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かつての勇者たちに再結成依頼が届くが、断らせてくれ。

作者: 有梨束
掲載日:2026/04/29

「はあ!?40年ぶりに勇者パーティーを再結成してほしい?」

「はい、どうかお力を貸していただけないでしょうか…!」

王家の使者が訪ねてきたかと思うと、とんでもないことを言い出した。


「いや、60を過ぎた老体に無茶言わんでくださいよ」

「ですが、あなた方が以前倒した魔王の子どもが地下の奥深く眠っていて、そやつが目を覚ましたのです…!」

「俺らは俺らで、ちゃんと魔王を倒したじゃないですか。次世代の勇者への神託は告げられていないのですか?」

「……告げられました」

「じゃあ、新しい勇者くんいるじゃないですか!その子たちに行かせてくださいよ…!」


以前勇者だったからといって、今更勇者の力が使えるわけがない。

だいたい新世代の勇者が現れているなら、何も問題ないじゃないか。

なんで、元勇者パーティーの俺らに行かせたがる?


「その、新しい勇者が、平民でして…」

「俺は男爵家の四男だったし、他の奴らはほとんど平民でしたよ?たいして変わらないじゃないですか」

現に今まさに俺は平民なわけだし。

元勇者の肩書きなんて使えないぐらいには、ただの60過ぎのジジイだ。

報奨金をこの40年ちまちま使って生きてきただけで、裕福ではない。


「選ばれたことで、その、大変ご立派な態度と言いますか。……不遜と言いますか、…貴族のみなさまの反感を買っていると言いますか」

なんとも言いにくそうに言葉を紡いでいく使者に、少しだけ同情しそうになった。


ああ…、選ばれたことで勘違いしちゃったか。


あくまでも、勇者は選ばれただけだ。

伝説の勇者の剣を唯一触れる人間になるだけで、本人がすごいとかではない。

身体強化は自分でやるしかないし、仲間との連携だって自分たち次第だ。


それだけで偉くなれたら、俺も俺の元仲間たちも今頃貴族位をもらうなり、特別待遇を受けていないとおかしい。


でも、そうなっていないのが現実だ。


贅沢しなければ一生暮らせる分の報奨金をもらえたが、それだけだ。

そこを冷静に見ないとキツいものがある。


この国で偉いのは間違いなく王家だし、その次は貴族なのだから、そこから不満が漏れているのは、まああまりよろしい状況ではないのだろう。


「お気の毒様です」

俺が一言そう言うと、使者は顔を歪めてしばらく黙ったまま佇んでいたのに、その目からボロボロ涙が零れ始めた。


あーあ、今の勇者、何しでかしているんだよ。


「…もう、本当にめちゃくちゃなんです」

「それはご苦労様です」

「元勇者様たちの名が上がるくらい、しっちゃかめっちゃかなんです…!」

「ええ、そうなんでしょうね。でも、もう身体的にお応えできません」

「…はい、わかっております」


わかってて来るしかなかったのか。

さすがの俺でも、今度こそ同情した。


「使者様、お急ぎですか?お茶でも飲んでゆっくりして行かれたら?また疲弊空間に戻られる前に、少し休んで行ってくださいよ」

部屋に招き入れようとすると、使者の嗚咽が止まらなくなった。


「元勇者様は、こんなに、人格者なのに…っ!あいつら、ときたら…!」


お茶をご馳走するだけで人格者とは、相当威張り倒しているんだろうか…。


使者は気を許したのか、愚痴という愚痴を吐けるだけ吐いて帰って行った。


俺も一応、元仲間たちに連絡を取ったけれど、全員断っていたようだった。

それもそうだ、かつて死にものぐるいで頑張ったから今の生活があるのだ。


若い頃のように、もう一度戦えは無理がある。


せめて指導役にどうかという通達もあとから来たが、それも丁重にお断りした。


勇者の剣は、指導なくとも握ってしまえば、『わかってしまう』ものだ。

それは王家だって知っているはずだし、本音を言うなら不遜勇者たちに関わりたくなかった。





使者が再結成してほしいと頼みに来てから、数年後。

新世代勇者パーティーが魔王を倒したという朗報が、街中に広がった。


俺は元仲間たちと久々に集まって、酒を酌み交わした。

「なんだ、結局はうまくいったじゃないか」とみんなで安堵しながら呑んだ酒は旨かった。


だが、半月もしないうちに、また同じ使者が現れた。




「……勇者様たちは、お亡くなりになりました」

「は?」

「帰還祝賀会が王宮で開かれ、たくさんの貴族の方々がお集まりになっていたのですが…」

そこで区切ると、重い口を再び開いた。


「酒に溺れた勇者御一行は、王女殿下ならびに他の数人の令嬢を辱めたことがわかり、今までの行いも含めて処刑されました」


絶句とはこのことを言うのかもしれない。


でも、なんでその報告が関係ない俺のところに…?


「このことを踏まえ、以前の勇者パーティーの皆様が大変立派に勤め上げただけでなく、報奨金のみだったのにもかかわらず文句もなかったことが、王からも貴族からも再評価されまして、此度の勇者たちに与えられるはずだった報奨金を、追加で前世代の勇者様たちにお渡しする運びとなりました」

使者の目が輝いていて、俺は顔を引き攣らせないようにするのが精一杯だった。


「お断りします」


そんな怖い金、貰ってたまるか。





「俺たちって、身の程を弁えていたんだな…」


次に集まった時の酒はなかなか進まなかったが、追加の報奨金をもらったやつが1人いて、そいつは自分の育った孤児院に全額寄付したと言うから、少しだけ盛り上がった。


いい仲間たちでパーティーを組めていたんだなと、俺はしみじみしたのだった。




お読みくださりありがとうございます!!  毎日投稿118日目。

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