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九十話 入学試験:お昼休憩

次回の投稿は、10/23を予定しています。

 とりあえず、実技試験前半戦の重持久走は、なんとかなったな。

 重さには、ほとんど関係がなかったが、タイトル詐欺というやつじゃないのか?


「一時間足らずだったけど、疲れた。みんなで返却できてよかったよ。テリアのは小さかったけど」


「小さいって言うなー! ねえ、次の試験って、何時からかな? ウチ、着替えたい」


「私も、体を流したいです……」


「確かに、あの鉱石の崩れた粉で服が汚れたな。さすがに次の試験は、昼食後とかじゃないか?」


 ん……?

 今、グラウンドには、三、四十人くらいの返却者と、五十人くらいの失格者がいる。

 後は、出走待ちの第三班だ。

 

 第一班は、百六十人……少なくとも五十人ほど足りない。


「ロザ、全部で何班あったか覚えている?」


「全部で六班でしたよ、最後の班だけ百五十人です」


 ロザは、優秀だな。


「ありがとう! さすが、ロザ」


 ということは、全部で九百五十人……。

 すでに、第二班がいないし、第三班に鉱石を配り始めたことを考えると、十一時から三十分おきにスタート。

 これを六回繰り返すと……最終の六班は一時半スタート。

 今が十二時……探索競技も同じ班でやるのかな?


 それだと、探索競技という試験の時間は三十分程度と予想されるが……。


 待てよ……受付は確か十一あったよな?

 百人ずつで受付していたとしたら、人数が合わない……うーん、どうでもいいことだけど気になってしまう。


 受付が十なら納得できるけどなぁ。


「ちょっとー! なんでウチには聞かないの? 天才なのに……」


 うるさいなー、今考え中なのに。


「あー、じゃ、テリアさんよ。運んだ鉱石の名前は?」


「えっ……か、かんかん鉱石、かな?」


 ……まあ、ドンマイだ。


「ロザ、正解をどうぞ」


「タルカン鉱石です」


 ロザは、優秀だな。


「正解!」


「むきー!」


「では、テリア。今年、学園の試験を受ける人数は?」


「……えっと、百六十人が、一、二、三…………だいたい、千人くらい?」


 ……まあ、どんぶり勘定だね。


「ロザ、正解をどうぞ」


「今年、学園の試験を受ける人数は、九百五十人です」


 ロザは、優秀だな。


「正解!」


「むぅぅ……」


「……ほらな? ロザに聞くだろ、普通。天才さんには、特別にお願いしたいことがあるから、普通のことはロザに任せとけばいいよ」


「と、特別? 普通のことは……ね? もしかして、バカにしてる?」


「そーんなことないよ、テリアを尊重している」


「村長にしてる? 代表ってこと? うーん、そっか、分かった」


 テリアは……ふぅ。

 こんな感じで、よく王都最難関の学園を受られたもんだ。

 勉強とは違った部分の……いわゆる天然さんかも知れん。


「そろそろ、時間みたいだぞ、村長」


「ほんとだ、試験官の人が何か言うみたいよー」


 ふーん、ちょうど一時間くらいか、なるほどね。

 あの鉱石の自然崩壊時間は、やはり一時間程度のようだ。

 消えた五十人ほどが、ぞろぞろと引率されて来た。



「第一班の皆さん、お疲れ様でした。この後、昼食を取り、この場所へ集まってください。集合時間は一時間後となります。遅れないように気をつけてください。昼食は、学園の食堂で無償提供をしています。着替えについては、学園の施設を開放していますのでご利用ください。では、解散!」


 一時間か。

 どう頑張っても、同じ班での競技になりそうだな。


「とりあえず、着替えて食堂へ集合だな、じゃ、また後で」


「分かったー!」


「終わったら食堂へ向かいます」



 ◇◇



 食堂へ来てみたが……人が多い。


 護衛パーティにもらった服と靴に着替え、体は時間がないので拭く程度にとどめた。


 相席でよければなんとか割り込めそうだが……待たないと、村長がキャンキャン吠えそうなので我慢するか。


 昔、急かしたことあったもんな……「外出前の着替えは、年齢に関係なく女性は時間がかかるものよ?」って妻がよく言っていたし。


 ……化粧とかしない子供にも、当てはまるもんかな?



