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百十六話 捕り物

不定期更新中。

 早速、冒険者協会へやってきた。


 裏やら闇やらが関わってくるなら、一人になった時が危険になる。


 結局、父さん達が言うように、ここで決着をつけておかないと……後顧の憂いは経つべし。


「すみません、伝言をお願いします」


「はい、どちら様へ致しましょうか? あと、お名前を記載下さい」


 イロハっと。


「冒険者キライディさんへ、お願いします」


「お調べしますので、お待ち下さい」


 父さんとウェノさんは、どこかで僕を見ている……どこにいるか、全然わからん。


「おまたせしました。イロハ様、公開対象となっております。内容はいかが致しますか?」


 そうだ! 居場所が分かれば……。


「どこにいるか、分かりますか?」


「キライディ様は、依頼を受けておられませんので分かりません」


 残念……。


「では、伝言でお願いします。『仕事に興味があるので会いたい』と伝えて下さい」


「場所は、出会った場所から少し先の空き地と伝えて下さい」


 出会った場所は、この冒険者協会の入り口付近。

 そこを真っ直ぐ行ったら、程よい空き地がある。


「分かりました。お伝えいたします」



 そのまま、冒険者協会を出て、空き地へ向かう。

 ウェノさんが言うには、イロハの事を分かっている可能性があるから、一人で行動すればすぐ釣れるかもと。

 だから、そのまま一人で待ち合わせ場所へ行けって。


 ちゃんと付いてきているんだよね?



 ……。


 ……本当に来るんかな?



 草むらに寝転がって空を見る……青いな。

 空が青いのは、波長が短いからとかなんとか……そんなん理屈じゃ分からんて。

 だって、夕方は赤いじゃないか。


 海が青いのは、他の色が吸収されるから……色って吸収されたりすんのか?

 緑っぽい海もあるじゃないか。


 学生時代にテーマを決めて、くだらないディスカッションをやっていたなー。


 懐かしい……。

 



「イロハ君、イロハ君」


「……んぅ。誰?」


「俺だよ、キライディだ」


 ……!?

 いつの間にか、寝てしまった!


「あ、ああ、キライディさん。ご無沙汰しています」


「君さあ、よく俺を呼べたね? すごいよ、その度胸。狙われているんだよ、君は」


「そうですね。それは知っています……でも、キライディさんもよく来ましたね? 罠かもしれないのに」


「あー、あの二人のこと? そんなもの、ねぇ」


 ど、どういう事だ?

 父さんたちが負けるとか……あるの?


 いや、絶対に無いな。


 でも、確かに遅い……早く来てくれないかな。


「そんなものって、大丈夫なんですか? その二人、相当怖いですよ? 今なら、依頼者を言ってくれれば、なんとか収めますが……」


「ハハハ、冗談が上手いね、君は。俺は、裏の商売をやっているって言っただろ?」


 どこにいる? 父さん、ウェノさん。


「裏がどうかは分かりませんが、そこから動かないほうがいいですよ、本当に」


「人材的には残念だが、これも仕事。一緒に来てもら……」


 シュッ! ボキッ! ドンッ!


 キライディさんが、歩み寄った瞬間、どこからとも無くウェノさんが登場。

 そのまま……右脚をポキリ。


 容赦ないやん。


 間髪入れず、父さんが腹へ重そうなバンチ……くの字と言うかつの字まで折れ曲がって横たわるキライディさん。


 しかも、二人とも血だらけ……もう、どこのスプラッター映画だよ。


「ほら見たことか! やっぱりコイツだったじゃないか! ルーセント」


「いや、近づいていない状態で襲うのはなあ……人違いだったらまずいだろう」


 あー、そういうことね。

 対象かそうでないか意見が分かれて遅くなったと。

 どんだけ遠くから見守ってんだよ!


