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雨声と産声

お前と出会ったのはもう十年以上も前のことだ。ある日、俺とマサコは2人で出かけていた。まぁ、デートだ。その時は生憎の雨で2人で傘を差しながら歩いていた。その時、前から雨声とはまた違う、赤ん坊の泣き声のような声が聞こえてきた。目を凝らしてみると前方に段ボールの中で毛布にくるまり、窮屈そうにしている赤ん坊を見つけた。場所?場所は確か…今日お前を迎えに行った駅の商店街を抜け、団地などが立ち並ぶ所らへんだったような気がする。こんなところに捨てられて気味が悪いと思ったが、雨ということもあったので一時的に家で世話をすることにした。恐らくお前が赤ん坊の頃暮らしていたのはそこの団地だろう。なぜ?それはお前を見つけたとき毛布以外にも玩具などがあったんだ。それは近くの生活用品店で売られているものだったからだ。家に帰って早速、俺とマサコは世話を始めた。最初はおむつの替え方、風呂の入らせ方なども分からず暗中模索のような状態だった。大変ではあったものの、俺とマサコが疲れた時にふと、見せてくれるその笑顔が支えになった。そんなこんなでお前は幼稚園を卒園し、小学校を卒業した。俺らの目に映るお前はどんどん成長していった。俺とマサコは子供がいなかったということもあり、卒業式では脱水になるのではというくらい泣いたな。それでもうお前は高校も卒業して、今は立派な警察官だ。誇らしいよ。本当に。なんだか味の悪い始め方をしたが別に怒ってなんかない。ただ、どうしても怖いんだ。お前が本当の親のことを知ったら俺たちの元を離れるのではないかと。ただそれだけだ。子供じみた感情で気分を悪くしてしまってすまない。話は以上だ。


そう言って父は酒を豪快に飲んだ。なんだか話を聞いてると本当の母、父の顔が思い出せそうな気がした。なんとなく、俺の脳裏に出てくるその顔は蜃気楼のようにおぼろげであった。俺は晩ご飯を食べ終わると風呂を済ませ、寝室に行った。懐かしい香りがした。父は俺が離れるのが怖いと言っていたが、俺は離れることはない。だってここは俺の実家で父と母は俺の大切な家族なのだから。そんな思いを心に留めて、俺は眠りについた。

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