第9話 まるで悪役令嬢のように
「そうよ、聞きたい？」
「勿論！聞きたいです！お願いします、どうか教えて下さい！」
ついにセリーヌは私にペコペコと頭を下げてきた。先程までの態度とは偉い差だ。
「そうね……なら教えてあげようかしら？これは貴女に関わる大事な話だから」
「大事な話……」
ゴクリと息を呑むセリーヌ。
「ええ、まずファンディスクには今まで登場したことのない新キャラが登場するわ。勿論、男性キャラよ。しかも彼は皇国の皇太子なのよ」
「え？！それじゃ、アイザック様よりも身分が高い方ってことじゃない！」
「そうよ。そしてそのキャラはねぇ……何と、私がこれから追放される予定の地……『ルーラル』にいるのよ」
「ええっ?!そ、そんな！」
「しかも彼はとてもイケメンで優しくて……」
そしてチラリと私はアイザックを見た。
「はっきり言って、アイザック王子なんか目じゃないわね」
「そ、そんな……」
グラリと身体を傾けるセリーヌ。それはそうだろう。セリーヌが敢えて攻略対象にアイザックを選んだのは彼が王太子だからだ。それがあんな俺様王子のうえ、私に対するDV男。
しかもいつ、そのDVが自分に向けられるのか分からないとなれば、冷静でいられるはずもない。
「爵位を取られてしまうのはイタイけど……でも貴女には感謝しているわ。だってお陰でアイザック王子から婚約破棄をしてもらえたのだから。私は『ルーラル』で暮らすわ。何しろ、リオン殿下がいるしね」
「え？リ、リオン殿下って……」
「あぁ、そうよね。貴女は知るはずもないわよね？リオン殿下とはファンディスクから登場する皇太子殿下のことだもの。彼はね、皇太子でありながら不幸な境遇に置かれている人なのよ。幼い頃に権力争いに巻き込まれて、『ルーラル』で隠されて育てられるの。でも、青年になったリオン殿下は皇位継承権を自分の物にして国に戻るのよ。それを傍で見ていられるなんて幸せだわ」
これみよがしに、うっとりした目つきで私は語る。
すると……。
「ごめんなさい！」
突然セリーヌが謝ってきた。
「私は……アンジェリカ様からアイザック王子を奪う為にわざと色々な嫌がらせをしてきました！そして今回ゲームのシナリオ通りにアンジェリカ様が断罪される舞台を設定させるように仕向けました！どうぞお許し下さい！」
ついに、私はセリーヌから真実の言葉を引き出すことに成功した。
「そう？それじゃどんな方法で私を陥れてきたか……皆の前で説明してくれるわね？」
私はにっこり微笑んだ。
そう、まるで悪役令嬢のように――。
