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ロデオの本気


 一行はアシタバに別れを告げ、一路『混沌のフリューゲル』へと向かう。

 今度は戦闘は控えめにして、とにかく体力と魔力を使わぬように。

 魔物との遭遇を控えながら、できうる限りの最短距離を通っていく。





「ふむ、これはたしかに混沌だな」


 ヘルベルトがしげしげと眺めているのは、一本の木であった。

 ねじくれ曲がった細い木は、グルグルと真ん中にある支柱に巻き付いている。


 近付いていき、その柱の表面をサッと剣の鞘でなぞる。

 すると苔が取れた部分に、こんな風に書かれていた。


『フリューゲル伯爵領へようこそ! もうすぐギスタムの街!』


 恐らくは、迷わないようにするための看板か何かだったのだろう。

 大昔のものにもかかわらず、少し擦れているだけで文字は問題なく読むことができる。


 付いた苔を落としてから戻ると、ロデオが呆れたような顔をしていた。


「若、もう魔物がいつ出てきてもおかしくないんです。あんまり動き回られては困ります」

「すまんな、以後気を付ける。こういう場所に来るのが初めてで、少しばかり気持ちが浮ついているのかもしれないな」

「新兵と同じ原理ですな。気持ちはわかりますが、以後は私の先導に従って下さい」

「ああ、わかった」


 ロデオは話をしながらも、絶えず周囲に目を配っていた。

 もう区域としては『混沌のフリューゲル』に入っている。


 何時どこで魔物と戦闘になってもおかしくない。

 ロデオの警戒は、つまりはそういうことなのだろう。


「行きましょう。事前に取り決めたハンドサインに従い、以後は私語は慎むように」

「わかった」

「了解です!」


 ロデオの先導の下、ヘルベルト達はゆっくりと森の中へと入っていく……。





 ロデオに事前に『石根』の植生地域については説明がしてある。

 手紙では文字で軽く説明されていただけなので、詳細な場所はわかっていない。


 ざっくりこのエリアにあると言われているだけなので、慎重に進んでいく必要がある。

 ちなみに目指すべき場所は『混沌のフリューゲル』の最奥部である。






「……」


 ロデオが何も言わず、後ろに置いてある右手で人差し指を立てた。


 このハンドサインの示す意味は、一人でやる……つまりはロデオ一人でカタをつけるという意味である。


 ヘルベルトは未だ魔物の気配に気付けなかった。


 少し悔しさを感じながらも、黙ってこっくりと頷く。

 それを見たロデオの姿が、一瞬のうちに消えた。



 ザシュンッ!



 そして気が付けば、近くまでやってきていた魔物を、一刀の元に切り伏せていた。

 ヘルベルトはその太刀筋を見ることができなかった。


 速度が速すぎるというわけではない。

 ただ動作と動作の間にある継ぎ目が、あまりにも短かったのだ。


 ぬるりと形容するのが正しいのだろう、自然でなんの違和感も感じさせない滑らかな動き。


 そして異常に気付いた時には、ロデオの攻撃が終わっている。


(ろ、ロデオ――強すぎっ!)

(これはデスストーカーですな。若が戦うとなれば全力を出さねばキツいでしょう)

(すごい……気付いたら戦いが終わってた)


 耳のいい魔物を呼び寄せぬよう、三人はこしょこしょと囁き声で話している。

 ロデオは二人に褒められて少し気分がよくなったのか、ふふんと鼻を鳴らした。


(先へ行きましょう。実戦でも甘やかしたくはないところですが、今回は若の魔法が頼りですからな……露払いは私が致しましょう)


 こうしてロデオによる無双が始まった――。







 相手が一体だろうが、複数だろうが。

 弱い魔物だろうが、Cランクの魔物だろうが。

 そんな物は関係なく、全てロデオが切り伏せていく。


 時折マーロンとヘルベルトにも応援を頼むことがあるが、それも自分では手が足りないからというよりは、二人がこの『混沌のフリューゲル』の中でも気を抜かないようにという配慮から来たものであることは明らかだった。


 それほどまでに、ロデオの戦いは圧倒的だったのだ。


 かつてロデオは、冒険者の頃に貴族の護衛依頼を引き受けることになり、そこで出会ったマキシムに見初められて武官の道を歩むことになった。


 ロデオにとって魔物との戦いは、昔取った杵柄なのだ。

 その戦い方は、お世辞にも正々堂々とは言えなかった。

 背後からの不意打ちや、フェイントを織り交ぜた虚実の駆け引き。


 ヘルベルト達をわざと前に出して、注意を引いている隙に一撃を叩き込むようなこともしていた。


 しっかりと正統な王国流の剣術を使っている普段とはまるで違う。

 恐らくこれが、本気を出したロデオが使う、我流剣術なのだろう。


 最近は実戦から離れているし、近頃は体力も右肩下がりで落ちている……とは本人の談だが、ヘルベルトにはまったくもって信じられなかった。

 今でこの強さなら、いったい全盛期はどれほど強かったのか。


 ヘルベルトは数度戦闘を行い、適度に緊張を保ち、かつ魔力の消費はほとんどしないままにどんどん先へ進んでいく。

 探索は半ばほどまで、進もうとしていた――。



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