第67話
第67話です。
メリーゴーランドを楽しんだ後は、遊園地にあった他のアトラクションを一通り楽しみそして外に出た。
昼前に来てからすっかりと時間が経ってしまった。空はオレンジ色に染まりだして、空を飛ぶ黒い鳥がカラスなのかハトなのか判別さえつかなくなってくる。
明日からまたいつも通りの日常だと思うと少し憂鬱だ。
「ラーメンっラーメンっ」
しかし、先輩にいたっては本格的に進路の事を考え始める時期なはずなのに、そんな事は知らないと言わんばかりの能天気さ。大学の事は考えなくてもいいという分これだけ気が楽なのだろうけど。それでも授業は嫌ではないのだろうか。
「ラーメン楽しみですね」
「だよだよ!いやー、女の子でラーメンに行く人も世の中には沢山いるけど、私はどうにも抵抗があったからねぇ。だから行く機会ができてとても嬉しいのです!」
「そりゃあよかったです」
こうも素直に自分の提案した事を喜んでくれると、なんだかむず痒いものの、やっぱり嬉しい方が勝つ。
「それでラーメンはどこ行くの?二郎系という名のラーメン?それとも有名チェーン店?」
首をこてんと傾げながら先輩がそう聞いてくるので、俺はスマホをササっと操作し画面を見せた。
覗き込むようにしながら先輩はスマホを見る。
「これはどこのラーメン屋さんなのだ?」
「まぁ、知らないですよね」
このラーメン屋さんは最近流行りの二郎系でも有名チェーン店でもない。いわゆる個人経営の店なのだ。つまり、それなりにラーメンを常日頃から食べていないと知ることのない店なのだ。
「ここからまた数駅行ったところにある店ですよ。昔からよく行ってますけど、かなり美味しいです」
「へぇ!ちなみに何味があるの?」
「基本的なものはありますね。醤油に豚骨に味噌に塩。でも割合的には豚骨が気持ち多いかな?って感じですね」
「豚骨かぁ。それを聞いたら余計にお腹空いてきた」
腹部を擦りながら「えへへ」と笑う先輩は纏うオーラが柔らかくなって可愛らしい。
「俺もお腹空いてきましたし、急いでいきますか?」
そう提案すると「ううん」と言いながら先輩は首を横に振る。
「たまにはゆっくり行こうではないか。電車の時間が早くなるわけでもないし、何より楽しみはあとに取っておくタイプなものでね」
「ふっ、そうですか」
少し笑うと俺は先輩の手を取る。
キョトンとした表情で繋がれた手を見ると先輩は少し顔を赤くした。そして繋がれた手を持ち上げながら、
「ゆっくりを楽しもうとしすぎじゃないかね?」
と言って苦笑する。
「いいじゃないですか。今日はもう何も無いんですから」
「そうかもしれないけども……まぁ、いいか。たまには甘えさせてあげても」
「そうですそうです」
こくこくと頷き返すと俺は駅の改札へと向かう。
来た時よりも少しだけ人の多い駅はザワザワとしており、けれどそれが決して嫌ではないから不思議だ。
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