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009 なんでこいつはこんなに生意気なんだ?

ビビアンが欲しい........

アナイクスも欲しい。

時間って、永遠に足りないんだね........

★視点-ガフェル

 昔、タイラントベアにあったことがある。

 ランクとしてはBランク上位……今の俺と同じ格だが……

 それにあったのは、俺がまだBランクになりたてで、下位も下位だった頃だ。

 仲間を逃すために、俺が殿を務めたんだったか?

 今思えば間抜けなことをしたものだ。

 あんな奴らのために殿なんざ……

 でも、まぁ。

 あのギリギリの戦いがなかったら、俺はここまで強くはなれなかっただろうから、結果だけを見ればよかったのかもしれねぇが。

 今でも覚えている。

 あの「山の主」の赤く光る目が俺を捉えた時に感じた悪寒と恐怖。

「狩人」が、「獲物」に目をつけた、この世界ではどこでも起きているありふれた瞬間。

 でも「狩人」は俺ではなかった。

 それを意識した瞬間、俺の心には火がついた。

 狩られてなんざやるものか……

 何がなんでも生き残ってやる。

 狩人ぶったことを後悔させてやる。

 狩人は、俺一人でいい。


 そこから先のことはあまり覚えていなかった。

 ただ、気が付いた時には、そこには俺しかいなかった。

 クマの死体もなかったから、状況を見て、狂ったように暴れる俺が獲物として割に合わなくて撤退したようだった。

 懐かしいものだ。

 あの頃が、心が若かった。

 自分にはどこまでも広がる可能性があると信じていた。

 だから狂ったように力が欲しかった。

 だから狂ったように暴れることができた。

 自分なら勝てると信じて疑わなかったから、命を賭けの天秤に乗せることができた。

 今の俺にはとっくにそんな心意気はない。

 Aランクに最も近いBランク、などと言われても、ちっとも嬉しくなんかなかった。

 なぜなら、俺の才能は、もう底をついている。それがなんとなくわかっちまったから。

 ほとんどのやつは一生かかってもその壁を目にすることはできない中、俺はできた。壁を目にすることも、壁に触れることも。

 でもその壁を打ち抜く勢いは、もう俺にはなかった。


 とっくに忘れていた、昔の気持ちを思い出した。

 血走った目で俺を睨みつけ、イカれた笑みを顔に浮かべ、生意気にもこの俺の胸ぐらを掴みにかかる――この女を見て。

 あの時の俺も、こんな目をしていたんじゃねぇか?


 状況はまだよく飲み込めてない。

 この女は殺されたら復活して強くなる、それはわかっている。

 が、あまりにも荒唐無稽な話でいまだに実感が湧いてこない。

 だが、一つだけはっきりしていることがある。

 この女は、俺に「力」を求めている。

 俺があの時、あのタイラントベアに、「力」を求めたように。

 

「お前を指の先から少しずつ切り刻んで、肉を削ぎ落としてやる……」

「お前のハラワタを引き摺り出して、口から突っ込んで、ケツの穴から引っ張り出してやる……」

「俺がそれまでに味わった全ての地獄を、のしをつけて返してやる。」

 少女の口は悪辣な呪いを吐く。

 綺麗な顔だ。

 狂気と殺意に満ちた顔だというのにどこまでも凛としていて様になる。

 一糸纏わぬその美しい体が日の光を浴びてギラギラと輝いている。

 ぞくりとした感情が湧き上がるにを感じる。

 男としての、最もドス黒くも醜い欲望。

 支配欲。

 どうしようもなくこの女が欲しくなった。

 この美しく、狂おしく、獰猛な女を、石化して、永遠に俺のものにできたら、どれだけ……

 確かに一度のミスで命取りだ。

 一度でも彼女を死なせ、もしくは自由にさせてしまったら、彼女は間違いなく復讐のため俺を殺しにかかるだろう。

 だがそれがどうした?

