第64話
第64話です。
暗い通路を歩いていくと段々と寂れた建物の様な作りの場所が見えてきた。所々壊れた様な表現が施されていたり、遠くからはひぐらしの鳴く声が聞こえてきたり。
聞こえる音があまりにも少なすぎるためか、自分と先輩の足音が嫌に耳に残る。
「……ね、ねぇ」
「はい?」
「このお化け屋敷にリタイアルートはあるのかな?」
「いや、無いです」
ジェットコースターの反省を活かしてしっかりと先に確認しておいたのだ。万が一何かあった場合にすぐに出れるのかどうか。しかし結論から言えばそんな都合のいいルートは存在しなかった。
まぁ、何かあれば先輩を担いで走って抜ければいいだろうという考えの元に来ているのだけど。
「無いのっ!?」
「です」
こちらとしては対策と呼べるのかは分からないものの、策はあるのでそこまで気構えていないが、先輩としてはどうしてもそうはいかないらしい。確かに無理もない話なのだが。
さらに歩みを進めて奥に進んで行くと、所々おかしな箇所が見えてくる。不自然な位置に血痕らしきものが見えたり、割れた鏡に一瞬誰かが映ったように見えたり。
「ね、ねぇ……何かに見られてない?」
「わ、分からないですけど……感覚的には何となく見られてる気が……」
「だよね」
想像と違うお化け屋敷に逆に恐怖を少し感じつつ、その謎の視線から逃れる様にさらに歩みを進めた。
ここに入る前に想像していたお化け屋敷というものが、ある程度歩いたら「わっ!」と驚かせるものだと思っていたので、こんなに直接的でなく、どこか野性的な勘に精神的恐怖を与えてくるものだとは想像もしなかった。
この形式にされると、自分にとって一番怖い形でのホラーを想像してしまうので精神的に疲れてくる。
「うぅ……出口見えない……」
「ですよね……。かなり長い」
どこかで道を間違えたのではないかと思うくらいには歩いた。にもかかわらずゴールが姿を見せる気配が一向に無い。
「か、帰れるよねっ!?」
「であることを祈りましょう」
「そ、そこは帰れるって言ってよ……」
しゅんとしょぼくれながら先輩はキュッと服の裾を握ってきた。
その瞬間は恐怖よりもドキドキの方が強くなったので、もう少しお願いしますと言いたいところだが、さすがにそんなお願いは引かれかねないので控える。
「……出口は後ろ……」
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