「うぅ……痛ぇ」


「イロハ、大丈夫か?」


 それ、この状況で言う事かな……。


「いや、やり過ぎじゃないの?」


「おい! てめー、どこのキライディだ! 早く言わないと、もう一本いくぞ?」


 ウェノさん、こわーい。


「うぅ……他の奴らは……どうした」


 この二人相手に根性あるね、キライディさん。


「はぁ? 他って、あの雑魚どもか?」


「……ざ、雑魚って……あいつらだって、ぼ、冒険者五級と四級だぞ?」


 ああ、その程度だったか。

 こっちは、四級と三級相当だぞ?


「ウェノ、コイツは分かっていない。息子に手を出したんだ、こんなに甘いことじゃ、また雑魚を送り込んでくる。代われ」


 首根っこを掴んでいたウェノさんが、父さんへキライディさんを投げ渡す。

 物じゃないんだから……。


 でも、これはかなり危険な状態なんじゃないの? マズいか……助け舟を。


「キライディさん、お願いですから、早く言ってください、依頼者を」


「フフフ、これでも裏の人間の端くれ。死んでも言えないな!」


 あーあ、漢気見せちゃったかー、ダメだこりゃ。

 下手なプライドは、身を亡ぼす場合もあるって……。


「よく言った! 見事だキャディー君。君の根性を見せてもらおう。さ、こっちへ行こうか、息子が見ている前ではな……」


 どこのゴルフ場だよ、ここは。

 はぁ、ああなったらもう無理だね、絶対に吐かせられる……。


 だって目が……テンションマックスですもん。


「ちょ、ど、どこへ……イ、イロハ君! お父さんを止めてくれないか!」


「ごめんなさい、そうなった父さんを止めることが出来る人は……母さんしかいない」


「あの、お母さんは……?」


「ずっと南の遠くの方です。残念です……」


「うぁぁー! やめてくれー! 分かった、話す、話します」


 おお、早く言っちゃえ!


「あー、もういいから、話は後だ。君の死んでも言えないってやつをやってみようじゃないか! 俺はな、頭にきているんだ。息子に手を出しやがって……素直に白状したらどうしようかと思っていたよ。あと、一度逃げた分も追加な」


 おかしなことに……依頼者を聞くと言う話が後の方へ。

 これって、なんの状況でしょうか。


「ごめんなさい、すみません、申し訳ありません、イロハ君に手を出そうとしたことは謝ります、仲間をけしかけたことも謝ります……」


「……ん? さっきの威勢のいい言葉は、嘘なのか? まさか、俺に嘘をついたのか?」


 あー、もう何言っても揚げ足取られるパターン。

 学生の頃の嫌いな先輩にいたなー、俺の酒が飲めねえのか? 俺のお願いが聞けないってのか? まさか断る気は無いよな? 返事をしないのは失礼だぞ……って。


「いえ……いや……はい? えっと、ああ、すみません」


「ふぅ、ただの根性なしだったか。残念だな……両手両足を使い物にならないようにしてやろうと思ったけど、コイツはもう無理だな」


 両手両足って……そんな状態にしちゃまずいでしょうに。


「あの……イロハ君を連れてくるように言ったのは、ラジブラク商会です。ピグラジオ商会長が直接依頼してきました」


「それで?」


「えっと、後は、何を……」


「そんなもん、自分で考えるんだな。どんな情報を俺らに渡せば自分が助かるのか。しっかり考えるんだな」


 上手い!

