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訳ありのハウスキーパー

 次の日

「はい。〇〇さんのお母さん。いえ、今日はいい事があったので。今日〇〇さん昼休み終わってすぐに掃除していて、皆の前で褒めたんです。なのでご家庭でも……はい。いえいえ。失礼します」

 ふう。

 保護者を味方にするためには、時間をかけなければならない。俺たち新人でも受かればいきなりクラスを任される。

 ほかのクラスがいいと思われてはいけない。この新人でも任せられると思わせないと。


 良いところはしっかりと褒める。そのために、俺は毎日メモをとっているんだ。


 まあ今日が金曜日でよかった。

 月曜日は国語で物語を扱う。パソコンでうつす用意しておかないと。クラスのタブレットがちゃんと充電できるか確認して。あとは、研修ようの指導案の仕上げをして、次からは細案をつくらないと。


「ただいま」

 また20時か。


 いつものようにパソコンをみながらコンビニご飯を食べる。指導案に誤字はないし、フォントも大丈夫。


 そういえば、今日の21時にハウスキーパーが来るらしい。数時間だけかと思っていたが、明日の21時まで。

 これでお試しというのだからにわかには信じがたい。


 教科書を見ながら21時まで待つことにした。


 ピンポン

「はーい」

 どんな人だろうか。この家に住んでもらうのだから相性というものはとても大事だ。


「こんばんは」

「こ……んばんは」

 ドアをあけると一言でいうイケメンといわれる人がいた。

 俺よりたくましい胸元、身長は高く190くらい。まつ毛はキリっとしていて、ボサっとしながらも艶やかな黒髪。


 この人がハウスキーパーなのか。彼女の部屋を間違えたのではなく?

「ハウスキーパーできました。」

「ど、どうぞ」

 俺はとりあえず中に入れたが、自分の家がゴミ屋敷だということに気づく。ベッドの半分と、机、キッチンまでの道だけを残しあとはゴミだらけだ。


「すみません。ゴミ屋敷なんです」

「大丈夫です。ハウスキーパーとしては暇にならないので」

 そういうと男をベッドに座らせた。

「俺の名前は智柄(ちがら) 星衣(せい)。あなたは古味ノさんですよね。」

「はい。」

 智柄はは周りを見ながら頷いた。


「契約通り、1日お試しですね。」

「はい」

 今のところ印象よしだし悪いところはない。


「ちなみに……契約内容はしっかり読みましたか?」

「え」

 やばい。なんかお試しだったからお願いしたんだが、内容あまり読んでいなかった。


「なら説明しましょう」

 俺の様子をみて察したように説明してくれた。


「俺が無料でしている理由はただ1つ。お金が手に入ったところで俺は生きていけないんです。俺は住む家と、定期的に血を供給してくれる相手を探しています」

「血!?」

 吸血鬼じゃないか。ここはファンタジーじゃないんだぞ。


「はい。内密にしてください。……大体の作り話には実話があるものです。このように」

「――!?」

 一瞬で八重歯が伸び、目が赤くなりつり目になる。


「……と、このように。私は吸血鬼の元にある血晶族(けっしょうぞく)の末裔です。そんなに驚かないでくださいよ。」

「なるほど」

 なるほどじゃないだろ俺。説明書はしっかりと読めと言われてきたが、まさか今その時がくるとは。

 つまり、吸血鬼みたいにガブっといかれるわけだ。ん、最悪出血死する!?


「まてまて! せっかくあの長ったらしい試験が終わって教師になれて任用期間中なんだよ! まだ死ねない! まだ学費を母さんに返してない! 親戚に合わす顔がない! せめて……任用期間が終わって教師になりたかったな。」

「誰が殺すなんていいました? 少し飲むだけです。止血はなれています。」

 そういうと智柄は俺をベッドに来るように手を招く。本当に大丈夫かなあ。動脈やったら終わりだぞ。


「お試しです。ある程度血の相性もあります。合わなかったらこの話全部忘れてください」

「分かりました。早くやるならやってください。」

 智柄は俺を座らし、肩を出させる。そして、牙を向けた。見るだけで痛い。


 ガブッ

「……! あれ」

 思ったより痛くない。感覚的には僅かに針をつついたようなものだ。その小さな所から出た血を吸うようにしている。


 なんか変なハウスキーパーさん呼んじゃったなあ。普通に頼めば良かったかも。でも、お金貯めたいしなあ。夏休みに遠出したい。


 智柄は吸うのをやめ固まっていた。

「あのーどうでした?」


「……」

 ガシッ

「え?」

「うますぎ。もっと飲みたい」

 男は俺の腕を握って押し付ける。大学生で筋トレしていたが力で負けるとは。


「……っ」

 男は俺の首筋を匂いを嗅ぐように鼻を近づける。そして、首をぺろぺろと舐めはじめた。

「ひゃう!」

 まてまて止めろ俺。このまま流されるわけには


 その時俺のベッドに積み上げていた本がガタッと動き、智柄へと倒れていく。

「あーー!」

 俺が声を出す前に、本の波に彼は埋もれていた。

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