第76話
第76話です。
「お、やっぱりあったよ!」
利根里さん先導のもと連れてこられたのは漫画コーナー。の、特に少女漫画と言われる部類の作品が沢山陳列された棚だ。
背表紙から既にキラキラとした雰囲気が溢れんばかりに出てきている。
「これこれ、これがおすすめなのだよ!」
そう言いながら手に取ったのは表紙にキラキラとした男女のイラストの描かれたもの。
「少女漫画かぁ。確かに読んだことないジャンルだな」
「でしょー。碧染くんの部屋の本棚を見てた感じこういった類のものは無かったし、私の好きな系統が丁度これだったしね」
「だね。だけどちょっと意外だったかな」
「意外?」
何の事?と首をひねりながら利根里さんはこちらを見てそう聞く。
「ほら、利根里さんってそもそも漫画を読まないタイプだと思ってたからさ」
「そうなの?」
「うん。まぁ、よくよく考えてみれば漫画を読まない人が他人が読んでる漫画に興味を持つはずもないんだけどね」
笑いながらそう言うと利根里さんもつられて笑う。
「そういう事さ。こんな感じで私の事をもっと知ってくれたら嬉しいな」
「うん、そうする」
「ま、もうすぐ1年生も終わっちゃうんだけどね」
「だね」
「だけど、その後には一番青春らしい事が出来る2年生が待ってるよ」
「青春か」
高校に入る前はそこまで意識することのなかった『青春』の二文字。中学時代は部活で野球に勤しんでいて、それこそ『青春』云々の事なんて考える暇もなかったが、今思えばあれが一番人生の中で『青春』をしていたのかもしれない。
一番『青春』らしい事ができる学年か。
先輩は青春……できたのかな。
ふとそんな事を考えてしまう自分がいる。一体どれだけ先輩の事が好きなんだと自分でも思ってしまうが、好きなものは仕方がない。
「碧染くん?」
「ん?」
「どうかした?何か黙り込んじゃってたけど」
『青春』云々の事について考えすぎてしまったせいか、利根里さんに心配をかけてしまったらしい。
「いいや、何でもないよ」
「そう?」
「うん。じゃあこの漫画買って帰ろうか」
そう言うと俺は会計に向かった。
後ろを歩く利根里さんは少し訝しそうにしながら着いてくる。
「なーんか、引っかかるなぁ」
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