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隣の君。

作者: 漣の音色

「まぶしーな」


強烈な日の光に照らされ目を開ける。

数秒の沈黙の後、今は授業中だと思い出す。

気づかない間に眠ってたらしい。


「今日も眠そうやね。毎日お疲れ様。」

「まぶしかった。」


隣に座る君が話しかけてくれたのに

僕があまりに的はずれな答え方をするから

君はクスッと笑う。


いつもより君が可愛く見えるのはどうしてかな。

寝起きだからかな。

君が髪型をショートに変えたからかな。

それとも。僕が君を好きだからかな。



高校1年生の時に君と知り合ってずっと片想いしてた。3年生になってようやく君と同じクラスになれた。そして一昨日の席替えで君は僕の隣の席になった。奇跡ってこういうことなんだと改めて感じたりした。僕は運が良いのかな。クラスの人気者の隣になれるなんて。好きなこと隣同士になれるなんて。


「ねぇ、筆箱変えたの?」

「えっ?」


急な問いかけに驚く。


「あ、この前友達に貰ったんだ。」

「そっかー。良い色だね。」

「うん。」

貰ったなんて嘘だ。君と隣同士になれたから、

昨日買いに行った。君の好きな色。

この空みたいな青く澄み渡った色。

君との話題を少しでも増やすために。

だからまた嘘をつく。


「ありがと。この色好きなんだ。」

「え?ほんと?!私もだよ!!」

「そうなの?!偶然だね。」


相変わらず下手くそな嘘をつく。

それでも君は優しいから信じてくれてるんだろな。

ごめんね。いつか本当のこと話すね。


授業中だということも忘れて、夢中になって話しをする。君が僕を見てくれてる。君の瞳に僕が映ってる。


君のその笑顔が大好きだ。世の中の悪いところなんてなにも見えてないみたいな無邪気な笑顔。見えてないんじゃなくて、君の中では存在してないんじゃないか。とも思えるくらいに毎日楽しそうに笑う。


でも、僕は知ってるよ。君が陰で泣いてることも、

友達とうまくいかなかって落ち込んでたことも。

ストーカーだって思われてもいい。

君を見ていたいだけだから。いつも励ましてあげたいとは思うんだけど、君はみんなの前では笑顔だから。

話しかけにくいんだ。

君のために、何かしてあげたいから、僕は笑顔でいるようにする。

少しでも君に笑顔を。幸せを。分けてあげれたら。なんて思うから。


こうやって話してたら君をもっと好きになる。

君がそうやってまた無邪気に笑うから。


「実はね。私、親がいないんだ。2人とも事故で死んじゃって。小さい時からずっと親戚の家を転々としてたんだ。だから、友達できなくて。小学校3年生くらいまでは空ばっか眺めてた。」


そのせいでこの色が好きなのかも。

って。いつもみたいに無邪気に笑ったけど。

僕は衝撃を受けてた。君の過去の話もだけど、それよりどこかで納得してる自分がいることに。それと、

こんな話しを僕にしてくれることに。


「ごめんね。こんな話し急にしちゃって。」

「いいよ。話してくれて嬉しい。なにより。納得できた。君がいつも笑っていられることに。」

「え?」


少し気持ちを落ち着かせて、

自分の中で出した答えを君に伝える。

どこかで耳にした言葉。


「君がいつも笑ってられるのは、過酷な現実を自分の力で切り開いてきた証なんだね。でも、これからは大丈夫だよ。僕も一緒に切り開いてあげるから。」


あっ。と君は言ったっきり黙ってしまう。

少しして君は涙を流した。少しずつ流れた涙の粒は、

次第に大きくなり、ついには周りの目も憚らずに、君は大声で泣いた。

授業が終わってて良かった。

なんて、的はずれなことを考えてた僕は

周りの冷ややかな視線に気づき萎縮してしまう。


しばらくして、泣き止んだ君は僕に一言だけ言ってくれた。

「そんなことをさらっと言える、だからあなたのことが好きなの。」



ほら、やっぱり僕は運が良い。

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