予期せぬ出会い
いざ、例の探偵事務所へ向かおうと駅に向かっていた途中にどこか見覚えのある顔を見つけた。あっちも自分に気付いたらしくこっちに向かってくる。
「よう!久しぶり!」
バチンと肩を叩かれた。その若々しい声で誰なのかを思い出した。高校時代に仲良くなって、現在も連絡を取っている親友のアキラだ。今も連絡を取り合っているので目にして驚くことはないが、親友との久しぶりの再会だったのでなんだか目頭が熱くなる感じがした。自分の涙脆さに老いを感じながらも挨拶をした。
「ひ、ひさひぶり」
「何だよwひさひぶりってw緊張してんのか?w」
緊張しているのかつい噛んでしまった。相変わらずアキラは喋っていてもwの文字が付いてくるのが分かるぐらいの陽気な雰囲気であった。
「相変わらず変わんないね」
「カズキの方こそな。今、警察官なんだろ?大変だろ?せっかく会えたんだしどっかで飯食わね?腹減ってさw」
本当に高校生の軽いノリは変わっていなかった。しかし俺にはそんな軽いノリが支えになっていた。家を出るときに現在の両親から実の親ではないと告げられたときは何とも言えない不安のような良くわからない気持ちに襲われた。そんな時、アキラと電話で話せて嬉しかった。いつもなら毎日のように体調や生活環境を聞いてくるのでうざったるく、お前は母親か!と注意した時もあったがその時は涙が出るほど嬉しかった。その日は全てをアキラに打ち明けて、まるで母親かのように寄り添ってくれた。そんなアキラとの思い出に浸っていると、
「良い焼肉屋知ってるんだ。安価でそこそこのが食べられるんだぜ。なかなか俺も地元の名店を知ってるからな。いつかは俺も親父の定食屋を継ぐんだ。」
そうだった。アキラの家は定食屋だった。今更思い出す自分を反省して俺は口を開いた。
「あのさ。せっかくだったらアキラの家の定食屋に行こうよ。」
「なんでぇ。」
少し不満げに聞いてきた。
「俺、これから実家の方に行くんだ。せっかくなら挨拶しておこうかなと…」
するとアキラはトマトみたいに目を丸くした。
「今から!?そっか!だからここにいるのか!時間とか大丈夫なのか?長話してすまん!じゃあな!」
そう言って帰ろうとするアキラの腕を掴んだ。
「時間は大丈夫だから!心配すんな!それよりアキラがつくるアジフライ定食食わせてくれよ!最近練習してるんだろ?」
アキラは昔から考えるよりも行動に移すタイプだったので必死に止めた。
「なんだ!大丈夫なのか!心配させんなよ!そんなに俺のアジフライ定食が食いてぇのならついてきな!」
(感情の切り替えの速度速すぎだろ…)
と内心思いながらも、虫取りをする少年かのように雄大でキラキラと輝くアキラの背中を見つつ歩いた。