第二話 夏はまだ終わらない
暑さを少しでもなくすために、彩羽と私は日陰を好んで歩いていた。
これからプールに行くとか、アイスを食べに行くとかいう目的ならまだしも、学校へ登校するというために眠い中この炎天下を歩くのは結構つらいものだ。
「あっちぃー。」
彩羽の歩くたびに揺れるポニーテールを、横目で見ながらつぶやいた。
「ほんと暑いね。でさっ、昨日の放課後ゆっちゃんと結局一緒に帰ったんだけど、その時にねー・・・」
一応私のつぶやきに同意はしてくれたものの、幸せそうに彼氏の話を続ける横顔からは暑さなんか感じてないように思えた。
彩羽とは、基本毎日一緒に登校している。
彩羽の家の前で待ち合わせで、そこから約十分かけて学校まで歩いていく。
十分とは長いようで短い。
まぁ、そんな時間も一緒に過ごしたいくらい仲が良いってことだ。
いつもはそんなに話題がないのだが、今日はちがかった。
昨日できた、彩羽の彼氏の話で盛り上がっている。
盛り上がっているといっても楽しそうなのは彩羽だけだが・・・。
人の彼氏の話し聞いて、何が楽しいって言うんだよ!
うらやましいだけだっつーの!!
でも、楽しそうに話す彩羽にはそんなことはいえず、興味があるフリをして聞いた。
ロン毛君の名前は、富士村友。
彩羽はゆっちゃんと呼んでいる。
彩羽は中学に入学した時からロン毛君・・・いや、ゆっちゃんが気になっていたらしい。
ゆっちゃんも彩羽のことを『別に付合ってもいい女』に分類していた。
「だから、別にって何だよ!!?」と、思いながらもそんな男と付合っている彩羽に対して、「男運悪いのかな?」と思ったりもしていた。
他にも昨日の帰り道手をつないだとか、色々うらやましい話をしてくれた。
そして、十分という時間は終わり学校についた。
相変わらず暑さはハンパじゃない。
下駄箱で上履きに履き替えるためしゃがんでいると、頭上から声がした。
「よぉ。今日は暑いな。でも、俺のハートは君に出会った瞬間からもっと熱く燃えてるぜ。」
うわっ、何こいつ?
顔を上げてみると、私に向けられた意味深発言ではないとわかった。
「ゆっちゃん!!」
彩羽が驚きと喜びの混ざった声をあげる。
そう、ゆっちゃんから彩羽への愛の言葉だったのだ。
彩羽はゆっちゃんのもとに行くと、さっき以上の笑顔で話し始めた。
あんなのと付き合ってんのかー・・・。
改めて、彩羽の好みは悪いと実感する。
・・・それにしても、私はどうすればいいかな?
ゆっちゃんは私の存在にすら気づいてないようだし、彩羽は私の存在を忘れてるようで「ラブラブしてます」のオーラを出しまくっていた。
友情より恋愛をとるのか彩羽よ!!
独り身の気持ちも知らないで!
だけど、今まで私が見たことのない顔をゆっちゃんに向ける彩羽はとっても輝いていて、それをずっと見ていると私は急に虚しくなった。
何だろう?
