第79話
第79話です。
冷蔵庫を開き中を確認する。
元々自分1人だけの予定だったので手抜きにしようかと考えていたが、今日はお客さんの利根里さんがいるのだ。粗末なものは食べさせれない。
という事で本日はミンチ肉を使用したハンバーグを作ろうと思う。おそらく今家にある食材で作れる料理の中で、一番人気で一番上等だと思う。
他に使う材料をガサガサと出しながら作業をしていると、ダイニングテーブルに座る利根里さんが「何か手伝だおうか?」と尋ねてくる。
「いや、そこまで大それたことをするわけじゃないし、ゆっくりしてていいよ」
「……そう?」
「うん、だから漫画とか読んでていいよ。テレビ見たかったらテレビでもいいし」
「いや、うーん……」
少し考えるような、もしくは言うか言わまいか悩むような仕草を見せるとチラリとこちらを見た。
「私が隣に立って新妻さん役をしなくても……大丈夫?」
「新妻!?」
「わっ!びっくりした」
「そ、そりゃ驚くよ?だって利根里さんから新妻なんて単語出てくると思わないし、まずなんでその相手役が俺なの……。もっとほかにかっこいいやついるでしょ」
「そりゃいるかもしれないけどさ……碧染くんは碧染くんしかいないんだよ……」
最後の方はボソボソとしていて何を言っているのかは聞こえなかったが、この際どうでもいい。
「まぁ、料理は俺がしておくから、利根里さんはゆっくりしていなさい。おーけー?」
「むー……おーけー、アイシー」
不満そうな顔をしているがそんな事は気にせず、俺はさっさと作業を再開した。
✲✲✲
カタンとプレートにハンバーグの盛りつけを終えると早速並べていく。
今回作ったものはおそらく俺史上最高傑作と言っても過言ではないものだ。適度な焦げ目に、少し甘辛いソース。色彩を彩る人参やコーン、パセリの配置。
うむ、上出来だ。
「わー!お店に出てきそうな出来だよこれ!?」
「そう言って貰えて光栄です」
少し誇らしく思いながら俺も席に着くと「さ、冷めないうちに」と食べることを促した。
「じゃあ、いただきます」
お昼の時と同じように手を合わせ食前の挨拶をする。
ハンバーグにナイフをスっと入れ込むと、中から溢れんばかりの肉汁が出てきた。湯気が立ち、それこそ今利根里さんが言ったようにお店で出してもおかしくないような出来に見えてくる。
「美味しそう」
「だといいけど」
「絶対美味しいよ!」
そう言ってからは早かった。利根里さんはすぐさまフォークで小分けにしたハンバーグを刺し、口に運ぶと目をぱっと見開いたのだ。
「……やばいよ」
「あれ……美味しくなかった?」
「いいや、逆。びっくりするくらい美味しい!!」
「お、おぉ、なら本当によかった」
安堵の息を吐きつつ俺もパクリと一口食べる。
うん、完璧だ。
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