第71話
第71話です。
「で、貸すのはいいとしていつ持ってきた方がいい?明日でもいいけど、明日って体育の用意とか諸々の授業のせいで荷物多いし利根里さん持って帰るの少し大変かと思うんだけど」
そう尋ねると少し思案した表情を見せた。
ポクポクポク。
どこからか木魚を叩く音が聞こえてきそうなポージングのまま少し経つと、利根里さんはパチリとまぶたを開いた。
「うーん、明日って金曜日でしょ?」
「だね」
「ならー、その次の日は土曜日ってことだ」
「そうだね」
名案が思いついたのかは知らないが、瞳の奥をキランと光らせたと思うとピシッと指を立てた。
細い華奢な指が綺麗だなぁ、などと思いながら眺めていると「碧染くんは明後日の土曜日は暇かね?」と聞いてきた。
「土曜日?暇かと聞かれれば暇だけど」
部活には入っていないし、先輩関連の用事もないから文字通り暇ではある。むしろ暇すぎてどうなのかと思う程度には。
「ならさ、土曜日一緒に遊ばない?」
「遊ぶ?別にいいけど、漫画は?」
「ふふん、分からないかね?」
「何が?」
遊ぶことと漫画が全く結びつかなくて、とっても困っているのですが、それは俺だけだったりするのだろうか。
そう思っていると利根里さんは片目を瞑りながら「それはね〜」と話し始める。
「私が碧染くんのお家にお邪魔すればいいということなのだよ!」
「……え?」
◆◇◆◇
まさかあのままの流れで話が進むとは思わなかった。
クラスの女の子が俺の家に来るというだけでも大事件案件なのに、それが利根里さん程の可愛さを持った子となると話はさらに変わってくる。
部屋の匂いやゴミなんかにはとても気を使うし、というか前日は緊張のせいでろくに寝れていないし。
はたして大丈夫だろうか。今日の俺。
唯一の救いと言えば今日は両親共々出かけているというところくらいだろう。
「はぁ……緊張する」
心臓が先程からドクドクと激しく動きっぱなしだし、頭は痛いし、吐き気するし。
体にも緊張のせいか不調が見られ始めると不意にインターホンが鳴った。
「来たかな」
少しふらつく足元に気を付けながら玄関にまで向かい、扉を開いた。
「やっ!碧染くんおはよ!」
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