よく分らないけど、すべてがどうでもよくなった。
でも、それはいやな感情ではなく、むしろ体が軽くなったようだった。
自然と私の足は教室に向かった。
「晴美おっはよ!」
教室に入ると、幸音がいつものテンションで片手をあげた。
その手に私の片手が合わさり、パシンと軽い音を出す。
いわゆるハイタッチ。
幸音とはクラスで一番仲がいい。
話が合うし、気を使わないで気軽に話せる。
なにより一緒にいて楽しい。
「おはよー。」
私は胸元の体操着をつまみ、中に空気が入るようパタパタしながらいった。
「まじ暑いー。幸音暑くないの?」
今度は制服のスカートを捲り上げパタパタさせながら、いやにニコニコしている幸音に問いかける。
「んー?暑いけどー。」
この反応はさっきの彩羽に似ていた。
ニコニコ笑顔のまま「暑いけどー」の続きを聞いてほしそうにしている。
「なんかあった?もしかして中島との関係に発展が!??」
中島とは、幸音の好きな人。
「いやー、そんなんじゃないってー。ただね、アイツが「おはよ」って言ってくれたのー。」
テレながら言う。
「まじで!!?良かったじゃん!もう告っちゃえ!」
昨日の彩羽のこともあり、幸音ならOKしてもらえるんじゃないかと思った。
まぁ、幸音がテレるところを見たいっていうのもあるけどね。
「それはムリーー!!」
やっぱりテレている。
その時、中島が幸音の横を通った。
私と幸音は中島の後姿を少し追ってから、顔を見合わせた。
幸音はニヤッと顔を崩し、
「きゃぁーーー!!」
と、自分の腕に顔をうずめ、喜びの叫びを控えめに出した。
「やばい!!ちょー幸せっ!!」
幸音は興奮状態。
「朝からテンション高すぎだから!!」
私は笑いながら席に座った。
幸音とは列は違うが一番後ろの席なので一応近い。
だから、席に着いたままでも話ができる。
「真面目なところさー、告らないの?」
気になるところを聞いてみる。
「うーん・・・。分かんない。今のところ予定はないけど、そのうち告るかもねー。」
中島を見つめながら答えた。
「つーか、晴美こそ告白しちゃえよー。」
幸音は私を冷やかすように言った。
「誰にー?」
杉原?登谷?歩川?
「とぼけんなし!!歩川にだよー。」
「は!?別に好きじゃないからね!?気になるだけだって!!」
この前、幸音に歩川が気になると言ったら、好きということになってしまったのだ。
「だから、それは好きってことだよ。」
幸音が真面目半分、からかい半分の顔で言った後、私と幸音以外の人が疑問を投げかけてきた。
「誰が好きなの?」
予想外な人物の介入に、私は
「ちょっ!!ビクッたぁー!!」
と、ビックリした顔になる。
本当にビックリしたんだからね?
かわいこブリッコとかじゃないよ?
その証拠に、私をビックリさせた歩川に
「お前、その顔ヤバイ!!どんだけ驚いたんだよっ!」
って、私の顔を指差しながら言われた。
もし、かわいこブリッコだったら、かわいくなれてない!!
「誰がこんな顔にしてくれたんでしょーねぇ?」
どんな顔だったの気になりながらも、歩川を睨みながら言った。
「ウソだよ。ふつーの顔だった。」
その言葉のほうがウソだと分かる口調と顔で、歩川は席に座った。
「んで、誰が好きなの?」
改めて聞いてくる。
「傷ついたから言わなーい。」
わざとすねて、歩川がいない方を向く。
「ウソだってー。ゴメンー。」
相変わらずふざけたカンジだが、もういいや。
「うちの好きな人はねぇー、・・・お父さん。まぁ、お父さんも好きだけど、いないよ、好きな人。幸音の勘違いなのサー。」
外人っぽく言ってみた。
「へー。」
自分から聞いてきたのに興味なさそう。
外人のところもスルー。
幸音は、私と歩川の様子をニヤニヤしながら見ている。
でも、幸音のことはあえて無視。
「歩川は好きな人いんの?」
さりげなく聞いてみた。
「おれー?・・・いない・・・。」
考えるようにして答えた。
ちょっと怪しかったが、そこは歩川を信じることにする。
「そっかぁ・・・。」
言葉の続きが思い浮かばない。
歩川も話を続けようとせず、ボッーとしていた。
私は、この歩川との間の沈黙が、寂しくて嫌いだった。
更新を待っていた人も、そうじゃない人も、今回はどうでしたか?
特別な進展はありませんが、人生そんなもんですよね。
現実的なカンジで、この小説を書いていきたいと思います。
ですが、本当の現実世界でも私は中学生やってるので、人生経験の浅さから微妙なカンジの小説になってしまうかもしれません。
まっ、そんなんでもいい人はこれからもよろしくお願いします。
ありがとうございましたっ!!