The place where I used to be
──214310121935
死臭と硝煙の臭いの中に男がいる。一際目立つ赤いコートを着た男だ。
彼が腰掛ける大破した機械の下の地面は、大量の死体で見えなくなっていた。
遠くには崩れ落ちたビル、黒煙、大小様々な残骸。生きている人間がいないことは明らかだ。
退屈そうにクルクルと白い拳銃を回して腰のホルスターに仕舞い、顔に付いた小さな肉片を落とす。
殆どの者は彼が殺した。敵も味方も関係ない。彼にとってはこの場にいた人間全員が殺すべき対象だからだ。
逃げた人間は一応見逃してやった。目的は皆殺しだけではない。この場所から人を消せばいいのだ。勿論彼が勝手に行った訳では無い。彼に命令し、一方的に使役出来る者達がそうさせたのだ。
右手に違和感を感じたその男は、すぐに迎えが来たことを悟る。チリチリとした痛みが指先から腕を伝って広がる。
痛みを感じたところが緑色にぼんやりと光り、「0」と「1」の塊と化して虚空へ散って行く。
彼にとっては慣れたことだ。飽くまで彼の体感だが、何百年、何千年、何万年と繰り返して来たことだ。
次は楽な仕事がいい。眼を閉じ、その顔も0と1に変わって散っていき、やがてその姿も消えた。
後には死体と、それを喰らおうと空を旋回する猛禽類だけが残された。