第三話 体育祭一週間前
今日も、彩羽と一緒に学校へ登校だ。
私が待ち合わせ場所に遅れて到着する。
彩羽が私の手を握り「アイラブユー」と言ってくる。
私は寝不足のため彩羽の変態な言動に突っ込まない。
いちいち突っ込むと、疲れるからね!
「彩羽はおかしい人なの?」と思うかもしれないけど、これでもいつもどおりだ。
でも、いつもとは違うところが一つあった。
私たちが通う学校は、体操着上下を着た上に制服を着て過ごす。
もちろん登下校も本当ならその格好だが、今日はちがう。
一週間後に体育祭があるため、今日から体育祭の日までは普段の授業がなくなり、一日中体育祭の練習になる。
そのため、体育祭練習の期間中は体操着上下の上に制服ではなく、体操着上下の上に学校指定のジャージで登校&下校が許されるのだ。
ということで、私と彩羽はジャージ姿で学校までの道を歩いている。
「制服だと暑くて倒れそうになるけど、ジャージならまだましだよねー。」
彩羽が私の手を握ったまま言った。
「うん。最初はこのジャージのデザイン嫌いだったけど、なんか最近気に入ってきたし。」
私は緑に赤のラインが入ったジャージを見ながら彩羽の手を振り払った。
「でも、どうせなら体操着だけで登校でもいいのになぁー。」
彩羽は言いながら再び私の手を握ってきた。
「体操着に名字でっかく書いてあんじゃん。ジャージなかったら、個人情報丸出しだよ?」
私はまた彩羽の手を振り払う。
「そーだねぇ。」
うっ!?今度は抱きついてきた!
「きもい!やめてー!!」
とっさに、彩羽の肩を押した。
彩羽が素直に私を解放するはずもなく、離れようとしない。
私はレズじゃないぞ!!
「暑苦しいー!!」
私の抵抗も虚しく、彩羽から私への変態行為は、途中でゆっちゃんに会うまで続いた。
私は彩羽と別れてから、教室に荷物を置いて幸音と一緒に校庭に向かった。
朝から外で体育祭の練習なのだ。
「はぁ、朝から無駄な体力使っちゃたよ。」
彩羽とのことを思い出しながら言う。
「大丈夫?」
三階から一階へ階段を下りながら、幸音が心配してくれた。
「まぁ、一応。」
「ほんとかよ?あ、そういえば晴美さー、・・・なんだっけ?・・・なんていうんだっけ?アノ・・・四人一組で足結んで走るやつ!ほら!あるでしょ!?体育祭でうちらがやるやつ!分かる!?・・・なんだっけアレ?」
幸音は私を心配するのを止めて、必死に『アレ』にあたる言葉を思い出そうとしている。
あー、アレのことかな?
一年生がやるクラス対抗のヤツ。
「学年種目のヤツ?」
「それ!!・・・なんていう競技名だっけ?」
フフ、思い出せないとは老いたもんだ幸音よ。
「えっとねー、・・・。確か・・・。」
・・・えっとねぇ・・・なんだっけぇー・・・・。
「知らん!!」
つーか、思い出せない!
「あはは。うちも分からん!とにかくソレの並び順考えてきた?」
並び順?
そういえば昨日の放課後、石岡先生がそんなことを幸音と私に頼んでたような・・・。
「考えてない。」
「まじで?うちは考えてきたよーん。色々なパターンで練習してみて一番タイムがいい並び方で本番もやるって石岡先生言ってたよー。」
やばいぞっ。
私は先生たちには良い子ちゃんで通ってるんだ。
その良い子ちゃんが先生に頼まれた使命を果たせないとは・・・。
「今考えるしかない。」
五組は四十人だから、横四列の縦十列。
男女二人ずつって石岡先生言ってたから・・・。
足の速さと身長さを考えると・・・。
つーか、なんで石岡先生は私と幸音に頼んだんだよー。
あ、それだけ信頼してるってことか・・・。
考えてるうちに校庭で五組が集まっている場所が見つかったため、幸音と私はその集団に並んだ。
朝だというのに、朝の爽やかさより夏の蒸し暑さのほうが勝っていて、まだ運動していないのに汗がにじみ出てくる。
「一時間目は四人五脚の練習をします。」
周りのクラスの騒ぎ声に負けないくらいの石岡先生の大きな声による指示のおかげで、さっき思い出せなかった競技名が分かりスッキリした。
だが、その快感を味わう暇もなく、石岡先生が続けてこう言った。
「今木さんと福本さんが、並び順を考えてきてくれたので二人の指示にしたがって並んで下さい。」
ううっ。
福本さんしか考えてきていませんよ先生。
「最初、幸音の並び方で頼むー。その間に考えるからっ。」
「おっけー。でもさ、考えるの諦めて先生に謝ったほうが楽じゃない?」
私だって本気で、この時間内に並び方を考えられるとは思っていない。
だって、一列目のメンバーを決めて二列目のメンバーを考え始めると、一列目を誰にしたか忘れちゃうんだもん!
考える時間=先生からの信用を失うまでの時間、なので、それを先延ばしにしたいだけ。
「いざとなったら背の順にするからいいよ。」
私の投げやりな感じの答えを聞くと、幸音は指示を出し始めた。
「まず一列目から呼んでいくので、呼ばれたら並んでください!一列目は杉原さんと松田さんと岸澤さんと竹嶋さんです!」
いつものふざけた感じからは想像できない様な、リーダーシップを発揮している幸音に感心すると同時に、杉原と一緒になれなかったことに対して心の中で舌打ちをした。
そんなことより、私は並び方を考えなくては。
うーんと、一列目は・・・最初にリードしたいから足の早い人四人にしよう。
足の早い人は・・・誰だろう・・・。
「四列目は、登谷さんと川城さんと今木さんと歩川さんです。」
ラッキー☆
男子は私が気になる二人だし、女子のほうもけっこう仲良い優奈。
私が四列目に並ぼうと立ち上がると
「晴美ぃーーー!!」
優奈が抱きついてきた。
彩羽に抱きつかれると、なんか気持ち悪いけど優奈なら別に平気。
「優奈ぁーーー!!」
私も抱きつき返した。
「やったね晴美!同じ列だよっ!」
心から嬉そうな笑顔で飛び跳ねている。
「でも、この並び方に決定なわけじゃないよ?」
私が考えられたらの話だが・・・。
「大丈夫だよ!タイムが良ければいいんでしょ?優奈たちの列で早く走ればいいって!あっ、早く並ばなきゃ。」
優奈は私の腕を引っ張って四列目に座った。
私の左隣は歩川、右は優奈、優奈の右は登谷、という並び順になった。
でも、優奈は背がちっちゃいし、歩川は背が高いからバランス悪くない?
幸音はどういう基準で決めたのかな。
もしかして、幸音は私のためにこの順番にしてくれたのかも。
じゃあ幸音は・・・。
幸音はどの列なのか疑問に思い、周りを見た。
・・・やっぱり。
幸音の隣は中島だった。
「みんな並んだー?じゃあ紐をわたすから足結んでねー!」
石岡先生がそういって紐を配り始めた。
他の男子や女子達が、足を結ぶことへの照れから文句を言ってる中、歩川は何も言わずに私と歩川の足をしっかりと結んでいる。
その横顔をみながら私は「この並び方最高!!」と思った。
私は、説明が苦手なもんで読みにくかったと思います。
こんな物語を読んでいただきうれしいです。
ありがとうございましたっ!