 元々いつ死んでもいいと思っていたつまらない人生だ。

 彼女を手に入れたい。

 彼女を自分のものにできれば死んだっていい。

 そう思えるほど、目の前のこの女が魅力的に見えた。

 まぁ……本当は、もう一つ理由があるけどな。

 それは、彼女のその、「俺に限界はない!」と言わんばかりの面を見て、心の底から湧き上がる嫉妬だ。

 もう戻ってこないかつての自分を思い出させるから。

 彼女のその力……なんの制約があるかは知らないが、とんでもない代物だ。

 さっきの彼女の身のこなしを見ても分かる通り、彼女の力は、「自分を殺した人間の力を身につける」。

 しかも、「使いこなす」。

 俺が彼女を殺してしまえば、彼女は俺の力を手に入れ、Bランクの頂点に達してしまう。

 そこにダブラとメギの力も加わる。

 たかがCランク二人の力ではその壁は突破できないかもしれないが、いずれ俺よりも強い、壁の向こうにいる本物の「化け物」に鉢合わせして殺されれば、彼女はそのままそっち側に行けてしまう。

 許せるものか……

 俺にはもう一生越えられないかもしれない敷居を、俺の目の前で、誰かが軽々しく跨ぐことなど……


「だから……ここは取引をした方がいいと思わないか?」

 いつのまにか、目の前の女の顔から狂気が引いた。

 いや、引いたんじゃない、鳴りを潜めたとでもいうべきか……

「痛くないように、ひと思いに殺してくれたら、借り一つとしてやろう。次に会ったときは見逃してやる。場合によっては助けてやる。普通に考えれば悪くない取引だと思うぞ。」

 まるでダチを飲みにでも誘うようなケロッとした顔だ。

「俺の力の正体見抜いてるなら、この借りの価値もわかるはずだ。こう見えて俺は約束を守るタイプのおと……コホン、約束を守るタイプの人間だぜ。」


「まぁ、そうだな。」

 俺は手に持ってるサーベルをぶらぶらさせながら握り具合を確かめる。

「確かにそれが一番いいかもな……」

 さて、どこから手をつけたものか……

 殺すのはまずい、かと言って殺さないように手加減するにしても勝手がわからん。

「でも……残念なことに、俺はもうお前を石化して俺のものにするって決めたんだ。ついさっきな。」

 思わず口元を吊り上げながら、手に持ってる武器をぐるりと回す。

 まぁこういうのはボチボチ試すしかねぇんだ。

 狙うのは手と足……とにかく動けなくすることが先決だな。

 下手に暴れられても困る。魔道具も手元にあるし、動けなくしたら即石化だな……

 とりあえずは全身石化して、基地に持ち帰ったら、頭と下半身だけ石化解除して遊んでみるか?

 いいね……考えただけで興奮してくるぜ……

 こんなにもそそる女は久方ぶりだ……


「……あっそ……」

 俺の胸ぐらを掴んでいた手がそっと離された。

「なら……殺されても文句ないよね?」

 彼女の声のトーンがさらに落ち着いたものになった。

 全く緊張の欠片もなく、眠たそうにすら聞こえるその声は、ありとあらゆる感情が抜け落ちているようにも思えた。

 

