003.会話
半年以上お待たせしてしまって申し訳ありおません!本編などの更新に集中していたため更新できませんでした。しばらくは、こちらの更新に集中したいと思います。
半年も更新していなかったのにブックマークしたままでいてくれた5名のユーザー様、本当にありがとうございます。そして本当にすみませんでした。
なんと、黒髪の少女とは同じクラスだった。そのため、小学校に入学してからというもの黒髪の少女を目で追う日々が続いている。
少女は僕とは違い、いつもニコニコしていて、友達もたくさんいた。友達が多いので毎日、朝の「おはよう」と帰りの「バイバイ、また明日」を返すので忙しい人だった。それでも、少女が僕にも挨拶することを忘れたことは一度もなかった。当時の僕の度胸では、挨拶されても会釈を返すのでいっぱいいっぱいだった。
小学校に入学してから2週間ほどたった。1年生達は初めての給食。そして、初めての昼休みを体験する日だった。
(よし!)
大丈夫。昨日からシミュレーションはたくさんした。だから大丈夫。
僕が昨日から決めていたこと。それは黒髪の少女に初めて僕から話しかけることだ。だって、気になるじゃないか。何で会ったこともない僕の名前を知っているのか。毎日笑顔で挨拶してくれるのか。だったら、もっと早く話しかければ良かったはず。でも、そんな勇気が僕にはなかった。僕からしてみれば、友達がいるっていうだけで違う世界の住人のように感じるからだ。それに、一言二言で終わるような簡単な話じゃないと何となく感じていたからだ。親の機嫌を損ねないように常に生活していた僕は、何かを何となく察することを身につけていた。空気が読めないのは子供の専売特許であり、子供なら許されるものである。しかし、僕の両親は違った。いや、頭の中でそれを分かっていても僕の世話のせいで仕事が溜まってイライラしてるので、理性で怒ることを抑えられないのだ。僕だって怒られたくない。そのためには親のイライラが凄く溜まっているときは自分の気配を消すしかない。起こられるのみ膳に防ぐためには、察することが必要不可欠だったのだ。そんな中で養われた感覚はほぼ外れない。だから正しいと自分で信じられる。
運良く、友達に遊ぼうと誘われたが少女は読書のためそれを断ったため、いつも友達に囲まれている少女が1人でぽつんっと席に座って読書をしていた。これは絶好のチャンスである。僕は席を立ち、歩いた。そして、少女の前に立った。少女は本に集中していて全く僕に気付かない。僕は勇気を振り絞って、
「あ、あの!」
声をかけた。少女はビクンっと肩を上げ、顔を上げた。
「あ・・・・・・・・、瞬君!」
話しかけてきた相手が僕だと認識すると、少女は少し前の真剣に読書をしていた表情とはかけ離れた笑顔を僕に向けながら、本にしおりを挟み本を閉じた。
「如何したの?」
そして、コテンと可愛らしく首をかしげた。その自然で可愛らしい体勢のまま僕が話すのを待つ。
「え、えーと・・・・・・・・・・・・・・。」
目を泳がす僕。
「ん?」
僕が内容を言わない時間が長くなるほどに量を増すハテナマークが頭に飛び交う少女。
「そ、そのー・・・・・・・・。」
「??」
でも、待っててくれてる。
「な、何で僕の名前知ってたの!!?」
(が、頑張ったーーーーーー!!)
凄い達成感。これだけでミッションを終了した気分になるくらいの達成感だ。僕が達成感を感じていると、少女は目をまん丸にして
「あぁ!そっかぁ!」
と今更納得したような感じである。いや、普通疑問に思うよね!?会ったこともない人が名前を知ってたら気になるよね!?
少女は席を立ち、僕の手を掴んだ。いや、握った。
「!!?」
親とさえ、手を握ったことがなかった僕には、その手の温もりがむず痒かった。
「行こう!」
(何処に!?)
少女はそのまま僕の手を引き歩き出した。僕は黙って付いていく。
廊下に出ると少女はずっときょろきょろしたまま歩き続けた。きょろきょろと頭を左右に振るたびに、少女の肩まで伸ばした髪の両サイドの横の髪を2つに結んだ2房がピョコピョコと揺れ、可愛らしい少女にはとても良く似合っていた。
昇降口まで来た。少女は僕から手を離した。何故か僕が寂しさを感じていると、少女は自分の下駄箱から外履きを取り出して上履きから外履きに履き替えた。そして僕をじっと見る。多分、僕も履き替えろ、と言うことなんだろう。僕が履き替え終わると、再び僕の手を握りニコリと僕に笑顔を向けた。そして、廊下でしていたように僕の手を引ききょろきょろしながら少女は外を歩き出した。さっきまで、むず痒いと思って温もりが今度は心地よく感じた。同時に手を離したときに感じた寂しさが埋まった。僕はこのことで、少女が手を反したことにより寂しさを感じたんだと初めて知った。手を繋ぐと心がぽかぽかする。その温もりがなくなると寂しくなる。僕は今日初めて知った。多分、こんなこと同世代の子はもっと早く、生まれてから直ぐに知っていたのだろう。
(あぁ、離したくないなぁ。)
ずっとこの心地よい暖かさを感じていたい。
「だから、人は手を繋ぐんだろうなぁ。」
「如何したの?瞬君。」
少女の発現で思っていたことを聞かれていたのを知り、恥ずかしくなった。その瞬間、顔に熱が集まった。僕はいつのまにか口に出していたようだ。
「あ・・・・・・・・、えぇっと・・・・・・・・・・・・。」
僕的にはスルーして欲しかった。でも少女にはその気が全く無いようで、わざわざ足を止め僕をじっと見つめた。そのことでさらに恥ずかしくなり、顔に集まった熱の温度がさらに高くなった。
「僕、手、繋いだことなくて・・・・・・・・・・。」
「あぁ、そっかぁ。〝愛の無い家庭〟で育ったからだね。」
「何?それ?」
小学1年生には難しい言葉だと言うことしか理解できなかった。
「う~ん~っと・・・・・・・・・・。お父さんとお母さんが仲良くない家族のこと、かな?あと、親が子供を大切にしてない家族って言うのも含まれるかも。」
「・・・・・・・・・・。」
僕の家、〝あいのないかてい〟にどんぴしゃではないか。
「・・・・・・あ。やっぱり、現実でもそうなの?」
「・・・・・・・・・・?」
(現実?)
