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また


「あれは……」


 地下へ向かう階段は、本棟の北側に存在している。

 本来であれば魔道具を使って厳重にプロテクトされているはずなのが、その防衛が今にも破られようとしている。


「ちいっ、なかなか壊れんな……」

「まあそうカリカリするな、ここまで来ればあと一息さ」


 張り出されている結界を壊しているのは、明らかに手練れの魔法使いが率いるグループだった。

 今回もまたグループで、人数は合わせて五人。

 ローブで顔を隠しているため、詳しい内訳はわからない。

 魔法使いだがどうやら接近戦もできるらしく、先ほどから周囲に気を配る動作にはまったく隙がない。


 今回は先ほどのように、奇襲で全ての片を付けるのは難しそうだ。

 だがそれでもやることは変わらない。


(相手が誰であろうと――とにかく倒すだけだ!)


 ヘルベルトは自らの身体にアクセラレートをかけ、一気に接近。

 ドドドドドという大きな足音に、敵がすぐにこちらの存在に気付く。


 杖を持った一人が引き続き結界の破壊を続行し、残る四人がヘルベルト達の方を向く。

 全員が腰に提げていた短剣を取り出し、ヘルベルトへ構えを取った。


「――シッ!」

「っと、なんだこの馬鹿力は――っ!?」


 今度も一撃で終わらせるつもりだったのだが……流石に本丸である魔法書庫を狙いに来た奴らは他よりも強いらしい。

 敵のうちの一人は攻撃を食らいのけぞりながらも、しっかりとヘルベルトの攻撃を受けきってみせた。


 ヘルベルトが一撃を放った隙に、残る三人が殺到してくる。

 けれどその動きは、彼にとってはスローモーションも同然。

 攻撃を見ながらしっかりと捌き、その隙の間に攻撃を差し込んでいく。


「がっ!?」

「ぐおっ!?」

「あがあっ!?」


 三人を瞬時に片付けていく。

 彼らも一撃で仕留めることはできなかったが、ヘルベルトは一度チラリと後ろを見てから、前に出て吹っ飛んでいった一人と、更にその奥で結界の破壊を狙っている男へと向かっていく。


「――隙ありっ!」


 利き手に攻撃をもらった男が、残る左手で三人の間を抜けていこうとするヘルベルトへと攻撃を放つ。

 その攻撃は高速で動くヘルベルトをしっかりと捉えていたが――ヘルベルトの動きが急激にスローになったことで、攻撃は空中を切り裂く。

 そのまま残る二人の攻撃も、空を切った。


 一度アクセラレートを切ったヘルベルトは彼らの体勢が崩れたのを見て再度前進、再びアクセラレートを使い高速で動き出す。

 彼は脇目も振らず、受け身を取って立ち上がろうとする奥の一人へと向かっていく。


 ヘルベルトを目で追いかけることで、三人の視線が彼に固定される。

 けれどそれもまた、二人(・・)の狙い通りだった。


「隙ありです」


 ティナが無防備になった三人を、後ろから強撃する。

 まともに防御を取ることもできず首筋にいいのをもらった三人は、そのまま地面に倒れ込み意識を失った。


 それを見届けることなく、ヘルベルトが再度の攻撃で吹っ飛ばした一人を昏倒させる。

 そこで――パリンッ!

