ぺんぺん草も生えない
小惑星帯のひとつに降り立つ。
半球体のドームの中は、重力こそ0.8Gだが人工太陽に照らされて、美しい自然を作り出していた。
『東京ドーム21.6個分か。かなり広いね』
『その東京ドームって実際にはどうだったんだろうな?』
『ベースボールって遊びがあったらしいよ』
『ナシュルの原型だったか』
『ね。ちょっとやってみたいんだけど、人数が揃わないし、身体差があるとやりにくい競技なんだよね』
キン!
おっと、サステンションスーツの弾き出す軌道に合わせて、棒を振るう。
ガッ
『ホームラン!』
『お前さん、味方に当てるなよ』
『いやー、気持ちよくスイングしてしまったよ』
ジジ、、、ジ、、ッジ、ジ
宙に浮かぶ丸い球体は放電しながら、シールドなしに溶け出すエネルギー量限界で突っ込んでくる。
『なかなか進めないな』
『まあ、こんなもんじゃない?』
『あと2キロ、1ヤード手前かな』
振り返ると美しい自然はくっちゃくっちゃ。
木はひしゃげ、石畳は剥げて損傷している。
『・・・ピッ。隊長、制空権を確保しました。地上に妨害電波を流します』
『はい。よろしく』
『・・・ピッ。政治部物理交渉課です。当部署の課長に「人間」との物理的交渉権を付与します。速やかに交渉、決裂の場合は鎮圧してください』
『あいよ』
『あーあ、面倒だな』
『このタイミングでよく物理的交渉権を得るよね』
『腕の見せどころってやつだよ!』
「あたぼーよ!」みたいなポージングで任せろ!と言ってくる相棒に自然と笑顔になる。
『いくぜ!』『おう!』