vs魔人バギラス 2
「――サンクチュアリ!」
想定していなかった事態に慌てるマーロンだったが、即座に防御魔法であるサンクチュアリを発動。
彼を囲うような巨大な三角錐が生まれ、白色のバリアとなって周囲を守るように展開される。
更に続けて、
「コンヴィクトソード!」
己の剣に断罪の光を乗せる中級光魔法、コンヴィクトソードを発動。
サンクチュアリが破られた瞬間にコンヴィクトソードで攻撃とバギラスを迎え撃つ体勢に入る
「ちいっ、さっきからブレス攻撃を温存してたと思ったら、このためかよっ!」
ブレス攻撃はそこまで連発できるような攻撃ではない。
威力は高いが再使用までには充填の時間が必要であり、また使用する魔力も威力から考えると上級魔法数発分はある。
故に狙ってくるタイミングを窺ってはいたのだが……流石にブレスを吐き出しながら後衛に突進するとは、想定していなかった。
完全に相手のことをドラゴンとして想定してしまっていた。
ドラゴンは基本的に上空で戦い、地上戦ではどっしりと構えることが多い。
けれどその戦い方は、魔人に完全に当てはまるものではない。
ブレスがサンクチュアリに着弾すると、激しい光があたりを包み込む。
風の刃による回転力が足されているブレスは、ギャリギャリと音を立てながらサンクチュアリをみるみるうちに削っていく。
「チッ……しゃあねえか!」
相手の狙いが最初から後衛だったことに歯噛みしながら、グラハムは界面魔法を使う。
彼は大技である空間破壊を発動させた。
ブレス着弾地点を、ブレスのある空間を破壊することでズラす。
そしてその間を埋めるように新たに空間を繋いで、空間を固定させた。
結果としてサンクチュアリを貫通しコンヴィクトソードを食い破りマーロンの腕にまで到達したところで、空間破壊が完了。
ブレスは明後日の方向へ飛んでいき、最悪の事態は免れることができた。
しかしここで想定外が発生する。
界面魔法の一番の問題は、ほぼ全てを己の勘で行わなければいかないために空間を接合した場合にどのような形になるかがあらかじめ判断できないというところにある。
空間破壊を行いブレスの軌道をズラすことはできたが、新たに空間を繋いだ結果バギラスとマーロンを近づけることになってしまった。
大技を使ったせいで、グラハムも今すぐに再び空間破壊を行うことはできない。
加速した拳打を放つことができたが、攻撃を食らってもバギラスは動きを止めることはなかった。
「光魔法の使い手――ここでなんとしても殺す!」
傷だらけになっているバギラスの目は、明らかにマーロンに向いていた。
どうやら彼のことをかなりの脅威として認識しているらしい。
マーロンは改めてコンヴィクトソードを発動させようとして、すぐにそれが不可能であることを悟る。
手のひらに握っているミスリルソードは、既に食いちぎられたかのようないびつな形で、真ん中からポッキリと折れてしまっていたからだ。
それならとりあえず初級魔法でと迎撃に移ろうとしたマーロンは、自分目掛けてやってくるバギラスを見て、一瞬のうちに考えを改める。
そして彼は己の放つことのできる最大の一撃をくれてやるため、意識を集中させ始めた。
「――もらった!」
「させるかっ!」
バギラスの鋭い爪がマーロンの首を刈り取る……その寸前。
爪とかち合う形でミスリルソードによる一撃がバギラスへと向かっていった。
突進する形でマーロンへ飛翔していたバギラスは、その一撃を食らい勢いよく後方へ噴きとんっで行く。
マーロンが見ている目の前でバギラスへとカウンター気味の一撃を放ったのは――
「はあっ、はあっ……」
脂汗を掻きながら、荒い息をヘルベルトだった。
本来であれば間に合わないであろう距離を踏破したのは、時空魔法を使ったからだ。
彼は大量の魔力を使って強引に発動させることで魔力を己の身体にアクセラレートの二重がけ――アクセラレート・フラクションを使い、間に合わせてみせたのだ。
滲出魔力を重ね合わせることで時空魔法の効果が重なる点を発生させ、時空魔法の二重がけを可能とするアクセラレート・フラクション。
滲出魔力自体をリークという形で使うことができるようになったことで、今のヘルベルトは身体の一部だけでなく、全体に二重のアクセラレートをかけ、九倍の速度で移動することができる。
「おおおおおおおおおおっっ!!」
ヘルベルトはそのまま、攻撃を食らい吹っ飛んでいくバギラスよりも早い速度で大地を駆け、攻撃に映っていく。
バギラスはそれに対応しようとして、その鉤爪を上げて剣の一撃を防ごうとする。
けれどそれよりも、ヘルベルトが剣の軌跡を変えてバギラスに一撃を加える方が早い。
青い血が、ヘルベルトの身体を揺らす。
「ちいっ、それなら――ぐおおっ!?」
近接戦でダメなら全方位へ風魔法を放とうと魔法発動の準備を整えるバギラスだったが、集中しようとしている彼の頬にパァンッと勢いよく拳打が刺さる。
圧倒的に思えるヘルベルトだが、彼の眉間には深いしわが刻まれている。
(鉄塊か何かを叩いているようだ……斬撃は入っているはずだが、まったく聞いている気がしないぞ!)
アクセラレート・フラクションによって圧倒的優位を得ているヘルベルトだったが、彼は未だバギラスに有効打を与えられていないと確信していた。
速度とスペックで圧倒こそできているものの、自身が与えているダメージはバギラスの持つ再生能力でまかなえる程度のものでしかない。
(それなら――やるしかないか!)
ヘルベルトの全身に、ゆっくりと靄のようなものが立ち上っていく。
そしてヘルベルトの姿が、陽炎のようにブレ始めた。
それは彼が新たに使えるようになった技――時空魔法の三重起動の際に現れる空間の歪曲現象だった。
「アクセラレート――ッ!」
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