第95話
第95話です。
「はい、碧染くん」
「ん?」
自分の席に着き荷物の整理をしようとしていたら、突然利根里さんが小さな紙袋をくれた。
少し困惑しながら「ありがとう」と言って受け取る。
「中身ってここで見てもいい?」
「いいよ〜」
「ありがとう」
許可が出たので遠慮なく開封してみると中から出てきたのは可愛らしくラッピングされたチョコだ。チョコの入ったプラスチック製の袋には「HappyValentine!!」と記載されている。
「おぉ!チョコ!」
「そうだよ〜。今日はなんてったってヴァレンタインデーだからね!交友関係がある人には渡さないと気が済まない性分なのですよ!」
「なるほどね。いや、にしても本当に嬉しい」
「それは良かった」
あの利根里さんからのチョコなのだ。嬉しくない方がおかしい。利根里さんに好意を寄せている男子であればなんとしてでも欲しいだろうし、これは偶然交友関係を築けたことに感謝しなければならないな。
「あ、そうだ。そのチョコここでは食べちゃダメだからね?」
「え、何で?お昼ご飯の後に食べようと思ってたんだけど」
そう聞くと少し頬を赤く染めながら「……なんか恥ずかしいじゃん。手作りを目の前で食べられるのって」と呟いた。
「そうなの?」
「……多分。もしかしたら私だけかもしれないけど」
自信なさげにそう答えながら利根里さんはもじりもじりと小さく指遊びを始めた。
「と、とにかく!それはおうちに帰ってから食べて!」
そうとだけ残すと利根里さんはバッと立ち上がり廊下に駆け出して行ってしまった。呼び止める間もなくその姿は視界から消える。
手にはガサリと音のなる紙袋だけが握られていた。
◆◇◆◇
さて、休み時間の間を利用して屋上にではいいがこれからどうしようか。利根里さんのチョコは家で食べるのでいいのだが、問題は下駄箱に入っていた方なのだ。
差し出し主不明。字は綺麗。そしてチョコのクオリティはものすごく高い。
ここまで完成度の高いチョコというのは見た事が無いかもしれない。というかこれを一般人が作れること自体が到底信じられない。
「マジですげぇや」
日光にかざしながらそれを眺めているとガチャりとうしろの扉が開いた。
初め先生が来たのかと焦り振り返ったが、そこに立っていたのは秘密の共有者である先輩その人だった。
「あ、先輩おはようございます」
「うん、おはよう。というかあれ、後輩くんもサボり?」
「いや、俺は別に。というか俺"も"って何ですか。サボることは前提条件なんですか!?」
ひとしきりツッコミだけ入れると俺は先輩の横に立つ。
「先輩がサボるんなら俺もサボろっかなぁ」
「そうしなよぉ」
「楽そうですもんね」
「うん、すごく楽々」
ニヤリと笑いながら先輩は楽しそうにした。
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