光と光
「はあああああああっっっ!!」
マーロンの右手から、極太の光線が飛び出していく。
ヘルベルト目掛けて飛んでいくそれは、直視できぬほどに眩しい輝きを放つ、白の暴威だった。
収束され放たれる光の束は破壊を齎し、地面をめくりあげ、周囲に衝撃波を撒き散らしながら進んでいく。
――マーロンがこの大会のために用意してきたとっておき。
それこそが上級光魔法であるオーバーレイだ。
このリンドナー王国には、かつて系統外魔法である光魔法の使い手がいたことがある。
現在では『光の救世主』と呼ばれ数多くの逸話を残している彼の人物は、幸運なことに次代の光魔法の使い手のための指南書を残した。
『光魔法とは基本的に、回復や防御といった支援系の魔法が充実している。故にそちらの方に、つい目が向きがちになってしまう』
彼はあくまでも、後方からの支援に徹した。
そして日々やって来る魔物の大軍と戦う自軍の兵士達を癒やした。
しかし彼も、ただ後ろに立っていただけではない。
自ら陣頭に立つこともあったし、一騎打ちで凶悪な魔物を倒したこともある。
指南書はこう続いていた。
『だが光の本質は明るさそのものである。照りつける陽光が作物を枯らすように、光は扱う者によっては凶器にもなる』
光の誘導放出を利用し、それを発振させることで放たれる光線。
剣の刀身に光を固定し、レーザーブレードを放つ魔法が中級光魔法であるコンヴィクトソードである。
それの発展系である魔法こそが、上級光魔法であるオーバーレイ。
刀身から伸ばした光を収束させそこから更に増幅。
光の束をいくつも重ね合わせた極太のレーザー光線を放つ魔法である。
「おおおおおおおおおっっ!!」
マーロンの攻撃に対抗するようにヘルベルトが放つのは、虹色の輝きを伴う光の奔流であった。
――上級時空魔法、アンリミテッドピリオド。
これはヘルベルトが初めて習得に成功した、純粋な攻撃用の時空魔法である。
上級時空魔法は、どれもこれも癖が強く習得までにはかなりの時間がかかりそうだった。
未来からの手紙にはその習得方法が書かれてはいるものの、一筋縄ではいかなそうなものばかり。
まずはどれか一つに絞ってやるのがいいだろう。
そう考えたヘルベルトが本腰を入れて訓練を続け、ようやく使えるようになった魔法こそが、このアンリミテッドピリオドである。
この上級魔法は、厳密に言えば攻撃魔法ではない。
この魔法は――相手を攻撃する攻撃魔法ではなく、ヘルベルトが指定した任意の空間を抉り取り、亜空間へと送り込む時空魔法である。
虹色の光の奔流は空間を削り、こそぎ取り、掻き毟る。
食らった者は、攻撃を食らった部位をこことは異なる、ヘルベルトが別に作り出している亜空間へと切り離される。
当然だが腕のある空間を削られれば腕は消え、心臓のある空間を削ればその生物は活動を止める。
魔法を食らわせることさえできれば、理論上はドラゴンのような最強クラスの魔物すら屠ることができる、ヘルベルトの文字通りの必殺技だ。
亜空間生成、この空間から亜空間への対象の移動、そして微細な魔力コントロール。
この全てをこなしながらでなければ発動ができないため、今もヘルベルトはこの魔法を制御するだけで精一杯な状態だ。
両者が己の意地をかけて、魔法を発動させる。
普通の相手であれば攻撃を食らった瞬間に死んでしまうような攻撃を容赦なく放ち続けることができるのは、相手の実力をしっかりと信頼しているが故。
「いい加減……諦めろっっ!!」
「それは……こっちの、セリフだっっ!!」
マーロンが生み出す光を、ヘルベルトが空間ごと抉り取り、飲み込んでいく。
生み出しては消え、また生み出されては打ち消される。
一進一退の攻防が続く。
マーロンの発動するオーバーレイは、その性質上攻撃の軌道を変更することができない。
そしてヘルベルトは、己の空間把握能力と空間掌握能力の都合上、限られたスペース内でしかアンリミテッドピリオドを発動させることができない。
両者の攻撃は互いを飲み込み、食いつくさんと進み続ける。
白色と虹色、目にあやな光の奔流が会場を包み込み、ステージ上をまばゆく変えていく。
ピシッ、ピシピシッ!
二人の攻撃の余波で、会場が悲鳴を上げ始めた。
しかし、攻撃をすることで精一杯の二人はその事実に気付かない。
また、試合中止の声が響くこともなかった。
――この戦いを最後まで見届けたい。
皆がそう思ってしまうほど、ヘルベルト達の戦いは会場を魅了していたのだ。
ここにいる者達は、皆優れた魔法の使い手達だ。
会場の保守や要人の護衛、果てにはその要人達までが皆会場を魔法で補強し、攻撃の余波を防いでみせた。
「はああああああああっっ!」
「ぜあああああああっっ!」
――光の爆発。
視界が暴力的なまでの光で埋め尽くされ、皆が揃って目を閉じる。
静寂。
一切の音がこの世界から消え失せたかのような静けさが、全てを支配していた。
呼吸するのも忘れ、観客達は瞼を開き、勝敗を見届ける。
そしてそこには……。
「また……僕の、負け、か……」
脱力し、地面にくずおれるマーロンと。
「ぜえっ、ぜえっ……」
同じく今にも倒れてしまいそうになりながらも、なんとか立ったまま意識を保っているヘルベルトの姿があったのだった――。
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