 こういうところ、慣れているな。


「そんな……」


「もう、終わりか? そろそろ運動したくなったんだが……」


「いえ、これは、確定情報ではないですが……ラジブラク商会は、ビスローブ商会やスリーウェル商会へ出入りしているそうです」


「ほう、では、連れてきたイロハをどうすると言っていた?」


「……いや、その辺りについては」


「お前、助かる気はあるのか? しっかり思い出してみろ、それとも、きっかけが欲しいと?」


「いえ……恐らく、人質かと」


「ウェノ、潰そう。そのラジなんとか商会を」


「おお、いいねえ。久々に派手にやるか!」


「ヒィッ!」


「待って! ダメだよ、王都でそこまでしちゃ。もう、父さんは家族がいるでしょ? ウェノさんは、謹慎中でしょ? 二人とも、先のことや自分の周りも考えて行動して!」


「わ、分かったよ、イロハ……」


「もう、本当にダメだからね!」


「……おい、キャディー!」


「はいっ!」


 とうとう、キライディさん、キャディーへ改名。


「裏と言ったな? どうせ闇商会なんだろう? 俺ら二人を敵にまわせる奴が何人くらいいる? 言ってみろ」


「……お二人の武力なら、相手にできるのも数人程度だと」


「それで、この依頼の結末はどうする?」


「俺がこの状態ですし……失敗しましたと報告するしか」


「そうなると、闇商会の連中は、報復に来るだろう? ということは、闇商会を根絶やしにするか、襲ってきた奴らとお前が完全に行方をくらますしかないんだが?」


 集団失踪事件……あかん、あかん。


「いえ、そこは上手く話します。俺に任せてください!」


 頑張れ、キライディさん。


「信用できんな。どうしようか……」


「分かりました。俺の全財産を預けます。さらに、特性、スキル情報も教えます、二度と逆らわないという証です」


「そんなもん聞いてもな、お前程度、どうとでもなるし……俺な、まだスキルを使っていないし、武器も持っていないだろ?」


 マジで怖いんだよね、父さん。

 荒くれをまとめあげるだけはあるよ。


「うっ…………本当です! 絶対に今後手出しはさせませんから!」


「父さん! 信じてあげなよ。それとも、報復が怖いの?」


「いや、お前はどうするんだと言う話だ」


「僕は、自分の身くらい守れるって」


「うーん、危険だ。芽を摘んどきたい」


「ルーセント、イロハは確かに強いぞ。そこら辺の大人にも負けないと思うし、いいんじゃねーか? 本人もこう言っているし。俺も王都にいるわけだから」


「むぅ……」


「キライディさん、本当に信じていいんですよね?」


「ああ、君には迷惑をかけた。本当は、俺もやりたくなかった仕事だったんだ。ちゃんと、丸く収めてくるから」


「いいだろう。ただし、どんな話で落ち着いたか、必ず報告に来い。どうせ、滞在先くらいは知っているんだろう? 期間は三日与える。いいな?」


「はい。必ず」


「じゃ、行っていいぞ……歩けないか」


「ウェノ、二、三人ほど寝っ転がっている奴を持ってきてくれ」


 人は、物ではないですよ?


「そう言うと思ったよ、ほれっ」


 ドサッ


 強そうな冒険者だが……装備品がひしゃげている。

 腹部、顔面が、まるでハンマーみたいなもので殴られたようだ。


「おい、起きろ!」


「「はいぃ!」」


「お前ら二人は、そいつを運んでやれ」


「「はいっ!」」


「いいか、キャディー。約束は守れよ」


「分かりました。必ず守ります」


「行けっ」


 キライディ改め、キャディーさん、頑張ってね。




 ◇◇



 所変わって平和な我が家。


 香辛料コーナーで、ニンニクの粉末のようなものが手に入ったんで、ガーリックトーストを作ってみた。


 バターでしか作った事なかったが、オリーブオイルでも意外とイケる……こっちでは、オリム油と言うらしいが。


「この焼きパンは美味いな! お前、素質あるぞ、母さんにも言っとかないと」


「ふーむ、やっぱり一階で食堂でもしねーか? 繁盛するぞ」


「そんなことはいいから。そこの肉とか、野菜とかも乗っけて食べたら美味いよ?」


「おお、美味いな」


「うめー! これ肉か!」


「あー、それね。そぼろって言うんだよ。葉っぱの野菜に包むといいよ」


「ほえー、いろいろ知ってんだな。こんなもん、うちのビーツ家でも出たこと無いぞ?」


 だろうね、そぼろは和食だし。

 


 今日は、バイオレンス映画さながらな一日だったから、二人のほのぼのした美味そうな顔がホッコリするよ。

読んでいただきありがとうございます。

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