 ガラスが割れたような音が鳴り、結界が割れる。


「できたぞ!」


 それを見て残る最後の一人がにやりと笑い……そのままその笑みのまま固まった。


「残念だったな」


 そこには迫りながら剣を振りかぶるヘルベルトの姿があり――魔法使いはそのまま頭部に強い衝撃を受け、意識を失うのだった――。




「とりあえずなんとかなったか……」


 ヘルベルトは木剣についた血を払いながら、倒れた『アガレスク教団』の団員達を見つめる。

 ティナはどこからか取り出したらしいロープを使い彼らの手足を縛り、そのまま口に詰め物をして自殺をできないようにしてから服の中をくまなく探っていく。

 そのあまりの手慣れた様子に、ちょっと引いてしまうくらいに滑らかだった。


「ち、違います! 騎士の修練の中には捕縛用のものも多くありますので!」


 しどろもどろになりながら弁明を試みるティナを見てちょっとほっこりしてから、ヘルベルトはそのままティナに倒れている残りのグループ達の捕縛を命じた。


「それは構いませんが……ヘルベルト様は、どちらへ?」

「決まっている――クラスメイトを、助けに行くのさ」




 ヘルベルトが練習場へ向かうと、そこには未だ『アガレスク教団』の団員達の姿が見えた。

 魔法書庫の侵入を第一目的とすればこちらも第二目的ぐらいではあったのか、二つのグループの人間が壁際で皆を防衛しているマーロンを囲うように布陣している。


 何人かの団員が倒れているのがわかったが、残る者達は距離を取っているため倒しきることはできていないようだ。

 どうやらマーロンはリスクを冒して敵を倒すのではなく、完全に皆を守りきって時間を稼ぐ方向にシフトしているらしい。


 彼の後ろでヒヤヒヤしている生徒達を囲うように、光魔法による結界が展開されている。

 ヘルベルトが駆け寄っている間にファイアアローを始めとしていくつもの魔法が飛んでいくが、それを食らっても結界はびくともしていない。


 そして接近しようとした者はマーロンの攻撃を食らいまた一人倒れ、改めて両者は距離を取って膠着状態を保ち始める。


 ネルが無事かと確認すると……いた。

 結界によって全員を守るために攻撃はできていないらしいが、いつ結界が破られても構わないように魔法発動の準備を終えているネルの姿が見える。


 その近くにはイザベラとアリスの姿も見える。

 イザベラはネルと同じく臨戦態勢を整えていたが、アリスの方は二人とは少しばかり様子が違う。


 魔法発動を準備を終えているのは変わらないのだが……彼女の身体は傍から見ても明らかにわかるほどに、ブルブルと震えていた。

 よく見れば他の生徒達も、多かれ少なかれ似たようなものだ。

 ネルとイザベラの覚悟が決まりすぎているだけなのかもしれない。


「なんにせよ――待たせたなっ!」

「ぐああっ!?」


 ヘルベルトが木剣を振り、一人目の男を昏倒させる。

 壁際に後退しているマーロン達半円状に包囲していた団員達が、ヘルベルトの襲撃に気付く。


 だがここにいる人間は、魔法書庫を襲撃していた者達と比べれば練度から連携から何から何までお粗末だった。


 そこから先は、ヘルベルトの独壇場だ。

 彼の木剣の一振りで男達が倒れ、動ける団員の数が一人また一人と減っていく。


 その度に光の結界の内側から、歓声が上がった。

 なんだか見世物になっているような気がしないでもないが、自分の方に向けられるキラキラとした眼差しを見ると、まあ悪くはないかなと思い直す。


 やはりリーダー格の男は他の者達と比べるとわずかに強かったが、ヘルベルトからするとそれも誤差の範囲内。

 問題なく全員を打ち倒し、下手なことをしでかされないよう腕と足を強かに打ち付けておく。

 先ほどの急いでいた時とは違い今は時間があるので、もう少し手を加えておくことにした。

「アースバインド」


 ヘルベルトは彼らを土の蔦を使い雁字搦めにしてから振り返る。

 結界を解除しホッと息を吐いているマーロンの方へと歩いていく。

 どうやら強度の高い結界を維持するのはなかなかに神経をすり減らすらしく、明らかに疲れている様子である。


「思ってたより早く来てくれて助かったよ」

「こちらこそ、ネル達を守ってくれてありがとう」


 二人が握手を交わすと、先ほどまでよりも大きな歓声が上がる。

 するとドダダダダッと後ろの方からすごい勢いで足音がやってきた。


 すわ新手かと身構えるヘルベルトだったが、目の前にいるマーロンのしょうがないなという顔を見て警戒を解く。

 首を横に向けると、そこにはこちらに近付いてくるネルとアリスの姿があった。


「ヘルベルト、ありがと」

「ヘルベルト様……やっぱりあなたはまた、私のことを助けてくれるのですね!」


 ネルとアリスが両脇をがっちりと固めてくる。

 二人は一瞬だけ視線を交わし合うが、どうやら先ほどの仲直りが聞いているからか、喧嘩になるようなことはなかった。

 両手に花な状態だが、ヘルベルトとしてはなんだか落ち着かない。


(また……?)


 なんにせよこうして一件落着となり。

 学院の襲撃事件はヘルベルト達の奮闘によって、奇跡的に一人も被害を出さずに鎮圧することができたのだった――。

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