 白い少女の体は、一瞬だけ、まるで糸が切れた木偶の坊(マリオネット)みたいに力を失い、ぐったりと沈み込んだ。

 腰が低くなり、前屈みのような状態で、片方に短剣を持った両手が、体の前を力なくぶらついている。

 その姿勢はどう見てもぐにゃぐにゃとしか表現できない。

 (こうべ)も垂れ、項垂れるように少し俯いている。

 でも、上目遣いで、その白銀の瞳が、しっかりと、俺を捉えていた。

 この姿勢には、見覚えがある。

 メギが戦う前によくしていた準備動作だ。

 ただ力を抜いてるんじゃない。

 準備をしてるんだ。

 どの方向に対しても一瞬で最大の力が出せるように、全身の筋肉がその準備をしてる。

 一見力が抜けてるように見えるが、その実、ゆるやかに張り詰めているというわけだ。

 不意打をするにしても、ずらかるにしても最適な姿勢だそうだ。

 まぁ、真正面での勝負に慣れた俺みたいな剣士には真似できない芸当らしいが。


 でも、この姿勢にはもう一つ意味が込められている。

 相手をはるか格下と定め、舐め腐っているという意味が。

 何せ盗賊だろうと暗殺者だろうと、正面切って戦うことなんざ滅多にしないからな。

 こういう手合いは基本的には不意打ち最上、不意を突いて自分よりも格上の相手を倒すことに誇りを感じるものだ。

 つまり相手の目の前に立って「戦う準備動作」なんて見せてる時点で、盗賊としても暗殺者としても負けたも当然なわけだ。

 それをあえてする状況なんて、相手が自分より遥かに弱く、不意をつくまでもないか、相手が自分より遥かに強く、逃げきれず、不意を突いても勝てない絶体絶命の状態にあるかのどっちかだ。


 今俺の目の前に立ってる子の白い少女は、まさにその「戦う準備動作」をしている。

 そして驚くことに、その動作に込められた意味合いは、後者というよりは、むしろ前者のように思えてしまう。


 はは……舐められたものだ。

 なんでこいつはこんなに生意気なんだ?

 ちゃんと状況わかってるか?

 あの石化魔道具を持ってた貴族……

 ぶっ殺したら屋敷のものを好きなだけ持ち帰っていいって依頼だったからその後貴族の屋敷に行ってみたんだが……

 地下の倉庫に石化された女がたくさんいたな……

 石化を解い見りゃ、正気を保てる奴なんてほんの一握りだった。

 まぁ、その一握りも、加減ってもんを知らん手下どものせいで結局はぶっ壊れたが……

 俺たちみたいな()に捕まるってことは、()()()()()()なんだ。

 

 いや、わかってるからこそか……

 全てわかってる上でのその目か……

 ムカつくな……

 なのに、俺の口元は自然と釣り上がっていた。

「いいぜ、そのスカしたツラ、この俺が、絶望で塗りつぶしてやる!」


★視点-女神様

「……ああ……」

 ボクは、半ば自分に呆れるような、腑抜けた声を出していた。

 これは予想外だ。

 本来ボクのシナリオでは、ガフェルはここで状況の不利を悟り、彼女()のその力の得体知れなさに警戒して逃げ出すはずだった。

 でも......

 どうやら、ボクは彼女()の体を作る時に、女としての魅力を盛り過ぎてしまったらしい。

 彼女のその魔性に当てられ、ガフェルはその性欲と支配欲を引き金に、嫉妬やら自己嫌悪やらと、とにかくたくさんの負の感情を爆発させて理性を失っている。

 そして本来ギリギリ大丈夫だった彼の魂は猛烈なスピードで黒く染まっていく。

 このままでは彼の魂が浄化を要する生ごみになってしまうだけでなく、彼女が殺されてしまう。

 彼女は……殺されることについてはなんとも思わないでしょうが……

 ボクは、まだ……

 このレベルの強者に殺されるのはもう少し先でもいいかなって思うんだ。

 せめて中盤あたりにして欲しいかな。

 だって……

 こんな序盤からチートでやり過ぎちゃうと……ゲームがつまらなくなるでしょ?

 

 


主人公のステータス

★スキル

 -アイテムボックスプラス

 -ただ死ぬだけのチート

 -女神の加護?(趣味)

 -魔力による身体強化(二流)

 -剣の扱い(二流)

 -戦技(三流)

 -気配遮断(二流)

 -影移動(二流)

 -短剣の扱い(三流)


★殺されて手に入れた力

 -優秀な人間成人男性剣士*1

 -優秀な人間成人男性盗賊*1


★殺害以外の死で手に入れた力

 なし


★持ち物

 -普通の短剣

 -あまり中身がない財布

 -金メッキのペンダント

 -鈍器みたいなボロい両手斧


★服装

 -なし


等級の目安

下等->普通->優秀->絶世->英雄->埒外

E D /C B /A S

新手/中坚/强者

三下->三流->二流->一流->超一流->マスター

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