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三十九話 ウィンウィン

毎日投稿中です。

「うーん……」

 

 五彩樹の木の下で目を覚ます。


 どれくらい寝たんだろうか?

 ふと肩の傷を見ると、他の擦り傷と同じような感じになっている。

 触ってみても特に痛いということもないし、熱も引いている。


「これは凄いな……」


 つい声に出してしまった。


 これで、細胞活性というスキルが大体わかったぞ。

 細胞を活性化させ、自己治癒力を強化……いや、促進強化させる感じだな。

 

 過程の見た目は、傷にオキシドールをかけた時みたいにシュワシュワならぬボコボコではあったけど、自然治癒の物理的な促進とか医学が発達していない世界ではなおさら貴重だ。

 さらに、怪我した箇所の修復が促され内部の損傷は短時間で治るが、表面の傷だけは残る。

 反動で眠くなるし、お腹もすく……これは当たり前か。

 発動は、接触が必要と。


 ちょっとした怪我からどんな悪化の仕方をするかわかんないし、細菌なども地球と違うかもしれない。

 とてもありがたいスキルだ。


 太陽の位置からすると、一時間ほど寝たのかな? そろそろお昼御飯の時間なので帰ろうっと。



 両親もリアムも家にはいないので、一人で冷めた昼ご飯を頂いて、血でベトベトのシャツを洗って……ついでにからだの血も洗い流しておこう。


 証拠隠滅後、自室へ。

 いやー、鍵っ子時代を思い出すな〜。


 一人の時間も別に嫌じゃないし、この時間も大切にしたい。

 やる事や考える事がいっぱいあるからね。


 もう一度、コアプレートのチェックをしよう。


 コア:強化

 ■■□□□□

 スキル:真強化

 身体強化(真)○

 部位強化(真)○

 無生物強化(真)

 スキル:真活性

 細胞活性(真)


 ま、変わりはないよな。


 たぶん、スキル派生の一つ目なのでオートマ系だよな……細かいことを考えず傷の治癒を促進させる、で良いのか?

 

 何度も使えば、親和性が高まるだろう。

 ただ、直接触れる必要があるのはちょっと不便か。

 

 接触発動か、遠隔でも可能かは知っておくべき事だったので、あの状態でよく冷静に検証して見せたな、俺……ナイスだ。

 

 それよりも、コアの下の四角記号の謎が解けたかもしれない。

 ただ、これは他の人のコアプレートの内容を詳しく聞かないと裏付けが取れない。


 予想では、四角の数が六個、持てるスキルの数も六個で現在スキルを二個取得中である。

 ということは……スキルを取得する毎に四角が塗り潰されていくことになっているのだと思う。

 俺にとっては、うれしい誤算というか発見だ。


 この説が正しければ、スキルは二個取得しているが、実際に使えるスキルは四つあるということになる。

 まあ、スキルの派生みたいな感じではあるが、この世界の常識から言うと割とイレギュラーなことじゃないかな?


 父さんに聞いたモノスキルだっけ?

 これこそが一般常識のスキルルールとの違い……と予想している。

 つまり、通常のマルチスキルは覚えた時点で一つとカウント、二つ目を覚えたら二つとカウント、三つ目…………六つ目を覚えた時点で、取得スキル上限に達してしまう。

 モノスキルの場合は、一つスキルを覚えたら一つとカウントし、そのスキルに派生? があり、その派生はノーカウント、あくまでも一つのスキルの範囲という認識かな。

 

 だいたいこんな感じだろう。

 そう考えてみると、この国の初代国王メルキル・メルクリュースさんは、冒険譚の中で十個以上のスキルを持っていることになっていたが……あながち間違いではないのかもしれない。

 となると、父さんもそんな感じで人より多くスキルを持っているのかな?


 学校でも習うだろうしこの辺にしておこうかな。

 たまに六個以上のスキルを扱う者がいる……程度に捉えておこう。


 とにかく、王都出発までには、スキル『細胞活性』との親和性を高めておかないとなー。

 いざという時に使えないじゃ困るし。


 スキル使用後の脱力感と眠気の問題と、最後に残ってしまうかすり傷のような傷跡は治らないのか? が今後の課題かな。

 

 あっ! そういえば、対象は自分のみだろうか? いや……うーむ……これはさすがに検証はできないな、ナイフで切らせてくれなんて言ったらサイコパス認定を受けてしまう。

 それに、対象が自分限定だった場合……ああ、やっぱりあかん。

 

 今日はランニングや基礎トレーニングをしていないので、今からでもやっとくかな。

 強化系のスキルって、基礎ベースが高いと効果もより高くなりそうなので頑張ってトレーニングに励もうっと。


 そういえば、ミルメもレジーも今日は来ないな。

 あんなことがあった後だし、親も外には出さないか……自由なのはうちくらいなもんだな。



 ゴサイ村一周ランニングスタート!

 

 村一周のランニングって意外と退屈しないんだよな。

 新しい施設やお店ができてたり、みんな結構な確率で挨拶してくれるし、気分も良くなるってもんよ。



 おおー、再開拓が始まったからか建物が増えているな。


「こんにちはー!」


 挨拶しながら通りを抜けていく。

 

 この辺りは、農家さんが多いのかな?

 麦っぽい作物が育っている。

 田舎独特の匂い……土や草の香りとでも言うか、ノスタルジックな光景だなあ。

 

 確か、この辺りはミルメの家の畑だったかな?

 広大な畑は壮観だなあ……でも、稲じゃないとなんか違う感が半端ない。


 お! あれはミルメじゃないか?

 

「おーい! ミルメェーー!」

 

 なんか子供と遊んでいるな、この辺りの子供かな?

