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十三話 ネイブ領:四

本日の投稿(0時まで)は、これで最後です。

「う……うぁー!」


 ……なんという夢だ。

 こども会議で、いきなりポルタが「な、謎は全て解けた!」とか言いやがって、別の世界から来た事を指摘しやがった……。

 それで、なんやかんやあって俺が本当はおじさんという事がバレて、皆から「元の世界へ帰れー!」って言われるという……なんとハチャメチャな。


 ストレスたまってんのかね。

 まあ、昨日はちょっと刺激の強い事件があったから印象深かったんだろうな。


 そういや、昨日はさっさと眠ってしまったが、領主館に泊めてもらったんだった。

 外は徐々に日が昇ろうとしている……朝ぼらけって言うのかな? まるで夕暮れみたいにキレイだ。


 部屋には四つベッドがあり、父さんとポルタが「フガー」、「スピー」と奏でている。

 完全に目が覚めてしまったよ。

 起こされると二度寝したくなるけど、自分だけ起きて他が寝ていたらなぜか眠れない……変な緊張感があって胸がもやもやするんだよな。


 さて、時間もあることだし少し探検でもしてみようか。



 うーん、部屋ばっかりで、あんまり何も見るところが無いなあ……お、中庭みたいなところに誰かいるぞ。

 あれは、アレス様かな? 一生懸命に剣を振って、汗が朝日に反射してるよ……これが、さわやかイケメンか。


「おはようございます、アレス様」


「イロハか、おはよう!」


「早朝から、剣の稽古ですか? 精が出ますね」


「まあな。日課でもあるし、できる事なら剣術スキルを得たいのでな」


「えっ? 剣の稽古で剣術スキルが獲得できるのですか?」


 ちょうど、稽古のキリが良かったのか、こちらに向き直り近くの座れそうな石のところへ腰かけるように促された。


「そうだとも、そうでないとも言えるが……イロハは確かまだ学校へ行く年齢ではないのだろう?」


 アレス様は、汗を拭きながら俺に質問を飛ばしてくる。


「ええ、まだ七歳です」


「ほほう。七歳でそこまでしっかりしている子も珍しいな。きっと、将来は大きなことをするのであろう。楽しみだな」


「そんなことありませんよ。からかわないで下さい」


 そんな風に見えるのだろうか? 村では特に言われたことは無かったけど……普通じゃないのか? あまり目立ちたくはないなあ。


「むぅ……そういう所だ。普通の子供は、そんな謙遜したりしないし、受け流さないぞ……まるでベテラン商人を相手にしているようでつかみ所がないな、イロハは」


 ベテラン商人ってねぇ……まあ、以前は会社の社長だったし、商人って言えばそうかもしれんが、これ以上気にされるとまずい気がする……よし、だんまり作戦じゃ。


「……」


「いや、すまんな。そんなつもりではなかったのだ。そうそう、学校の話だったな?」


「はい!」


「通常、王国では十歳で学校に行くこととなる。若年教育は終わっているわけだから、それまでにコアプレートを作り、スキルを覚えるわけだ。今のイロハのようにな」


「ええ。まだ見ていないんですけどね」


「簡単にいえば、学校では主にそのスキルについての勉強をすることとなる」


「そうなんですか……」


「使い方や、効果など、これまで学校が培ってきた経験や情報、技術的なことを学ぶのだ……もちろん、スキルの伸ばし方などもな」


「なるほど! その情報の中に、剣の稽古で剣に関係するスキルを覚えるとあるんですね?」


「察しがいいな……と言いたいところだが、少し違う。『剣を扱うと思われる特性』の者であれば、剣の稽古で剣のスキルを覚えやすい、と言った具合だ」


「特性が剣に関係の無さそうなものであれば、剣のスキルは覚えない、と」


「その辺りについては、イロハが十歳になって学校へ行って学ぶとよい」


「そうですね。すごく興味深い話をありがとうございました」


「イロハよ、お前は好奇心が勝っている時は年相応なのだが、それ以外では妙に大人びておるな……いろいろと心配になってくるぞ」


「はい……気を付けます」


「俺は、休暇でここに戻ってきてはいるが、あとニ年は王立ロイヤード騎士学校で、その後王国騎士団への配属が決まっておる。王都に来ることがあれば、いつでも遊びに来いよ」


「あ、ありがとうございます! 是非、遊びに伺います」


「では、そろそろ戻るとしよう」


「はい、ではこれで失礼します。もしかしたら、この後プレートを取得して、そのまま村へ帰るかもしれませんので……この度は、いろいろとお世話になりました。すごくいい経験ができたことを感謝します」


