003 おい待てよこら
次章から主人公に視点が戻るよ!
★視点-盗賊に襲われてるとある貴婦人
白い少女の方を見る。
こんなにも綺麗な、まだ幼い女の子が、ここで散らされようとしている。
でも、私にはどうすることもできない。
自分の無力さを痛感するのは、これは初めてというわけではない。
でも、やっぱり……慣れないものですね。
何もできないなんて……
私はただぼんやりと、向こう、あの白い女の子が押し倒されて、上に馬乗りされるところを、じっと見つめていた。
女の子の上に乗っている、いやらしい笑顔で無理やり女の子の股をこじ開けようとしているこの男、周りの盗賊の話を聞く限り、ダブラというそうだ。
周りの態度から見て幹部クラスだと思われる。
今こそ笑われているが、それは他の幹部クラスが先に笑い出し、それに続いて取り巻きも笑い出すという感じだった。
というか、すごい子だね……
特に戦闘も起きずに簡単に盗賊どもに制圧されてこの状態になったということは、あの子が私と同じ戦う力がない非戦闘員……
でも……
こんな時に、相手の顔に唾を吐き掛け、続け様に殴りつけるなんて……そんな度胸、私にはない。
「死んでも犯されてなんかやるものか……てめぇみたいな気持ち悪い男に奪われるくらいなら、処女なんざゴブリンにでも食わしたほうがマシだ! どうしてもやりたきゃ俺を殺してから屍体でやりな!」
やっぱり……すごい子……
どうしてこんなに強気でいられるのだろうか……
この状況ちゃんとわかってるかな……
いや、わかってるからこそか……
白い少女の顔は、笑っている。
カレンと同じ、死ぬことを受け入れた、すわった目……
たとえ死んでも屈しないという強い意志を感じる。
でも……なんだろ……
何かが違う。何かがおかしい。
その表情が無性に楽しそうに見えるのは気のせいかしら……
「ははっ、なんだその間抜けズラは? 抵抗されたのがそんなに不思議か? 顔がゆで卵みたいになってんぞ……いやこれはゆでタコか? それにそのメチャクチャな髭が合わさると……ぷっははは、なんていうか、もうなんだか知らんけど面白っ……」
また煽った……
そんなに殺されたいの?
まぁ……この状況で無理やり犯されるくらいなら、いっそう死んだ方がマシ、という気持ちはわからないでもないのだけれど……
「コォのあまぁ……本当に殺されないとても思ってるんじゃねぇだろうな……」
「おい、ちょっ……ダブラ! やめろ! 殺してどうすんだよ!」
「退け!」
「いいか、俺は死体でもいける口なんだよ……だからそこまでいうなら……望み通りにしてやってもいいんだぜ……」
「ははは、ならさっさとやれよ……てか何手ェブルってんだよ……おやおや、まさか人を殺したことないんでちゅか? こりゃすごい、よくそれで盗賊なんざやってられるな……肝っ玉だけじゃなくて、男のタマもお袋の腹の中に忘れてきちまったようだな……哀れなダブラちゃーーーーん……ううげごっ!!!!!!」
あああぁ……また煽っちゃって……
本当に殺される……
なのに彼女の顔からは全く恐怖の色が見えない。
むしろ、なんだが目を輝かせているように見える……
なんというか、アミーが未発見な美味しい屋台を見つけたときのような……そんなキラキラが……
「本当に死にテェようだなこのあまぁ……いいぜ、お望み通りにこのまま締め殺してやるぜ! そして殺してから死体をメチャクチャに犯してやる! 最後には串刺しにして俺たちのアジトにぶら下げて飾ってやるよ!」
あっ、締まった……
本当に締め殺す気だ……
白い少女の体がピクンと跳ねる。
真っ白な足が無力に虚空を蹴っている。
え? 真っ白な?
なんで?