「おまたせしました、イロハ君」


 ほー、なるほど。

 髪型を整えてくるってのがあるのか。

 ボサボサになっていたポニーテールが、朝の整った状態へ戻っている。


「いや、そんなに待ってはいないが……なんで、ロザだけなんだ?」


「その、テリアは……着替えるのが遅いんです。だから、先に行ってと」


 遅い……なんか理由があるのか? と思ったけど、どうでもいいや。


「ふーん、まあいいけど。見たところ、席は空いて無さそうだから、相席になると思うよ。僕は、一人でもいいから、二人席を探していたらどうかな?」


「一緒に食べないんですか……?」


 悲しそうなハの字眉だなあ。


「そんな時間はないんじゃないかな? もう、残り時間は三十分くらいしか無さそうだ」


「……そうですね。残念です」


「夕食ならみんなで食べられるさ。宿も同じだし。では、僕は適当に相席してくるよ。集合時間、遅れないようにな」


「はい!」


 ロザと別れて、一人でお食事。

 お盆持って差し出すと、適当に一食分が乗せられた。


 どこが空いているかなーっと?


 ショッピングセンターのフードコートみたいな食堂で、空席を探す。

 百六十人だもんな、キャパは多く見積もっても百人ってところか。


 おや?

 キノコ頭のぽっちゃりさんが、一人で三席分を占領しているぞ?

 少しズレてもらえば座れそうだ。


「すみません! 少しよけてもらえませんか?」


「……」


 なんだ?

 聞こえないのか……?

 それに、心なしか対面に座っている三人からは冷たい視線が……。


「あの、すみませんが、少しよけてもらえませんか?」


「……チッ、おい」


 不機嫌そうに対面の子へ目配せをして、何かの合図を送っているキノコぽっちゃり君。

 

「そこの君、早くどこかへ消えなさい!」


 なんだ、このヒョロヒョロ男は。

 対面から突然おかしなことを言う痩せた男の子。


「……なんで?」


「メタベックさんが、食事をしている。邪魔だ」


 メタベックさんって誰よ!


「はぁ? 僕も食事をするところだし、他の席も空いていないから、少し空けてくれればいいって」


「ここは、空いていないからどっかに行け! 逆らうと、タダじゃ済まなくなるぞ?」


 これって、またモルキノさんみたいな偉い人系か?

 まだ、身分差に慣れていないから、勘弁してほしいよ……。


「分かった。どこかへ行くから教えて。そのメタベックさんって、何者ですか?」


「……僕を知らないだと?」


 キノぽちゃさんが、初めて喋った。


「はい、知りませんので、失礼を承知で今後のために教えて下さい」


「僕は、ムスカフライ家の長男、メタベック・ムスカフライだ。一等民だから、気安く話しかけるなよ! 田舎者は、向こうへ行ってろ。飯が不味くなる」


 散々な言い方である。


「はぁ、そのメタボリックさんは、どんな感じで偉い方なんでしょうか? 田舎者なんで、すいません……」


「ムスカフライ家は、王族の遠縁だ。お前のような奴が話しかけていい相手ではないぞ? 分かったら、どこかに行け! それに、僕はメタベックだ」


 よかった、つい煽ってしまったが、さすがにメタボは古代語ではないみたいだ。


「そうなんですね、それは失礼しました。では、約束通り他の席へ移ります」


 王族の遠縁か……。

 また、めんどくさい相手と出会ってしまった。

 さっさと退散じゃい!


 ちょうど、食べ終わって立ち上がった人がいたので、すかさず席ゲット!


「横、失礼します」


「ちょいと、君。そこは知り合いが座るんだ、どいてくれないか?」


 ……学園には昼食を簡単に食べさせてくれない呪いでもあるのか?

