第59話
第59話です。
「どこにする〜?」
スマホを片手にヒラヒラとさせながら私はそう聞いてみた。
一応聞く前に色々と調べては見たが、私が楽しくても後輩くんが楽しくないと意味がないわけで。つまりは、意見が欲しいということ。
「んー、どこでもいいですけどねぇ」
しかし先程から後輩くんはこの調子だ。もう少し自分の意見というか考えというか、どんどん前に出してくれてもいいのだけど。
「どこでもいいが一番困るのー」
「そりゃそうですよね」
「すみません」と苦笑いを浮かべながらポリポリと頭を搔く。
うむ、反省しているのならそれでいいのだが、だからといって行き先が決まるわけではない。時間は有限なのだし、できる限り早く決めたいというのがやはり本音だ。
「一応近くに遊園地とかあるけどそこにでも行く?」
「遊園地ですか。しばらく行ってませんね」
「お、ならいいんじゃない?」
試しに提案してみたものが思った以上の好感触を得られたので、嬉しくなりながら「じゃあ遊園地にしよう!」と言って立ち上がった。
◆◇◆◇
近くにあるとは言ったがそれはあくまで地図上での話。実際は現在地から数駅離れた所にある。
最寄りの駅に向かうと改札を軽やかに抜けて数分と待たずに来た電車に乗りこんだ。車内には程々に人が乗っているだけで、座る分には困らない。
「まず何乗る?」
「お化け屋敷ですかねぇ」
「お化け屋敷かぁ。……乗り物じゃないんだね」
斜め上の回答に少し溜息をつきつつ、遊園地のホームページを開く。今から向かう遊園地が推しているアトラクションはやはりジェットコースターらしい。最高時速は脅威の180キロオーバー。軽く引くレベルだ。
もう少し初心者向けのものは無いかと探してみると、別のジェットコースターが目に入る。時速も140キロとそこまで速くない。速くない……のか?180キロオーバーのせいで少し感覚が分からなくなっているが、ゆっくり目であることを祈ろう。
「じゃあ初っ端強制ジェットコースターね!」
「一発目からですか」
「イエース!まぁ、でも二つあるうちの遅い方だからそこはご安心を!いきなりきついやつ乗って体調崩してももったいないからね」
「ですね。じゃあ初めはそれにしましょうか」
相互の同意を得終えると、丁度いいタイミングで駅に着いた。
「じゃあ行こうか」
プラットフォームに出ると既に見えている遊園地の全貌。この辺りの、というか、この地方で最も大きいと言っても過言ではないこの遊園地はさすがのオーラを放っていた。
平日の昼間にもかかわらずたくさんの人が訪れ楽しんでいる。もちろん私達もその人に加わるつもりだ。
「よしっ、行くよっ!」
後輩くんの手を取って駆け出すと改札に向かった。
サッと抜け駅を出ると目の前にある遊園地のゲートに向かう。入場券を買ってしまえばもうこちらのもの。
「先輩……まだ何も乗ってないのにテンション高すぎですって……」
少し息を切らしながら後輩くんはこちらを見た。
何だか姉に振り回される弟のような図が出来上がっているが、そこは気にしない。ただ、弟を可愛がる姉の役はやってみたい。
だからわしゃわしゃっと頭を撫でやる。
「ちょっ、いきなりどうしたんですかっ?」
「気分だよ!」
そう言いきってしまうと私はまた後輩くんの手を取って目的のジェットコースターの乗り場に向かった。
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