あの白い少女は隣の草むらから出てきた通りすがりの旅人……
つまり押し倒される直前まで森道を歩いていたはずで……
だとしたらその格好がそもそもおかしい。
薄着すぎる。
薄い布一枚の、まるで寝巻きにも思えるような、そんなペラッペラな服……
下半身に至っては太ももが丸出しで、変な形の下着しかつけていない状態。
靴も靴下もない。
周りに脱ぎ散らかされた服も引き裂かれた布の破片も見当たらない、つまり最初からこの格好だったと……
どう見ても森の中を歩く格好じゃない。
これじゃ寝室でくつろぐ時の格好だ。
この状態で押し倒されて、土の地面でジタバタ暴れてしばらく経つから、体が土埃まみれになってもおかしくないはず。
でも、少女の体には、埃一つついていない。
綺麗すぎる。
太ももも、足の裏も、腕も……
真っ白すぎて眩しさすら感じる。
森の土の地面であれだけジタバタ暴れた後でこれだ。
おかしいでしょ?
「ははっ、いい顔になってきたじゃねぇか! これだよこれ! 女はこういう顔をしてないとな……今更謝っても命乞いしてももう遅いからな……このまま死ぬまで絞めてやるよ!」
思わず白い少女の顔に目を向ける。
綺麗な顔がぐちゃぐちゃ……
白目をむいて、顔が茹でたエビみたいに赤くて、涙も涎も鼻水も溢れ出して、口から泡が吹き出してるし舌も外に出てる。
でも……
「はは……へへへ……ヘヘヘへへ……」
なんで……まだ笑ってるの?
しばらくして、顔が赤から紫色になった白い少女は酷い顔のままぴくりとも動かなくなった。
「へへっ、一丁上がりっと……」
白い少女を締め殺したダブラは、興奮した顔で動かなくなった少女の足を持ち上げて、下着を脱がそうと手を伸ばす。
本当に、死体を犯すつもりのようだ。
腐れ邪道が……
でもそんな時。
「おい待てよこら」
真っ白な、小さな手が、ダブラの頭の上に現れた。
思いっきり、ダブラの髪を掴んで。
「うぐっ、イッテェななんだ…………よ?」
髪を掴まれていいところで邪魔をされたダブラはイライラした顔つきで振り返り、そこで理解できないものでも見たかのように目を見開く。
実際、理解できないものが、そこにはいた。
白い少女が、立っている。
一糸纏わぬ姿の白い少女が。
さっき締め殺されたはずの白い少女が、無傷でそこに立っている。
ダブラが、先ほど自らの手で締め殺した死体の上に乗っかったままだというのに。
この理解できない明らかな異常現象に、背筋にゾッとしたものが走る。
そして全く肌を隠す素振りを見せないその白い少女の体の美しさに、思わず息を呑む。
多分私だけではない。この光景を目撃した全ての人間が。
場が静まり返る。
何故か、出発する前の、アミーの言葉を思い出す。
「大丈夫っすよ、奥様。よくわかりませんけど、なんとなく奥様が無事に戻って来る気がするっす!」
アミー。フィータと一緒にシルビアに拾われてきたスラムの子供の一人。褐色肌で黒髪の。可愛い女の子。
いつも元気いっぱいで、あっちこちを走り回る姿をよく見る。
太陽のような存在で、みんなが可愛がるペットのような存在でもある。
私もたくさん癒された。
生まれつき力持ちで、森の中を四足で駆け回れる彼女は色んな意味で野生児だ。特に勘が鋭いという意味では。
彼女が「そんな気がするっす!」と言っていたことがその通りになったことが何度もあった。
あまりにも凄すぎて未来予知の類じゃないかと思って鑑定を受けさせたけどそんなスキルは出なかった。
スキルとして存在しないということは、本当にただの勘。
でも、当たる。
もしかしたら、私たち、本当に、無事に家に帰れるかも……
主人公のステータス
★スキル
-アイテムボックスプラス
-ただ死ぬだけのチート
-女神の加護?(趣味)
★殺されて手に入れた力
なし
★殺害以外の死で手に入れた力
なし
★持ち物
なし
★服装
なし
等級の目安
下等->普通->優秀->絶世->英雄->埒外
E D /C B /A S
新手/中坚/强者
三下->三流->二流->一流->超一流->マスター