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異邦の竜騎士  作者:
第一章 エルフの森
8/32

悪かったね

 しばらく待っていると足音が聞こえてきた。


「失礼するよ」


 そう言って、誰かが部屋に入ってきた。


 ―――うおっ何だこのイケメン!?

 …いや、エルフだからイケメンは当たり前?


 そのエルフは今まで見てきたエルフの中でも飛び抜けたようなイケメンだった。キャラクリでもここまでのイケメンは作りだせなかったような気がする……

 それに、何故か彼の背後から後光が差しているように見える。これがイケメン補正か。


「さて、クリス様に、かのゴブリン討伐を依頼されたというが、少し君の話を聞かせて貰ってもいいかい?」


 俺の対面の椅子に座ったイケメンはそんな話を切りだす。


「まず君の名前は?……ああ失礼、先に此方から名乗るのが人族での礼儀だったね。私はマリウスという。エルヴィンのマリウスだ。これから宜しく頼むよ」


 爽やかスマイルと共に心なしか歯を輝かせて言ってくる。

 やばいこれは幻覚か!?眩しすぎる!!


「どうも……俺の名前はユウです」


「そうか!それでは今後とも頼むよユウ!」


 くっ…!イケメンだから許される初対面での呼び捨て!!

 でも言い返せない!イケメンだから!!


 ではなくて、エルフというものは長命種だ。見た目が若くても俺より二周り上という事でも納得できる。

 まぁ、NPCだからそこまで考える必要はないのかもしれないが、何と言うか癖だ。仕方ない。


「さて、それではまず初めに、君がクリス様とお会いした経緯を教えてくれるかい?」

「経緯も何もないんですが…気が付いたら、あの空き地に転がっていたんです。俺もよく分からなくて…」

「ふむ…経緯は不明と…もしかしたら、転移魔法か何かで飛ばされてきたのかもしれないね」


 ―――転移魔法?あの時目の前が暗くなって気分が悪くなったがアレがそうだったのか?


「どうやら心当たりがあるようだね?良かったら話してくれないかい?」

「えーと……実は………」


 俺は竜騎士であり、戦闘後に件の転移魔法に巻き込まれたのかもしれないと告げた。


「君は竜騎士だったのかい!?凄いね!!」


 マリウスさんは感激した!と言わんばかりの弾んだ声で言った。

 でも、俺の気のせいか?目は笑っていないように見える。


「でも、君の(ドラゴン)はどうしたんだい?」

「それが……呼びかけても俺の元には来ないんです」


 ―――本当はコンソールが開けないせいで呼べないだけだが、NPCにそんな話する必要無いしな。


「ふむ、そうか…ということは、その竜が来れないような遠い所からここまで飛ばされてしまった……という事なのかもしれないね」


 ―――まぁ、そういう事にしておこう。


「それでは、君に対してクリス様がゴブリン討伐の依頼を出したという事だけど、その経緯も教えてくれないかな?」


 ―――無礼な事云々は飛ばして話せばいいだろう。あのワイバーンに対して"様"付けだし、下手に口に出したらヤバイ気がする。


「空き地で目を覚ましたら、そのクリス様が目の前に居て、ゴブリンとの戦闘で前脚に傷を負った事、負傷した自分では倒しに行けないって事で俺にゴブリン討伐を依頼してきたんです」

「その時にクリス様にもユウ自身が竜騎士である事を明かしたのかな?」

「ええ。それで俺になら倒せると思ったんじゃないでしょうか?俺が了承したら、高い木を目指して進めって教えてもらったんです。そこにゴブリンが居るからって」

「…なるほどね。クリス様がそう判断なさったという事か………ああ、でも、その高い木云々は間違いだよ。その高い木がある場所は此処だ。つまり私達の村になるね。……ゴブリンが居るのは全く別の場所さ」


 ―――何だと?つまり、あのトカゲは俺に嘘を教えたという事か?


「多分、クリス様は君に私達と一緒にゴブリンを倒すように計らったんじゃないかな?だから、高い木を目指せって仰ったんだろうね。道中に私達の巡回に見つかる様に」


 ―――そうすると、やっぱりNPC参加型の討伐クエストか…


「さてと!どうやら君がクリス様から遣わされた事がはっきりしたようだし、私達の仲間に紹介しよう。共に敵と戦う仲間なんだしね!」


 そう言って、マリウスさんは立ちあがった。

 ―――何だろうね。やっぱりこの人の背後から華が咲き乱れているような、そんな幻覚が見えるよ。


「勿論連れて行く前にちゃんと縄も解くよ。悪かったね、拘束して」


 マリウスさんは苦笑しながら謝罪する。

 イケメンは謝り方も様になってて得だなオイ。

 やっと解放されるのか……随分長かったように感じるな。


 そうして、手の縄が解かれた。


「それじゃあ、案内するよ。私の後に付いてきてくれ」


 そう言ってマリウスさんは部屋から出て行った。俺もその後を追う。


 少し他の場所も見て回りたいが、置いて行かれるのは嫌だし…後でも時間はあるか。


 薄暗い廊下を歩き、他に比べて大きな扉の前に立ったマリウスさんは何事かを唱えながら扉を開けた。


 開け放たれた扉の隙間から日の光が漏れ―――――――出ない。


 どうやら、尋問(?)されている間に夕方になったようだ。


「少し暗いが……こっちだ。はぐれないように」


 そう言って、外へ歩みを進めた。

※ただしイケメンに限る

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