 

 今度は、隣の席の赤髪にちょっかいを出される……。

 もー、無視、無視。


「……」


 サッと食べ終われば何も言うまい、秘技、イッキ食い!

 ……などという技は持ち合わせていないが、早食いの努力はしよう。


 普通に急いで口へ放り込む、スープで流し込む……。


「君、何を黙って食べ始めているんだ? どいてくれって言っているだろ?」


 さらに、モグモグ、パクパク、ズルズル……。

 パン、何かの肉団子、スープ、と順序良く三角食べも忘れない。

 

 そういや、三角食べって否定的な意見もあったな……。


「君っ! いい加減にしないか! 聞こえていない振りなんかやめろ!」


「モグモグ……何? パクパク……聞こえているよ、ズルズル……」


「どけ! って言ってんだ、分かんないのか?」


 ギャーギャーと……俺が食べ終わるまでに、誰も来ないじゃないか。


「ズズズ……ふぅ。ごちそうさま。さてと、その知り合いとはどなたですか?」


「まだ来ていないが? 文句あるのか?」


「あるね。知り合いは来ていない。僕は、その間食べ終わる。これの何が問題だ? まさか、こんなに人がいて順番待ちになっている状態で、未だに来ていない知り合いのために、貴重な席をあなたの権限で空けておけとでも言っているのか?」


「……ふざけるな!」


「はぁ? ふざけているのは、君だろ。僕が、誰に迷惑をかけた? 言ってみろよ、さあ」


「俺に迷惑をかけた。ほら、言ったぞ?」


 おかしなことを言うもんだ。

 感情的な奴だなぁ、だったら……。


「ふぅ。では、どんな迷惑なんだろうか?」


「俺が、取っていた席に、お前が勝手に座った」


「何のために席を取っていたんだ? 一応言うが、知り合いのためとはいかないぞ?」


「知り合いのためだよ! なんでダメなんだよ!」


「ここにいないし、まだ来ていないから。それに、君は知り合いと言っているけど……本当にそんな人、いるの?」


「いるに決まってるだろ! バカにしてんのか!」


「じゃ、すぐに連れてきなよ。じゃなきゃ信じられないなー」


「だから、もうすぐ来るんだよ!」


「えー、全然来ないじゃん。ハッ! まさか……嘘をついているんじゃ……」


「おい! 嘘じゃないって、本当だって、信じてくれよ!」


 おやおや、急に顔色が悪くなったぞ?

 元々、真っ直ぐな性格で良い奴なんだろう……その、悪いな赤髪君。


「……なんか、焦っていない? 怪しいなぁ」


「ちょ、なんなんだよ……。あっ! ほら、見てみろ、あれ」


「んー? どこどこー?」


 テリアを真似て、明後日の方向を見てみた。


「どこ見てんだお前、あっちだよ! 向こうから来ているだろ? あの、がっちりした緑髪のあいつだよ」


 おっ、知り合いとやらが、やっとお出ましだ。


「あら、本当だ。じゃあ、君は噓をついていなかった。こりゃ、僕が悪かったようだね、認めるよ。君は、正直者だ!」


「やっと分かってくれたか。俺は、嘘なんてつかないんだ」


 あからさまにホッとしたご様子。

 話題も逸れたようだし、退散しますか。


「てっきり騙されているのかと思ったよ。よかった、君が正直者で。僕は、イロハ。お互い合格したら、その時はよろしく!」


「おう! 俺は、ギレット。そして、こいつは、バルクロウ。俺も証明できてよかったぜ」


「な、なんだよギレット。それに、誰だなんだ、この人……?」


 そりゃ、そうなるよな、バルクロウ君。


「じゃあ、僕は準備があるので、またな、正直者のギレット!」


「よせよー、照れるぜ。じゃあな、イロハ!」


 あー、しんどい。

 調子に乗せやすい奴だったな……ギレットと言ったか。

 

 さて、便所で用を足して、早めに集合場所へでも行っておくか、食堂は込んでいるし。

 

 早食いして、ちょっと苦しい……。

 何があるか分からないから、早めに戻るか。

読んでいただきありがとうございます。

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