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異邦の竜騎士  作者:
第一章 エルフの森
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余程恨みがあるんだな

 俺は耳を疑った。

 …日本語?何で飛竜(ワイバーン)が日本語を喋れるんだ?


『どうやってこの場に来たのかは、私には分かりませんが…これも竜神様の導きというものでしょう。人の子よ、貴方に折り入って頼みがあるのです』


 …いや、これは頭の中に直接響いているのか?

 ということは、頭の中で考えれば相手に伝わるのか?

 …ん?もしかして、今まで考えてきた事全部筒抜け?


 ギョッとして相手を見ると、竜は僅かに目つきを和らげた気がした。


 ―――ヤバイ。例え相手が飛竜だとしても、かなり失礼な事を考えていた事がバレている…


 そんな俺の考えを知ってか知らずか重ねて竜は言う。


『どうやら、貴方は自分の力に余程の自信がある様子。故に私の頼みを聞いてくれないでしょうか?』

「ええと、頼みってのはどういうものなんです?」

『実は、この森には凶悪な魔物が棲みついているのです。その者が棲みついている場所は、私の縄張り圏内ですから、以前出て行かせようと戦ったのですが、返り討ちにされてしまいました。今では、満足に飛ぶ事も出来なくなってしまったのです…』


 そう言って自分の前脚と翼を見せる。

 片方の翼は無残にも引き裂かれ、元通りに回復するのにはかなりの時間がかかると思われた。

 確かに、これでは飛ぶ事も出来ないだろう。


『故に貴方には、この魔物を打ち倒して頂きたいのです』


「……それで、それを俺が引き受ける事によって、俺にどんなメリットがあるんです?」


 ―――凶悪な魔物だって!?冗談じゃない。俺の赤竜が居ないのにそんな真似出来るか!!


『そうですね。貴方のメリット……という訳ではないですが』


 そう前置きすると、竜はこう言葉を続けた。


『今までの私に対する無礼を“無かった事”にする…というのはどうでしょう?』


 そう言うと同時に強い殺気が俺に叩きつけられる。


 ―――うわぁ…根に持ってやがる。


『貴方が考えていたように、私ならば今の貴方程度の人間なら容易く殺せるのですよ?』


 そう言いながら睨みつけてくる。かなり怖い。


 ―――というか、目の前のコイツでも勝てなかった相手に対して俺を送りだすって事は俺に対して死んでこいって言ってるようなものだって事分かってるのかこのトカゲは!!


 考えている事が相手に伝わるという事が分かっていても悪態をつきたくなる。

 ここは、大人しく引き受けた方が得策か?

 何かのクエストかもしれないし、何よりこれでデスペナ回避できる。


「分かりました。引き受けましょう。それで、その魔物っていうのはどういった奴なんでしょう?」


『……何やら貴方の考えている事がよく理解できませんが……引き受けてくれる事に感謝します』


 礼を言った後、竜はこう続けた。


『そうですね…かの魔物の個体名は分かりませんが……ゴブリンです』


「………………………………………は?」


 ――――ゴブリン?あの小鬼(ゴブリン)?初心者の登竜門と言われているアレの事?

 アレに勝てないとかどんだけ雑魚なんだ。白銀の竜(コイツ)は。

 また、考えを読んだのか、飛竜からムッとした雰囲気が流れる。


『確かに、普通のゴブリンならば私が遅れをとる事はありえません』


 ――――ん?ということは、普通のゴブリンじゃない?って事か?

 となると、小鬼の指揮者(ゴブリンリーダー)小鬼の王(ゴブリンロード)って事か?


『私が確認した限りでは周囲に他のゴブリンは居ませんでしたので、ゴブリンロード……というのが正しいのかもしれませんね』


 ―――ゴブリンロードにしても、取り巻きを連れてないってのは気になるな…

 取り巻きを連れないタイプのモンスターって事なのか?

 まぁ、何にせよ俺の敵じゃない。小鬼の“王”(ゴブリンロード)といっても唯の中ボスなんだし、竜がいなくても倒せるような雑魚に変わりはない。


「分かりました。引き受けましょう」


『ありがとうございます。貴方にとっては軽い相手なのでしょうが、二度とこの森で悪さをしないよう、私の縄張りを侵す愚挙を犯さないように念入りに殺していって下さい』


 ―――余程恨みがあるんだな…


「ええと、それでそのゴブリンは何処らへんに居るのでしょう?」

『そうですね……この場からあちらの高い木の方向に行った辺りでしょうか』


 そう言って、前脚で方角を指し示した。

 確かに、他の木々よりも背の高いものがあるのが分かる。つまり、その方向に進めばいずれはゴブリンロードに遭遇するという事だろう。


『道なき道を進むのは少しばかり骨でしょう。そちらの木の陰に分かりにくいですが、道があるのでそちらを通ってお行きなさい』


 ―――確かに道がある。獣道?のような感じで下草が踏みつけられ、周囲の枝が刈ってある。

 道があるという事は、ここには定期的に人が通るという事か?

 どの森かは知らんが、こんな場所あったんだな。


「―――分かりました」


『ええ、それでは、お気を付けて…』


 そう言葉を紡ぐ竜を背に、俺は高い木の方角を目指し道を歩き始めた。

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