マイナスイオンたっぷり
見上げれば青い空。
白い雲。
周囲には瑞々しい森林。
足元を見れば青々しい草地。
咲き溢れる野花。
マイナスイオンたっぷりな草木の香り溢れる空間。
どうやら森林の中の空き地に立っているようだ。
―――何故ここに居るのかは分からないが…
余裕があったらこの場所でゴロゴロと寝そべってみたい。
普段はそういう事をする暇も場所も無い。
普段の自分であれば、そのような事も思いつかないだろう。
そう、普段の自分なら。
それはそれとして、ここはとても良い土地だという事が分かる。
現代ではこういう自然も無くなりつある。
ただ立っているだけで、森の匂いが香る。
それだけでこの場所が自分にとって慣れ親しんだ場所ではない事が分かる。
自分が住んでいる場所は所謂コンクリートジャングルであり、周辺にこんな森が在った事なんてもう遠い昔の話だ。
幼い頃に山中を散策した事があるが、この場所はそれに似ている。
しかし、その山も自身の住居から遠い場所にある。
ほんの数分で行ける場所ではない事は確かだ。
―――では、何故居るか?
不明である。
もう訳が分からない。
そもそもここは何処で、どういった方法で来たのか不明だ。全く意味が分からない。
茫然としていた事は確かだ。
しかし、ここは何処かを探るためにもそろそろ周辺を探索しに行かなければならないだろう。
まず重要なのは情報だ。
可能であればそうしたい。
周囲を探索したい。
そもそも全く見覚えのない景色だ。
ここで冒険しないのであれば、男が廃るというものだろう。
しかし、それは出来ない。
―――何故か?
目の前に竜が居るからだ…