ハットトリックは私のもの
私はクリケット。クリケットバットとクリケットボールを用いて1チーム11人の計2チームの間で行われる球技である。野球のもとになった、という説もある。
日本では、あまり知名度が高くないのが、誠に残念である。
はっきり言って、私の方が、野球なんかよりも世界ではメジャーなのだ。競技人口はサッカーに次いで世界第2位を誇っている。全世界に3億人はいるらしいからな、オホン。
誰だ? 今、アリスとハートの女王がやった競技でしょ? とか、言ったやつは。
あれは、クロッケーだ。クロッケーは、ゲートボールみたいなやつだ。別物である。間違えないように!
まあ、どちらも、英国発祥ではあるのだがな。
日本にも、明治時代に紹介されているのだが、どういうわけか、同じころ入ってきた野球の方が有名になり過ぎてしまったのだ。誠に、残念なことだ。
もしも、私の方が人気を得ていたら……。
「ワールドシリーズ」は、真にワールドな、英、日、印、豪、ニュージーランド、南アフリカ共和国の大会だったかもしれないのに……。
それでもって、日英同盟はもっと強固なものとなっていて、歴史も変わっていたかもしれないのに……。
おや、話が逸れてしまったな。
そうだ、1つ大事な話をしておかなくてはならなかった。
ハットトリックだ。
あれは、サッカー特有のものだと思い込んでいる者が多いようだが、とんでもない。
ハットトリックというのは、私、クリケットから出た言葉なのだよ。
腹立たしいが、日本では野球を基準にしないと理解してもらえないようだから、ここは従っておくが、同一回で、投手が打者から三者連続アウトを取った場合のことをハットトリックと称しているのだ。
いや、「アウト」じゃなくて「ウィケット」が正しい言葉だ。うむ。
野球などより、遥かに難しいのだ。従って、非常に珍しいし、名誉なことなのだ。
かつては、達成した投手、いや、正しく「ボウラー」と呼ぶべきだな。打者を三者連続ウィケットにしたボウラーに与えられたのが、シルクハットだったのだよ。一説には、そのシルクハットに観客がおひねりとしてお金を入れて渡したとされておる。
つまり、ハットトリックのハットとは帽子のことなのである。
今では、もう行われていない習慣だがな。
ハットトリックという言葉だけが妙に有名になってしまっているが、ちゃんと歴史があるのだ。覚えておきたまえ。