ある記者の調査記録 其の三
意味不明の文字が羅列されている個所はノイズが入った(設定)です。
早速私は本社に帰って仕事に手をつけた。さすがの私も刑事さんの言うことは少しは守ろうということで、この話については誰にも他言しなかった。だがらこそこれを世に出したとき、世論はどのように動くのかが楽しみだった。私の自制心とは対照的に記事をタイプする手は止まらない。そんなことをしているといつの間にか窓からは朝日が差し込んでいた。もう朝だ。私は気分転換にと席をたってカーテンを開け、いっぱいの日差しを浴びた。なんだか大仕事ができそうな気分だった。
翌日になると私の書いた記事はほとんどが完成していた。流石に私だけではこの記事を新聞に載せることはできないので、何とか編集長を誤魔化せないかと考えながら編集長のデスクへと向かった。すいません…この記事を載せたいのですが…
「西宮団地事件の真相?。ブームの過ぎた事件の記事なんて物好きしか見ねぇぞ?」
そこをなんとか。私は頼み込む。
「それに、明らかに信憑性も低いじゃないか。たった一人の刑事に聞いたからってそれが真実かどうかは限らないぞ」
正論だ。私たちの仕事は真実を発信することであり、決して数字目当てに虚偽の情報を発信してはならない。分かっている。でも引き下がれない。
「そんなにか?」
編集長は眉間にしわを寄せた。その目はまるで私を邪魔者扱いにするような目だった。
「だめだ。面白そうではあるが、こんなものはネットの掲示板に載せておいたほうがウケる。それと、なんだか危なかっしいからな。」
流石編集長。思わず声が漏れた。編集長は怪物をみる目をしていた。確かに、その目は真実を映しているかもしれない。私は「西宮団地事件」に取り憑かれた一人の人間なのだから。だがこの私がこんなところで終わるはずがない。
家に帰ると私はすぐさまあの刑事の話を録音したレコーダーを聞き返した。そしてそれらをネット掲示板に書き移していった。
「西宮団地事件なつ」
「どうせ釣り定期」
「謎の勢力コワスンギ」
ネット掲示板には私の投稿を読んだ人々のコメントが書かれていた。どれもこれも信用してないのが文面に出ていたが私は良かった。なんだか自分の大きな責務が終わったような、謎の安堵感が生まれていた。
「明日、お前の会社は無くなっている」
ふとそんなコメントが目に入った。何のことだ。私は謎の書き込みに噛みついた。
「明日になれば分かる」
犯罪を犯す気か?ただの脅しだろうがなんだか現実味を帯びていて不気味だった。
「明日になれば分かるよ」
何をする気だ。そう問いかけても何も返ってこない。その日は後味の悪い空気が漂いながらも私は眠りについた。
朝になり、私はさっさと支度を済ませ家を出た。昨日のことが頭にこびり付いて離れない。そのせいか、いつもより景色が流れていくのが速く見えた。しかしどれほど走っても会社にはつかない。どういうことだ。頭の中であの言葉がよぎった。まさかと思い、もう一度周辺を走り回る。見つけた。声が出た。だが、その会社は私の知っている姿ではなかった。普段なら二階建ての小さなコンクリ造りの白い建物が建っているはずだった。普段なら。会社は黒色に染まっていて、焦げ臭かった。火事だ。しかし普通の火事じゃない。なんだか様子が変だ。本当に燃えたとすれば何故鎮火している?夜間に鎮火されたのか?それにしては規制線などは張られていない。さらにここらの近隣住民も気にする素振りを見せない。私は衝動が抑えきれず、目に入った通行人に話しかけた。あの、ここらへんで火事とかってありましたよね?あまりにも慌てていたので、変な文言になってしまった。
「さぁ?記憶にないわ〜」
その人はおばあちゃんだったので、ひどい考えではあるが忘れっぽいのかなと思いながら他の人にも聞いた。
「知らないなぁ」
「こんなことあったかしら?」
「君は何を言ってるんだ」
どれもこれも目の前で起きた事とを否定するかのようだった。私は絶望して地面に膝をついてしまった。九月の下旬とはいえど、コンクリートには温もりが残っていた。その温もりは私に寄り添うようだった。
自宅に帰るとパソコンが点けっぱだった方に気が付いた。消そうと思い近づくとある文字が目に入った。
「言った通りだろう」
あいつだ。私は腹の底から敵愾心が湧いてきた。お前は一体何なんだ?何をした?聞きたいことをいっぱいに投げつけた。
「君は真相を知った。だから消すんだ」
その短文には幼気な雰囲気が感じ取れた。
「あの刑事も殺したよ」
あの人まで…そんなに知られたくないのか?
「もちろん。でなきゃこんな事しないよ」
西宮団地事件の真相、あれはお前らがやったことなのか?
「うん。厳密にいえば僕達が協力した、の方が正しいかな?」
お前たちは何かの組織か?
「そんなところ」
名前を言え!
「いいよ。君はもう長くはないし。僕たちは5n€家のセ008」
なんだ…それは。それなら私たちの味方をするべきだろう!
「僕たちは気分屋なんだよ。ただそれだけ」
待て!
それ以来、メッセージを発信しても返ってくることは無かった。夢中で気付かなかったがインターホンが鳴っている。死ぬと決まった訳では無い。しかし、野生の勘だろうか。それが死ぬと私を引き止める。けれど私の好奇心は抑えられない。逃げればいいのに。人間って不思議。もっと知りたかったなぁ。




