時は急かされたり
しばらくの間沈黙が続いた。ディスクの再生機器から流れる機械音だけが部屋に響いていた。
「まさかこんな物があるなんてねぇ」
最初に口を開いたのはお爺さんだった。
「これは、大変かもな…」
シグレとキサラギは重い声で言った。
「まずは西宮団地事件の真相を追うところからかな?」
二人を励ますように言った。
「何か嫌な予感がするんだ」
「僕もかなぁ」
相変わらずだった。
「取り敢えず店を出ようぜ!ここにいてもお爺さんの邪魔だし!」
俺は歩きながら色んなことを考えた。誰が俺の母を殺し、誰があの事件を闇へと葬ったのか。考えれば考えるほど、千里の霧の中を手探りで歩くようにキリが無かった。二人は眉間にしわを寄せてまだ悩んでいるようだった。
「本部よりここの方が話しやすいだろ」
シグレはそう言って事務所のドアノブに手をかけた。
「そう言えば、俺たちが出発するとき誰かいたよな?」
「あぁ、あいつは俺の助手であり相棒のハマカゼだ」
シグレは何処か自慢したげだった。
「彼はこれでも偉い方なんだよ。数々の実績を残してるでね。そんな彼が西宮団地の件について嫌な予感、というのは何だか恐ろしいね」
キサラギはシグレと違ってまだ思い悩んでいるようだった。
「取り敢えずあの刑事に聞こう」
突然シグレが声を上げた。
「あの刑事って、西宮団地事件のかい?」
「あぁ、本人に聞くのが手っ取り早いだろ」
シグレの目は何かを見据えているようだった。その目は、何か、狩りをする鷲のような…
「何見てんだ。気持ち悪ぃな。もう行くぞ」
「は?もう!?」
部屋中に俺の声が響いた。
「ハハ、これは昔からこうなんだ。許してやってくれ」
「キサラギさん…」
俺は助けを求めるようにキサラギを見つめた。
「おい、何でキサラギには"さん"付けなんだよ」
「お前は別に付けなくていいだろ」
「は?親しき仲にも礼儀ありだろ?なぁ?カズキさぁん?」
シグレは相変わらず喧嘩腰だ。
「ん?親しい仲?もしかして?俺のこと…」
「うるせぇ!早く行くぞ!」
今回は俺の勝利だな。そんな俺の勝ち誇った顔を見てキサラギは笑っていた。
「いってらっしゃい。仕事はやっとくよ」
キサラギはそう言って見送ってくれた。
ついにこの時が来たのかな…ずっと不思議だった。いや、分かっていたんだ。”アレ”には何かがある。秘密探偵の誰にも知り得ない何かが。恐らく、この疑念を持てるのは古参の僕だけだろう。僕だけ…旧友たちは皆死んでいった。いや、恐らく殺られていった。次は僕だろう…そして今回の件、もう何となく分かった。全てはお前なんだろ…唖齒u5k00○。




