第58話
第58話です。
2人並んで校門を出ると、特に言葉も交わさずに駅の方へ向かった。
遊ぶにはやはり大きい街に出る他ない。この辺りの田舎でインスタ映えのする綺麗な景色はあれども、発展しているわけではない場所では遊ぶ場所に困るのだ。
少し歩くと見慣れた駅の名前が見えてくる。
改札を抜けこの辺りで一番発展している場所の方面行きのプラットフォームに上がると、私達はベンチに腰掛ける。
「私達以外にも学生が沢山いるね」
「まぁ、始業式だけのところが多かったでしょうしね」
「うーん、ここまで多いと私と後輩くんの密会がバレてしまわないかで不安だよ」
「何ですか、その浮気してるところを見られたくない人妻みたいな思考」
「いやいや、私は人妻じゃありませんし、何より不安に思ってるのは私と後輩くんに繋がりがある事を知る人が出てくることに対してだよ!」
私も後輩くんも誰に対しても2人の関係は話していない。一番の理由と言えば、まぁ、控えめに言っても学校トップレベルの美貌を誇るこの私と後輩くんがコソコソ会っているとバレたら、後輩くんが妬まれるのではという気兼ねがあったからなのですよ。まぁ、後輩くんもかなりかっこいいわけなのですがね?
「確かに知られるのはちょっと嫌ですね」
「でしょ?」
渋い顔を浮かべる後輩くんに思わず笑ってしまいながら、次に来る電車を確認する。
電光掲示板には快速電車があと2分後に来ると示していた。
「まぁ、知られるのは嫌だけど、その時はその時だよ」
「ですね」
納得はしてなさそうなものの、こくりと頷き渋々頷いてくれたので私は微笑み返した。
◆◇◆◇
ひとまず近くのアメリカンで緑と女の人が有名なコーヒーショップに訪れた。
長いメニューの注文を終えると商品を受け取って席に着く。
チューっとストローで中身を飲みながら私は至極の時間を楽しむ。苦味中にある甘さと、深緑が特徴的な抹茶のラテは私のお気に入りだ。
「抹茶美味しそうですね」
自分のものを飲みながら後輩くんは私のものを指さしてそう言った。
「美味しいよ。後輩くんのも美味しそうだけどね」
実際美味しそう。特に上にトッピングされているチョコなんてそれの象徴だ。
「フラペチーノいいじゃん」
「ですね。お気に入りです」
チューっともう一度そう言いながら特に表情を変える事なくそう言った。
その表情とセリフを見ると本音なのがどうか気になってしまうが、まぁ、おそらく本音なのだろう。そう信じたい。
さて、そんな事よりもこの後の予定を決めなければね。
とそう思いつつ、私はもう一度抹茶ラテを飲んた。
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