムレー「とりあえず、今日は白でなかった者から指定していこう」


ジョン「そうだね。占いが偽物かは知らないが、本当なら人を殺すことになる。それよりなら、まだ人と確定していない者からいこう」


レイラ「そう言えば、ルイーゼさんは?」


レイラの言葉に全員が辺りを見回す。しかし、ルイーゼの姿は無かった。


トール「ルイーゼ、おらんのな」


シャンドラ「ルイーゼなら、まだ寝ているわ」


ジャック「おかしくねぇか? こんだけ騒いだのに、起きてこないなんてよ」


シャンドラ「あの子は朝に弱いのよ。それに、気付いてないならそのままにさせておきたいわ・・・・・」


ジョン「そうか」


パトリシア「では、今日は誰にいたしますか?」


レイラ「・・・・・ルイーゼさんにします」


シャンドラ「駄目! あの子は人狼なんかじゃないわ!」


レイラ「シャンドラさん。ですが・・・・・」


メル「でも、可笑しいわよ。こんなに騒いでるの起きてこないなんて。よほど深く寝ているのね」


シャンドラ「何が言いたいの?」


薄っすらと笑みを浮かべるメルにシャンドラが食って掛かる。


メル「別に、大したことじゃないわよ。ただ、こんな時間まで眠れるほど夜更かししたのかしらって思っただけよ」


ヒムレー「ふむ。人狼が活動したのは夜だ。朝は眠いはずだと、そう言いたいのかね?」


メル「そうは言ってないけど、可能性はあるでしょう?」


ジャック「そうだな。意外と当りかもしれねぇな」


トール「可能性はあるか・・・・・」


全員がルイーゼが人狼なのではと思い始める。その顔には、ルイーゼが人狼であって欲しいと言う願望と生贄を見つけて今日は殺されないという安心が浮かんでいた。


シャンドラ「そんな。違うわ!」


レイラ「今日はシャンドラさんにします」


ヒムレー「把握した」


パトリシア「それで良いかと」


トール「うむ」


メル「異論はないわ」


ジャック「それで良いと思うぜ」


ジョン「異論はないよ」


シャンドラ「そんな・・・・・」


シャンドラはその場に崩れ落ちる。


トール「なら、さっさと済ませるか」


ヒムレー「レイラ。撃てるかね?」


レイラ「すみませんが、初めてです」


ヒムレー「なら、私がやってこよう」


ヒムレーがテーブルからリボルバーを持ち出し、ルイーゼの部屋へと向かおうとする。


シャンドラ「させない!」


ジャック「抑えろ!」


妹を救おうと立ち上がったシャンドラはその場でジャックやジョンに羽交い絞めにされ、今度は強引に床に座らされる。


トール「悪いが、静かにして居ってくれ。儂らも死にたくないし、奴も好きでルイーゼを殺すわけでは無いのじゃ」


数分後。屋敷の中に乾いた銃声が響き渡る。


ヒムレー「終わったぞ。撃たれる瞬間まで、寝ていた」


ヒムレーはルイーゼの最後をシャンドラに告げると、リボルバーをテーブルへと置き、近くの椅子へと座って脱力した。その姿は数分前と打って変って、疲弊しきっている様だった。


ジャック「なら、今日は解散か」


パトリシア「そうなりますね。歓談と言う雰囲気でもありませんし」


トール「やる事がないなら、部屋に戻るとするかの」


ジョン「その前に、占い先を決めたらどうかな? 二人いるのだし、被ったら損だろう?」


メル「そうね。なら、レイラに決めてもらいましょう」


レイラ「パトリシアさんは、メルさんとジョンさんをお願いします」


パトリシア「ええ。いいですよ」


レイラ「シャンドラさんは、ジャックさんとトールさんをお願いします」


シャンドラ「・・・・・」


ヒムレー「決まったようだな。では、私は部屋に戻らせてもらう。少々疲れた」


パトリシア「では、私も失礼いたします」


ジャック「俺も部屋に戻るぜ。シャンドラ。馬鹿な事は考えるなよ?」


シャンドラ「・・・・・」


トール「ジャック。その前に手を貸してくれんかの? この死体をこのままにするのも不衛生じゃし、ひとまずは使っとらん部屋に安置しておきたいのじゃが」


ジャック「あん? なんで俺なんだよ?」


トール「元気が有り余っとる様じゃからな。それとも、その姿で疲れとるとぬかすのか?」


ジャック「仕方ねぇな。さっさとやるぞ」


ジョン「それじゃあ、私は部屋に戻るよ」


ジャック「おっと。行かせねぇぞ? 勿論、手伝うよな?」


ジョン「はぁ~」


トール、ジャック、ジョンが爺さんの死体を運び、他は部屋へと戻っていった。全員が、これで惨劇が終わることを望んでいた。


しかし、悪夢は始まったばかりだった。

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