 俺は、直立から九十度に体を折り曲げてアレス様に御礼の言葉を伝えた。


「こちらこそ、イロハとの出会いはとても刺激になった。それに、ポルタという無口な少年もな。将来、お互いが成長して出会えること楽しみにしておこう」


 アレス様は、そう言って軽く目礼をした。




 領主館の自分たちの部屋へ戻ると、すでに二人とも起きており、どこ行ってたかをいろいろ聞かれたので、アレス様とのさっきの話をした。

 父さんは、仲良くしていることを喜んでくれたようで、ポルタは自分ばっかりずるい……と言いながらも緊張するから部屋にいてよかった、と。


 三人で身支度を整えると、父さんが今日の予定を伝えてきた。


「今日はな、帰りの客車をすでにて手配していたので、そろそろ出発しなければ間に合わなくなる。二人には悪いが、観光する時間はないのでコアプレートを受け取ったらそのまま帰るぞ」


「わかった。僕たちは、昨日少し観光したので大丈夫! な、ポルタ」


「うん、早く帰って寝たい……」

 

「そうか。本当はもう少し滞在するはずだったんだが、入れ違いで別の団体が来るようで、この領主館を開けねばならん、というわけだ。では行くぞ」


「「はい」」


 

 この後、『領民登録所』より、二人のコアプレートを受け取り領主館を後にした。

 ただし、使い方の説明はその場でされることもなく、予約のサウロ号に乗り、村へ戻ることとなった。




 使い方のわからない俺たちは、帰りの客車の道中で、父さんからコアプレートのレクチャーを受けることになるのだが……。


「イロハ、ポルタ。コアプレートは持ったか?」


「はい、持っています」


「おらも、持った」


 今、客車の中の備え付けの椅子に座って、コアプレートなる物を右手に持ち、なぜか上半身裸の状態でレクチャーを受けている……。

 コアプレートは、俺のがパールホワイトみたいな乳白色で光沢があり透過性はない。

 ポルタのはピンクの蛍光ペンみたいな色で透過性がある。

 イメージ的には、小さめなスマートフォンで大学ノートくらいの厚さの色付きガラス板みたいな物だった。


「では、今のうちに二人共よく見ておくんだ。情報のない自分のコアプレートはこれが見納めだからな」


「えっ? どういう事?」


「まあ、言う通りにしておけ。コアプレートはな、自分のコアの情報を映し出すんだ、ここからな」


 そう言って父さんは、サムズアップさせた親指で、自分の心臓のあたりをトントンと指す。

 ポルタもまじまじと見ているよう……俺もよく見ておこう。

 

 ……見た目と違って、すごく軽く傷一つない。

 今まで一度も見たことがないと思うんだけど、みんなも持っているんだよね? どこに仕舞ってあるんだろ。

 ポケットとかに入れとくのかな? 失くしそうで不安だ。


「そろそろ、いいか?」


 いよいよか……あー、ちょっと酔ってきたかも。


「はい!」


「では、コアプレートを手に持ち、自分の胸の辺りにあてがうんだ。その時、コアプレートは身体と手で挟むように」


 そのための裸? あてがった瞬間、少しひんやりする……なんか原始的な儀式っぽい。


「そこで目をつぶり、自分のコアを意識するんだ」


 ん? ここへ来て急にオカルトじみてきたな。

 ポルタと目が合って「うん」とか言ってるよ……やるよ、そりゃあやるさ。


 俺は、静かに目を閉じた。

 

「…………うっ」


 なんか身体の中心が熱い……なっ! コアプレートが少し熱を帯びてきた。

 

 えっ? えっ?


「よし、二人共どうだ?」


「と、父さん、コアプレートが……」


「お、おらのコアプレートが暖かくなった……」


「うんうん、ビックリするよな? それでいいんだ。無事にコアプレートはお前たちのコアと繋がったということだ。これでスキルを持つ者の一員だ、おめでとう!」


「あ、ありがとう……ございます」


「……ぁりがとうございます」


 コアプレートと身体の中心が暖かいのは治まったようだけど、その他の変化は無さそうだ。


「後は、自分のコアを感じ、スキルを見るのだ。慣れない内は、目をつぶり自分の身体の中心にあるコアを想像するようにすれば感じ取れるはずだ。もう、コアとコアプレートが繋がっているから情報が見えるようになっているはずだぞ。ぼやっと映ってこないか?」


 儀式みたいな事して、想像? とてもじゃないが現代日本を過ごした俺は信じられんよ……まあ、やってみるけども。


 ………………………………。

 ………………。

 ……お! なんか繋がったかも。


 …………お、おおー! なんだ、これ。

 ……ほほう、コアプレートに文字が出てきた。


 

 

 期待を胸に、どれどれ……。

読んでいただきありがとうございます。


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