第97話
第97話です。
「サボるってどこで?」
「それは、適当に探してみようよ。探検も兼ねてね」
「そんな都合のいいものかなぁ」
本来ならば屋上を紹介して一緒にサボるところなのだが、あそこは先輩との密会によく使用するので出来れば避けたい。ので、あそこを提案することはないのだ。それに万一おすすめの場所を聞かれる、もしくは屋上を提案された時は、鍵がなくて入れないということにして乗り切るつもりでいる。
まだ休み時間なので廊下には次の移動教室の教科の教科書を持って歩いている生徒や、雑談している生徒がよく視界に入る。
傍から見たらきっと今の俺と利根里さんも似たような感じなのだろう。まさか誰も今からサボる人間だとは思うまい。
「空き教室とかあればいいけどねぇ」
「空き教室かぁ」
少し過去の記憶を探ってみると一つ該当する場所を見つける。
「あるにはあるけど、行く?」
「行けるならその場所がいいんだけど、鍵はどうするの?」
「あぁ、それは大丈夫。前に行った時に鍵がなくても開くように小細工をしておいたから」
特に隠すことなくそう言うと利根里さんは軽く引いたように頬をピクつかせた。
「さ、さすがサボり魔碧染くん……。やることがなかなかねぇ……」
「そんな褒められても」
「褒めてないよ?」
「ありゃ?」
そんな会話は程々にしておいて、早速俺達はその空き教室に向かった。出来ればチャイムがなる前にその教室には着いておきたい。授業がスタートしてから以降の時間に平然と歩いていては疑いの目で見られても何も言えないからな。
少し小走り気味で階段を下りると校舎の奥の方に位置する教室に向かう。
ここには基本生物や化学の授業で使用する道具が置いてある部屋があるが、基本その部屋を使うのは授業前に準備に来た教師のみだ。つまりそこさえ回避してしまえばこちらの勝ち。そもそもその教室を教師が利用することも少ないのだけど。
「この教室?」
「そうだよ」
「こんなとこに来たの初めて。というかここら辺に教室があったんだね」
「まぁ、知らなくても不思議ではないかな。俺だって偶然見つけただけだし」
少しホコリっぽくなっているがそこは窓を開けて全開で換気をしたら何とかなるだろう。
教室の扉を開き中に入ると俺達は適当に机を並べる。
そして無造作にその上に座り込んだ。
「サボりなわけだから、この教室は完全に楽園だよ。だから好きに使っていい」
「ほぉ、さすがサボりの先輩は違いますなぁ」
「でしょう?まぁ、利根里さんの思うがままに過ごしてみるといいよ」
そう提案だけして俺はまた意識を闇の中に沈めた。
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