今日の肴は決意の味
一日で二話分投稿できました。明日は休んでもいいよね…
俺は駅に着き、電車に乗り込んで地元へと向かった。その時には外はオレンジ色の夕方だったので実家に泊まってから例の探偵事務所に行くことにした。電車の中には学校帰りらしき学生が多くいた。この子たちには本当の親がいるのか…と思い少し悲しい気持ちになった。しかし冷静になってみれば今まで育ててくれた現在の両親に対して感謝を持たず、ただの自分勝手なクソ野郎だ。そんな2つの気持ちが右往左往してなんだか気持ち悪くなっていった。そんなこんなで目的の駅に着くと父が迎えに来てくれてた。さすがに実家とはいえ、いきなり泊まりに行くのは大変なので事前に連絡をしておいた。車に乗るとエアコンの涼しい風が当たった。
「久しぶりだなぁ。いきなりこっちに来るって言うもんだからビックリしたよ。何か用事があるのか?」
「まぁ、ちょっと調べたいことがあってね…」
俺はここで打ち明ける勇気も無かったし、打ち明けるのであれば父と母が揃った団らんの時にしようと決めていた。
「お前の本当の両親のことか?」
ドキッとした。僕の胸を突き刺すかのような鋭い声に一瞬、驚いた。ルームミラー越しに見える父の鋭い目線が見えた。僕は言葉に詰まった。
「そうだな…お前にもまだ伝えきれてないことはたくさんある。今日、話そうか…」
なんだかさっきまでの明るい雰囲気を壊してしまったようで申し訳なかった。家に着くなり、母が晩ご飯を用意してくれていた。
「久しぶりねぇ。あんたの好きな唐揚げも用意してあるからね。たっぷり食べてね。」
「ありがとう。母さんもしっかり食べて体調に気をつけてね」
そう言うと俺と父は席についた。
「「「いただきます」」」
みんな黙々と食べ始めた。いつもならワイワイと話しながら食べるのだが一声も聞こえてこない。少し気まずい雰囲気が流れた。そんな沈黙を破ったのは父だった。
「マサコ、そろそろカズキに実親のことを話してやろうと思う。」
マサコとは俺の母の名前だ。ちなみに父はカズマサだ。
「あんた、いきなりどうしたんだい。」
母は心配そうに言った。
「カズキが知りたがってるんだ。俺らも話さなければいけない時が来る。それが今日なだけだ。」
母は黙り込んてしまった。
「まずはカズキを見つけたところからだ。少し長くなる、酒を用意してくれ。」
そう言うと父は母が持ってきたビールを開けてごくごくと飲んだ。
「今日の肴は苦くなりそうだ。」
そう言って父は話し始めた。