「あ!ご、ゴメンね!今の気にしないで!」
と言って少女は歩き出した。
少女は、
「あ!」
と言って駆け出した。その先には1本の桜の木。その周りには全く人影が無い。少女はその桜の木の根元に座り僕に笑顔を向けてきた。そして、空いてる方の手で、とんとんと自分の傍の地面を叩いた。隣に座れ、と言うことだと解釈した僕は少女の隣に座った。
「えーっと、何で瞬君のお名前を知ってたか、だよね?」
少女が話し出した。これで合っていたようだ。
「うん。」
「それはねぇ・・・・・・・・・・、瞬君が乙女ゲームの攻略対象キャラだから、だよ!」
「へ!?」
〝おとめげーむ〟?〝こうりゃくたいしょうきゃら〟?何それ??
「私、前世の記憶があるのー。」
〝ぜんせ〟?
「前世でね、瞬君が攻略対象キャラとして出てくる乙女ゲームをやってたのー。だから知ってるんだぁ。」
「????・・・・・・∞・・・・・・・???????」
駄目だ。全く分からない。分かる気すらしない。それくらい分からない。
「分かった?」
「わ、分かりません。」
「えぇーー!」
いや、これで分かる人はいないと思うよ。小学1年生の知識では理解しきれないよ!
「う~ん・・・・・・・・・・。何処が分からない?」
「〝ぜんせ〟、〝おとめげーむ〟、〝こうりゃくたいしょうきゃら〟の意味を教えて・・・・・・。」
「あ、用語が分からなかった?」
「うん。」
「そっかぁ。なら分からないよねー。」
少女はアハハと笑った。
「〝ぜんせ〟は、今ここに私達は生きてるよね?瞬君だと水原瞬として。」
「うん。」
「その中身・・・・・・・・・、人としての骨組みとしてあるのが魂。その人の本質って感じかな?」
「ん・・・・・・・?」
何か話が難しくなってきた。
「難しい?」
「うん。」
「まぁ、生きてればそのうち分かるよ。それが生きるってことの1つだと思うし。それに、この話って哲学っぽいから小学1年生には難しいのは当たり前だよ。」
「でも、君だって小学1年生だよね?」
「うん。身体はね。でも精神状態は約23才くらいかな。」
「精神?」
「心+記憶のこと。
魂っていうのはね、死んだら新しく生まれる命に宿って繰り返し使われるの。で、その魂の自分の前の使用者が〝前世〟なんだよ。魂が無い人間はいなくって、その魂は繰り返し使われてるの。何でだ科は私にも分からないけど。神様の世界にも温暖化ってあるのかな?わざわざリサイクルしてるし・・・・・・・・、でも、魂が温暖化の原因物質だとは思えないしー・・・・・・・・。」
「あ、あのー・・・・・・・・。」
「あ、ゴメンね。ちょっと自分の世界に入っちゃった。
で、魂って言うのは受け継がれていって、その魂には前の魂の使用者の記憶が刻まれてるの。この記憶がその人の本能の原因。直せない癖みたいなものってあるでしょ?そのれの原因ってこと。でも、本来その魂の記憶って、本能として出ることはあってもその人本人の記憶としては表に出ないの。瞬君には無いでしょ?自分ではない誰かの体験が自分ではない誰かの目線で頭の中にあること。」
「うん。」
「あったら不快だと思わない?」
「・・・・・・・・うん?」
想像しにくい。だからちょっと疑問系で答えた。
「でも、私にはあるの。前の魂の持ち主の記憶が。前世の記憶が。佐野真弓の記憶があるの。」
「えーっと・・・・・・・・、その〝さのまゆみ〟が君の前世?」
「うん、そう!だって私は、月影真夜でしょ?」
「??」
いや、そんな当然のことのように言われても・・・・・・・・・・。
「ん?如何したの?」
「だって、名前、初めて知ったから・・・・・・・・。」
そう、一方的に知られてるだけだった。
「あー、そうだったの?」
さっきまであんなに難しい話しをしてたのに意外とボケてるなぁ。ギャップと言うやつだろうか。
「うん・・・・・・・。」
「真夜だよー。真夜ー。」
「・・・・・・・・。」
何?この期待に満ちた目は。
「真夜!真夜だって!」
もしかして・・・・・・・・、呼べってこと?今ここで。
「ま、真夜・・・・・・・・?」
試しに呼んでみる。
「うん!」
正解だったようだ。
「ま、真夜、ちゃん・・・・・・・?」
「うん!!瞬君!」
黒髪の少女――――真夜ちゃんがニコニコ笑う。
「真夜ちゃん。」
僕が名前を呼ぶたびにとても楽しそうに笑う。
「瞬君。」
つられて僕も笑顔になった。
次話の更新は打ち込みが終わり次第です。早く更新できるように頑張ります!
Web拍手が目次・各話の下についてます。お礼小話は『裏・学園ラブ~』と同じもの、本編とは異なるものとなっております。