表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

戦場の亡霊

作者: 銀狼

 神樣がいるなんて嘘だ。

 でなきゃこんなクソッタレな世の中になんてなってねぇよ。

 そう悪態をつきたいところだが、それはお国柄的に許されないし、今はそんな暇もない。

 形ばかりの神への賛辞、そしてすぐにコックピットに乗り込む。ドッグタグ型のライセンスキーを差し込み、スイッチを入れる。

『――ライセンス認証完了。起動フェーズ開始』

 無機質な音声と共に、LEDとOS用ディスプレイが光りだした。


――Awaken......


Generic

Human-like

Operating

System

Trooper

......


 黒の背景に、細い線の白文字が並んでいく。その通称に似つかわしくない唸り声を上げながら、汎用人型操作機構兵が目を覚ます。

「『G.H.O.S.T.』No.811、アウェイクン。コントロール、オールグリーン。ギルバート・ロブソン、出る!!」

 その宣言と同時に、彼の乗機が射出される。前面のモニターに映る映像が、寒々しい艦内から、鉄火に彩られた地獄に変わる。

 僚機が出揃うまでの間、ホバリングをしながら、カメラアイを動かす。敵も味方も、市街地を縦横無尽に飛び回り、轟音と銃声を撒き散らしている。生み出すものは爆炎と、黒煙を上げて燻る瓦礫の山。

 ――炎と破壊を司る、機械仕掛けの暴力の化身。むしろ亡霊を生み出す側の存在であろう死神が『亡霊』と呼ばれている事実に、皮肉めいた苦笑を禁じ得ない。

 そうしているうちに、全機射出完了の通知が静かに響く。意識を切り替え、司令部の通信を聞く。

「No.810から820まで、目標は3キロ先、正面は第1部隊から第3部隊で抑えている。手段は問わない。敵拠点を制圧せよ」

「了解」

 レバーを操作し、ブースターの火を噴かせる。感傷と感情を置き去りにして、鉄火の地獄の一員となる。

 自身もまた、『亡霊』の一人なのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シンプルにかっこよかったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