第77話
第77話です。
本屋から家に戻る途中で少しコンビニに寄った。
自動ドアが開いた後に流れる入店音を聞き流しながら、まっすぐにアイスのあるクーラーボックスの所まで向かった。
こんな寒い時期にアイスとは、と思うかもしれないが意外とこの時期に食べるのもいいものなのだ。温かい部屋の中で冷たいアイスを贅沢に食べる。これほど背徳感があるものは無い。
「どれがいい?」
「んーと、じゃあこれで」
利根里さんがそう言って手に取ったのは国民的と言っても過言ではない、コーヒー味が人気な二つに分けるアイス。
『青春』という要素の中には入っててもおかしくない夏のド定番アイスだ。
「おっけー」
利根里さんからそのアイスを受け取ると俺は足早にレジに向かう。そして交通系ICカードで支払いを済ませてしまうとすぐに帰路に着いた。
クーラーボックスの付近も寒かったが、やはり外の方がどうにも堪える。
物理的なものもあるだろうが、外は葉のついてない木などから自然の温もりを感じないという精神的な側面も大いに関係すると思った。
そしてそれはあながち間違いじゃないと思う。
蚊が出てき始めたら暑いと感じ、少し過ごしやすいと思い始めて葉の色の変化を見つけたら秋を感じ、色の少ない景色が目に写り始めたら冬が訪れて、そして白い花吹雪が舞えば春が来る。
きっと日本人が昔から培ってきた感覚的なものの方が鋭かったりするのだ。
「あ、雪だ」
「本当だ」
ぱらりと空中で踊り舞う雪のダンスを目で追いながら俺と利根里さんは「もっと寒くなる前に戻ろうか」と話した。
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