 夢中で気付いてくれないや。


 ちょっと近くに行ってみるか。


「ミルメ―!」


「……あ! イロハッ!」


「なにやってんの? ミルメ」


「えっ? イロハ……その、体の怪我は大丈夫なの?」


「体の怪我? ああ、もう治ったよ。ほら、もうピンピンよ」


「よかったー! もう心配したんだから……あたしのせいでイロハが怪我して……倒れて……血だらけで…………」


「わかった、わかった。心配してくれてありがとうな。でも、あの血はイッカクグマの血で俺のじゃないよ。倒れたのも緊張が途切れてホッとしたら力が抜けたんだよ」


「もー! 大怪我だと思ったから、イロハの家にも行き辛いし、母ちゃんからは危ないから遠くへ行くなと言われるし……でも、良かった」


「うん、もう大丈夫だよ。今日はね、身体の調子を整えるために村一周を走っているんだ。ミルメが良ければ、いつでもうちへ来いよ。訓練場には行けないけど、勉強はできるだろ? 僕も近い内に王都へ行く準備をしなきゃならないし」


「わかったー。母ちゃんに言っとくー。そっか、イロハも王都に行く時期だね……」

 

「そうだぞ。そして、ミルメは来年に王都だろ? 僕がいない間もしっかり勉強して、訓練して合格しよう」


「うんっ!!」


 子供の無邪気な笑顔はいいなあ。

 やっぱり、俺って子供が欲しかったんだな……いかんいかん、そんな話はどうでもいい。


「じゃ、またなー!」


「またねー!」


 大きく手を振って走り抜ける。

 

 ミルメが来なかったのはそういう事だったのか。

 悪いことをしたな……まあ、誤解も解けたことだし大丈夫かな。

 

 それにしても、小さい子をよく見かけるな。

 さすがゴサイ村のベビーブームや。

 リアムの友達がいっぱいできますように。

 

 

 おーっと、この先はまだ伐採が終わっただけで建物もあまりないな。

 ボチボチ南下して引き返すか。


 本当は、北の方の鉱山とかも見てみたいけど、勝手に行ったら怒られそうだし……何かあったらと思うとね。

 

 南下していくと、川が見えてきた。

 こっちにも川があるんだよな、水量は自宅付近より多い感じ。


 ちょっと顔でも洗うか。


「冷たっ!」


 鉱山の方から流れてきた水はかなり冷たいな、思わず声が出てしまった。

 川には魚もいるようだが……軽くトラウマがあるのでやめておこう。

 また、変な生き物かも知れん。


 ボーっと、周りの景色を見ていると……あれ?

 川沿いに、スズメみたいな鳥が転がってモゾモゾしている。


 近くで見ると、浅い穴で怪我して動けないでいるのか、バタバタ、モゾモゾしている。

 

 あっ!

 アリ……ジゴク? のようなすり鉢状の浅いくぼみがあり、その中央でもがいている。

 よく見ると、くぼみは普通のマンホールの蓋くらいの大きさで、中央に爪みたいなものが出て、スズメを捕らえている。


 どうしたものか。

 俺は、蜘蛛の巣にかかった蝶を助けるタイプではないが、こんな場面を見て心が動かないわけでもないんだよ。

 まあ、可愛そうだけど、これもまた自然の摂理という……そうだ! ちょうど怪我もしているようだし助ける代わりに……。

  


 そこら辺の棒を取ってきて、念の為強化しておく、下の主が毒持ってたりすると嫌なんで。


 ツンツンツーン。


 トントントーン、ドンッ!


 下の主は、地面を強く叩いたらあっさり引き下がってくれた。

 代わりに、足と羽が少し傷ついたスズメのような鳥がいる……ジタバタしているが飛ぶ感じではないようだが。


 ……顔がネズミやん、これ。


 スズメと思って拾い上げたら、顔がネズミで体はスズメみたいな生き物だった。


 ま、まあ、いいか。

 よく見ると、可愛く見えて……きた。


「助けてあげたんだから、検証に協力してくれよ、ネズミスズメ君」


「ジジッ」


 はい、了承の返事をもらったことにして……じゃ、行くぞ、小さいから指を当てて、細胞活性っ!


 泡ボコは出てこないか。

 やっぱり、自分以外は無理なのかな?


 ちゃんとイメージして、治る感じで……細胞活性っ!


 ダメか。


 細胞活性! 細胞活性! 細胞活性っ!

 

 くぅー、そうだな、こういうのは声を出して行こう。


「細胞活性っっ!」


 …………お、おおー!

 泡ボコがきたー!


 恥ずかしいし、ネタバレしそうなので、できるだけ声には出さないようにしていたけど、スキルを覚えたての時や発動に自信がない時には、発声したほうが発動しやすいのかも。

 

 ネズミスズメの足と体の辺りに小さな泡がブクブクと湧き出した。

 さっきまでジジジと鳴いていたが、今は大人しくしている。

 あの特有の眠気で寝てしまったのかな?


 しばらくしたら、泡も落ち着いてきたので、川の水で洗い流してみたら、表面の傷だけで血は止まっている。


 ネズミスズメ君は、食べられずに済み傷も治る、俺は良い検証ができた。

 まさに、ウィンウィン!


 まあ、下の主君は一方的に被害を受けているんだろうけど……許せ、俺の好奇心ゆえのエゴだ。

 アリジゴクって、二か月くらい食べなくても平気だと言うし、罠猟を頑張ってほしい。

 

 さて、コイツが起きるまで待っていようかね。

 

 

 ネズミスズメは、目を冷ましたらあっさりと飛んで行ってしまい、なんとかの恩返しということは無さそうだった。

 


 さて気を取り直して、ランニング再開。

 町内一周のノリでいつもより遠出してみたけど、ゴサイ村は結構広いな。

読んでいただきありがとうございます。


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